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1 【廃品回収】という教会(神)の恩恵をもらったけどクズな恩恵にしか見えない
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なだらかな丘陵地帯に黄金色の麦の穂が陽光に照らされ、吹き抜ける風にそよぐ、
麦畑の中を通る道は緩い曲線を描き、遠くに見える教会に続いている、
道のところどころには麦の収穫の準備か、人と荷車が点在している、
遠くの教会の尖塔には高い支柱に支えられたくすんだ金色に塗られた六芒星、
この物語はそんな片田舎の 邨から始まる、
この日の朝、僕と同い年の許嫁のジルは僕の両親と
妹のセシルの我が家一行と、ジルとその両親らと一緒にウマ車に揺られて
領地から離れて国境近くの町の古びた教会に来て、何家族かと一緒に
神の恩恵授与の儀式に参加していた、
僕は15歳になって98日目になる、恩恵を授与されると
そのまま成人として認められるんだ、
収穫の季節の第一日目が神の恩恵授与の儀式当日になる、
忙しい時期だから農夫たちは大変だろう、収穫の目処がたつ今どきに授与式をするのは
農夫らの財布が緩むからだと家庭教師から聞いた事があった、
教会の壁に刻まれた溝を通った日の光が
床に刻まれた目印に差し掛かった一筋の光
神の恩恵授与の日とされ教区の信者に告知されるのだが
対象者は誰もがその日を待ちわびていた、
僕もその一人、どんな恩恵が与えられるだろうか?
出来れば、強制的に教会に所属させられる「神官見習い」はごめんこうむりたいけれど、
まあ頂いたら、そこはそれ・・・教会内部で確固たる地位が保証されるが
僕の感じでは神官では暗い将来しか見えてきません、
そんな僕があこがれている恩恵は「剣士」、
なぜって強くなれるしかっこいいから
え? 勇者?賢者? 残念ながらそういった恩恵は教会では与えられない
剣士とか騎士とかの恩恵を成長させた上位の恩恵になり
見習いから数十年もの修行の上で剣士、騎士のうち数十万人に一人が
なれるかなれないかというものだ、
せいぜい一国に一人いれば大したものらしい
そんなことを考えながら順番を待っていると
前に並んだジルの番が来た、
ジルは作法通り、台に両膝をつき、頭《こうべ》を垂れて
顔の前に両手を組み合わせて祈る、
神官長が水盤の中に両手の指を入れ、その聖水をジルの頭に振りかけると
神官長はじっと自分の手のひらを見てから
ジルの頭頂にそっと手をあてると
神官長とジルが同時につぶやく
「「騎士見習い」」
ジルの家族も周りの人も、もちろん僕もにっこりとしてしまうが
声を出すような不作法はしない、
教会を出たら大興奮だろうなあと思いながら
なんでも200年ほど前にはこういう作法が無く恩恵を与えられた者たちが
良い場合も悪い場合も
騒いで収拾がつかなくなり当時の枢機卿が厳格な規律を設けたのだそうな
そしてついに僕の番が来た、僕は前に出てクッション付きの台に膝をつき
作法通りに祈る(神様、どうか僕に剣士か騎士の恩恵を頂けますように、)
やがて神官長の手が僕の頭に触れる。
その瞬間頭の中に「廃品回収」という声が聞こえ
同じタイミングで僕と神官長の声が重なった、
「「廃品回収」」・・・・・・
初めて聞く神の恩恵だった、本でも見たためしはない、
同時に腹の底に衝撃が走ったような気がした、
これは本当に恩恵なのか? 呪いではないのだろうか?廃品回収ってなんだよ
ゴミ拾いのことか? 頭が回らない、いきなり霞がかかったようだ・・
あまりの衝撃に僕はよろよろと立ち上がると
うなだれて両親のもとへと行こうとしたが、この短い時間に
家族もジルの両親もすでに教会の中にはいなかった・・・・
何か母が言っていたような気もするが
静粛を旨とする教会内で声を出すことは神官と
恩恵を受ける者に限られるから多分空耳だっただろう、
もしかして僕は置いて行かれた? なぜ?
ああ、そうか、考えるまでもない
そういえば何かの本で見た、役に立ちそうもないどころか害になりそうな
恩恵を得た人の話があった、家を、街を石で追われる、そんな話
そう、もちろん決まっている
どう見たってくずのような恩恵だから・・・
父は貴族としてあまりの恥辱に耐えられなかったのだろう
教会を出てウマ車のあった場所を見たが
そこにはすでに我が男爵家のウマ車はなかった、
勿論、許嫁のジルもいない、何人かが僕を指さして何か言ってるが
どうせ侮辱してるんだろうな、さすがに石は飛んでこなかったけど、
僕は教会からとぼとぼとウマ車で来た道を家に向かって歩き出した、昼時はとうに過ぎていた、
ボロボロと涙を流しながら声も出さずに泣いていた、やがて涙も枯れた。
屋敷まで歩いてあと半日あたりの場所で立ち止まり
「廃品回収?」と 僕がつぶやくとなんてことだろう
錆びて曲がった釘と何かが一本僕の手に触れたが
瞬時にどこかに消えた、「? なに?」
「どうなった?」「釘?はどこに行ったんだ?」
しばらく呆然としていたが気を取り直して屋敷を目指して歩いた、
心は廃品回収をひたすら拒否していた、
麦畑の中を通る道は緩い曲線を描き、遠くに見える教会に続いている、
道のところどころには麦の収穫の準備か、人と荷車が点在している、
遠くの教会の尖塔には高い支柱に支えられたくすんだ金色に塗られた六芒星、
この物語はそんな片田舎の 邨から始まる、
この日の朝、僕と同い年の許嫁のジルは僕の両親と
妹のセシルの我が家一行と、ジルとその両親らと一緒にウマ車に揺られて
領地から離れて国境近くの町の古びた教会に来て、何家族かと一緒に
神の恩恵授与の儀式に参加していた、
僕は15歳になって98日目になる、恩恵を授与されると
そのまま成人として認められるんだ、
収穫の季節の第一日目が神の恩恵授与の儀式当日になる、
忙しい時期だから農夫たちは大変だろう、収穫の目処がたつ今どきに授与式をするのは
農夫らの財布が緩むからだと家庭教師から聞いた事があった、
教会の壁に刻まれた溝を通った日の光が
床に刻まれた目印に差し掛かった一筋の光
神の恩恵授与の日とされ教区の信者に告知されるのだが
対象者は誰もがその日を待ちわびていた、
僕もその一人、どんな恩恵が与えられるだろうか?
出来れば、強制的に教会に所属させられる「神官見習い」はごめんこうむりたいけれど、
まあ頂いたら、そこはそれ・・・教会内部で確固たる地位が保証されるが
僕の感じでは神官では暗い将来しか見えてきません、
そんな僕があこがれている恩恵は「剣士」、
なぜって強くなれるしかっこいいから
え? 勇者?賢者? 残念ながらそういった恩恵は教会では与えられない
剣士とか騎士とかの恩恵を成長させた上位の恩恵になり
見習いから数十年もの修行の上で剣士、騎士のうち数十万人に一人が
なれるかなれないかというものだ、
せいぜい一国に一人いれば大したものらしい
そんなことを考えながら順番を待っていると
前に並んだジルの番が来た、
ジルは作法通り、台に両膝をつき、頭《こうべ》を垂れて
顔の前に両手を組み合わせて祈る、
神官長が水盤の中に両手の指を入れ、その聖水をジルの頭に振りかけると
神官長はじっと自分の手のひらを見てから
ジルの頭頂にそっと手をあてると
神官長とジルが同時につぶやく
「「騎士見習い」」
ジルの家族も周りの人も、もちろん僕もにっこりとしてしまうが
声を出すような不作法はしない、
教会を出たら大興奮だろうなあと思いながら
なんでも200年ほど前にはこういう作法が無く恩恵を与えられた者たちが
良い場合も悪い場合も
騒いで収拾がつかなくなり当時の枢機卿が厳格な規律を設けたのだそうな
そしてついに僕の番が来た、僕は前に出てクッション付きの台に膝をつき
作法通りに祈る(神様、どうか僕に剣士か騎士の恩恵を頂けますように、)
やがて神官長の手が僕の頭に触れる。
その瞬間頭の中に「廃品回収」という声が聞こえ
同じタイミングで僕と神官長の声が重なった、
「「廃品回収」」・・・・・・
初めて聞く神の恩恵だった、本でも見たためしはない、
同時に腹の底に衝撃が走ったような気がした、
これは本当に恩恵なのか? 呪いではないのだろうか?廃品回収ってなんだよ
ゴミ拾いのことか? 頭が回らない、いきなり霞がかかったようだ・・
あまりの衝撃に僕はよろよろと立ち上がると
うなだれて両親のもとへと行こうとしたが、この短い時間に
家族もジルの両親もすでに教会の中にはいなかった・・・・
何か母が言っていたような気もするが
静粛を旨とする教会内で声を出すことは神官と
恩恵を受ける者に限られるから多分空耳だっただろう、
もしかして僕は置いて行かれた? なぜ?
ああ、そうか、考えるまでもない
そういえば何かの本で見た、役に立ちそうもないどころか害になりそうな
恩恵を得た人の話があった、家を、街を石で追われる、そんな話
そう、もちろん決まっている
どう見たってくずのような恩恵だから・・・
父は貴族としてあまりの恥辱に耐えられなかったのだろう
教会を出てウマ車のあった場所を見たが
そこにはすでに我が男爵家のウマ車はなかった、
勿論、許嫁のジルもいない、何人かが僕を指さして何か言ってるが
どうせ侮辱してるんだろうな、さすがに石は飛んでこなかったけど、
僕は教会からとぼとぼとウマ車で来た道を家に向かって歩き出した、昼時はとうに過ぎていた、
ボロボロと涙を流しながら声も出さずに泣いていた、やがて涙も枯れた。
屋敷まで歩いてあと半日あたりの場所で立ち止まり
「廃品回収?」と 僕がつぶやくとなんてことだろう
錆びて曲がった釘と何かが一本僕の手に触れたが
瞬時にどこかに消えた、「? なに?」
「どうなった?」「釘?はどこに行ったんだ?」
しばらく呆然としていたが気を取り直して屋敷を目指して歩いた、
心は廃品回収をひたすら拒否していた、
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