上 下
27 / 37

第27話

しおりを挟む
しかし彼は動かない。

「……本当にいいのか?」
「意外と慎重なんですね」
「途中で拒否されたらしばらく立ち直れないから確認はしっかり取りたい」
「そんな生娘のようなことしませんよ」
「…あと約束を簡単に破るような男だと思われたくない」

確かに手を出さないという約束してから3日ほどしか経っていない。
個人的には約束が守られようが破られようが特に気にしないタイプなのだがダレス様が気にするのなら言いくるめよう。

「では私がバレッサならどうですか?」
「え」
「あなたがグアハルド、私がバレッサなら約束とは関係ないから問題ないでしょう?」

ダレス様とサイラスの間で交わされた約束にグアハルドとバレッサは関係ない。


__今だけ昔のような関係に戻ってみませんか


暗にその意味を含んだ言葉を煽るように伝えれば彼は目を伏せてポケットから小瓶を取り出した。

「何ですかそれ」
「見た感じ潤滑剤っぽいな。あとこれも渡された」

追加でポケットから見覚えのある物が取り出された。
それは所謂男性側が使用する避妊具だった。

「…なんでそんな物を持っているんですか」
「だから渡されたんだって」
「……もしかしてカリン先生ですか?」

素直に頷くダレス様を見て私は頭を抱えた。
まさかここまで読んでくるとは。
っていうかいつ渡したんだよ。

「……なんか興ざめしたので一旦シャワー浴びてきてもいいですか?」
「俺も後でいいから借りていいか?」
「どうぞ。では少し待っていてください」

彼にそう言い残して私はシャワー室に向かった。





シャワーを浴びて軽く体を洗いながらため息を吐く。


私がここまでダレス様を煽るような行動に出たのにはちゃんとした理由がある。

1つは彼があまりにも私に執着しすぎているからだ。
なかなか手の入らないものに対して人は執着心を募らせてしまう。
だからこそ一度手に入れたと錯覚させることが重要だろうと考えたのだ。

2つ目は彼の中にある私に対する理想を壊すためである。
何年も追い求めていれば脳内である程度の補正がかかってしまうだろう。
だからこそ一度この傷だらけになってしまった身体を見せて幻滅してもらおうと思ったのだ。
こんな貧相でボロボロな身体の男装女よりもどこかの王女や令嬢の方が美しいに違いない。

「…身分差もあるし、これで正しいはず」

結局私は自分を差し出す以外の解決方法を知らない。
それを間違っているとは思っていないし、現にそれでここまで生きてきた。
その後の自分のご機嫌取りだって自分でできる。
今回はちょっと愛を囁き合うだけ。

「今更嘘の1つや2つ、増えた所で何も変わらないし」

シャワーを止めてタオルを手に取る。
体を拭きながらふと視界に入った鏡を見ると疲れたような笑顔の自分がそこにいた。

「……」

鏡に背を向けて普段着に腕を通す。
生憎バスローブなんて高尚な物ここにはないのだ。許してほしい。

「大丈夫、これは悪いことではない」

そう自分に言い聞かせてから私は待っているであろう彼の元へ足早に戻った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

慰み者の姫は新皇帝に溺愛される

苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。 皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。 ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。 早速、二人の初夜が始まった。

【R18】幼馴染な陛下と、甘々な毎日になりました💕

月極まろん
恋愛
 幼なじみの陛下に、気持ちだけでも伝えたくて。いい思い出にしたくて告白したのに、執務室のソファに座らせられて、なぜかこんなえっちな日々になりました。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました

かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。 「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね? 周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。 ※この作品の人物および設定は完全フィクションです ※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。 ※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。) ※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。 ※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。

【R18】軍人彼氏の秘密〜可愛い大型犬だと思っていた恋人は、獰猛な獣でした〜

レイラ
恋愛
王城で事務員として働くユフェは、軍部の精鋭、フレッドに大変懐かれている。今日も今日とて寝癖を直してやったり、ほつれた制服を修繕してやったり。こんなにも尻尾を振って追いかけてくるなんて、絶対私の事好きだよね?絆されるようにして付き合って知る、彼の本性とは… ◆ムーンライトノベルズにも投稿しています。

異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました

空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」 ――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。 今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって…… 気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?

処理中です...