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第11話 イゴールside
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カリンに諭されて会場に戻ったものの、やはりパーティーはつまらない。
再び医務室に戻りたくなるが彼女の仕事の邪魔をするわけにはいかないため耐える。
来賓との話を終え、そっとため息を吐いたところで後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「陛下」
「ん?あぁ、サイラス。ダレスとの話はついたのか?」
「その件に関しましてはご迷惑をおかけしました。一段落つきましたのでご安心ください」
「そうか」
振り返るとサイラスがいた。
いつもと変わらない声ではあるがその表情に若干の疲れが見えるところから色々あったのだろうと察する。
「あんなに荒れるダレスを見るのは初めてだったから驚いたよ。怪我はないか?」
「カリン先生の言葉で正気に戻ったようでしたのであの後は何もありませんでした」
ダレスがあんなに荒れたのは初めて見た。
数年前、ダレスがある女性を探していると聞いたが当時は俺が多忙を極めており直接会うことはなかったのだ。
まさか元恋人を探していたとは…
「…にしてもまさかダレスが…」
「……やはり騎士団の団長が女性であるのはよくありませんか?」
無意識に呟いた言葉をどう捉えたのか、サイラスは悲しそうにそう尋ねてきた。
俺はサイラスがダレスの元恋人と言うことに驚いたのだが、彼女は女性と言うことを言われたと勘違いしているようだ。
俺としては騎士団の団長は強くて正義感のある人間であってほしい。
そこに性別は問わない。
「いや?全く問題ないぞ。ただアイツの元恋人であることに驚いてな。あと女性であることに気づけなかったことが悔しくてな」
「まぁカリン先生にも助けて頂いていたので気づけないのも無理はありませんよ」
「カリンは知っていたのか!?」
「健康診断があるので流石に隠し通せませんよ。でも公開しないようにお願いしたのは僕です」
「健康診断…そうか、失念していたな」
確かにカリンが知らないわけがないか。
それに女性同士だからこそ苦労を分け合えたに違いない。
そう思えば決して悪いことではない。
そんなことを考えているとサイラスは思い出したように口を開いた。
「仕事の話になりますが、今の所異常事態の報告は上がっていませんのでご安心ください。パーティー終了後も巡回は続けますので全体の報告は明日になると思います」
「分かった。報告は急がなくていい」
「お気遣いありがとうございます。そうだ、パーティーはあと30分ほどで終わる予定ですので終わったらカリン先生をお茶会に誘ってくださいね」
「…何故まだ誘っていないことを知っている」
「カリン先生にカマかけたら無反応だったので察しました」
「カマをかけるな」
カリンをお茶会にさそうという提案をサイラスから貰っていたが、どうにも勇気が出ないまま今日を迎えてしまった。
そもそも幼馴染を誘うというのは妙な気恥ずかしさがあるのだ。
身分差とか色々あるがそれ以前に単純に恥ずかしい。
「では僕は巡回に移ります。終了の挨拶はしっかりお願いしますね」
サイラスはそれだけ言って会場を出てしまった。
そして彼女と入れ替わるようにダレスが近づいてきた。
「おっ、頭は冷えたか問題児」
「さっきは悪かったよ。カリンさんにも謝らないとな」
「多分そんなに怒ってないさ。俺からしたらお前のおかげでサイラスが隠していたことを知れて感謝しかないしさ」
サイラスが女性であるということや元の名前は違ったこと、さらにはダレスの元恋人だったことなど彼女としては知られたくないことかもしれないが俺としては知れて良かった。
ずっと何かを隠されている気がして何となく寂しかったのだ。
「……やっと見つけた恋人はもう俺に何の感情も抱いていないそうだ」
「ほぉ」
「付き合っていた時はお互いタメ口だったのに敬語で様付けだし」
しゃがみ込みそうになっているダレスを見て思う。
この男、こんなに女々しいやつだったっけ。
再び医務室に戻りたくなるが彼女の仕事の邪魔をするわけにはいかないため耐える。
来賓との話を終え、そっとため息を吐いたところで後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「陛下」
「ん?あぁ、サイラス。ダレスとの話はついたのか?」
「その件に関しましてはご迷惑をおかけしました。一段落つきましたのでご安心ください」
「そうか」
振り返るとサイラスがいた。
いつもと変わらない声ではあるがその表情に若干の疲れが見えるところから色々あったのだろうと察する。
「あんなに荒れるダレスを見るのは初めてだったから驚いたよ。怪我はないか?」
「カリン先生の言葉で正気に戻ったようでしたのであの後は何もありませんでした」
ダレスがあんなに荒れたのは初めて見た。
数年前、ダレスがある女性を探していると聞いたが当時は俺が多忙を極めており直接会うことはなかったのだ。
まさか元恋人を探していたとは…
「…にしてもまさかダレスが…」
「……やはり騎士団の団長が女性であるのはよくありませんか?」
無意識に呟いた言葉をどう捉えたのか、サイラスは悲しそうにそう尋ねてきた。
俺はサイラスがダレスの元恋人と言うことに驚いたのだが、彼女は女性と言うことを言われたと勘違いしているようだ。
俺としては騎士団の団長は強くて正義感のある人間であってほしい。
そこに性別は問わない。
「いや?全く問題ないぞ。ただアイツの元恋人であることに驚いてな。あと女性であることに気づけなかったことが悔しくてな」
「まぁカリン先生にも助けて頂いていたので気づけないのも無理はありませんよ」
「カリンは知っていたのか!?」
「健康診断があるので流石に隠し通せませんよ。でも公開しないようにお願いしたのは僕です」
「健康診断…そうか、失念していたな」
確かにカリンが知らないわけがないか。
それに女性同士だからこそ苦労を分け合えたに違いない。
そう思えば決して悪いことではない。
そんなことを考えているとサイラスは思い出したように口を開いた。
「仕事の話になりますが、今の所異常事態の報告は上がっていませんのでご安心ください。パーティー終了後も巡回は続けますので全体の報告は明日になると思います」
「分かった。報告は急がなくていい」
「お気遣いありがとうございます。そうだ、パーティーはあと30分ほどで終わる予定ですので終わったらカリン先生をお茶会に誘ってくださいね」
「…何故まだ誘っていないことを知っている」
「カリン先生にカマかけたら無反応だったので察しました」
「カマをかけるな」
カリンをお茶会にさそうという提案をサイラスから貰っていたが、どうにも勇気が出ないまま今日を迎えてしまった。
そもそも幼馴染を誘うというのは妙な気恥ずかしさがあるのだ。
身分差とか色々あるがそれ以前に単純に恥ずかしい。
「では僕は巡回に移ります。終了の挨拶はしっかりお願いしますね」
サイラスはそれだけ言って会場を出てしまった。
そして彼女と入れ替わるようにダレスが近づいてきた。
「おっ、頭は冷えたか問題児」
「さっきは悪かったよ。カリンさんにも謝らないとな」
「多分そんなに怒ってないさ。俺からしたらお前のおかげでサイラスが隠していたことを知れて感謝しかないしさ」
サイラスが女性であるということや元の名前は違ったこと、さらにはダレスの元恋人だったことなど彼女としては知られたくないことかもしれないが俺としては知れて良かった。
ずっと何かを隠されている気がして何となく寂しかったのだ。
「……やっと見つけた恋人はもう俺に何の感情も抱いていないそうだ」
「ほぉ」
「付き合っていた時はお互いタメ口だったのに敬語で様付けだし」
しゃがみ込みそうになっているダレスを見て思う。
この男、こんなに女々しいやつだったっけ。
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