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第9話
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「どうされました?」
「俺の前では素でいてくれ」
「無茶ですよ。ほら、ダレス様も『私』という1人称と『俺』という1人称を使い分けるでしょう?」
「でも今は『俺』だ」
「私にとってダレス様は来賓であり、目上の方なのです。確かにこの部屋で会話を重ねるにつれて若干絆されはしましたがそこは変わらないので」
そう言うと彼は苦虫を噛み潰したような表情をした。
「真面目すぎないか」
「何故僕が折れると思ったのですか」
「……あ、いいこと思いついた」
彼の言葉に呆れていると何かを思いついたのか口角を吊り上げた。
とんでもなく嫌な予感がする。
「さっき不敬罪がどうたら言っていただろ?」
「どうたらって…聞いていなかったのですか!?」
人の決死の言葉を何だと思っているのだろうか。
お門違いなのは分かっているがせめて聞いてくれよ。
「聞くわけないだろう。それともなんだ、あんな死にそうな顔していたバレッサをそのままにしておけば良かったのか?」
「…そんな顔してました?」
「してたしてた。俺そんなに嫌われたのかと思って絶望したんだから」
ケラケラと笑いながら言われるとなんだか怒っていたのが馬鹿らしくなってきた。
どうやら最初から彼に私を裁く気はなかったらしい。
「ダレス様、そろそろ本題に戻りましょう」
「ん?あぁ、そうだな。で俺が言いたかったのは、そんなに不敬罪とやらを気にするなら罪を償わせてやるということだ」
軽いテンションで罪を償わせてやるなんて言われてしまえば背に滝のような汗が流れる。
王族と言うのは煌びやかであり、残酷だ。
それが彼ら性質のようなものだから仕方ないのだが途中から城務めを果たした者にとってその冷たさに慣れることはない。
だからこそ、彼の一言は私にとっては恐ろしい以外の何物でもないのだ。
「…はい。償えることならば償わせてください」
「2人で居る時は素で居てくれ。この際サイラスだろうがバレッサだろうが問わないから」
「…へ?」
「大変か?」
「…そんなことでいいのですか?」
「ああ」
嬉しそうにそう言った彼に思わず聞き返してしまった。
「てっきり『付き合え』とか言われるのかと思いました」
「迷ったけれど関係だけ結んでも意味ないからさ。それはゆっくり外堀を埋めていくから覚悟してくれ」
少年のような笑顔でとんでもないことを言われる。
その宣言は怖いですって。
「でも明日には自国に帰られるのでしょう?」
「羽を伸ばしてこいと父上に言われたし1週間ぐらいはこっちにいる予定だ。まぁ、帰ってからも手紙を送る予定だったけど」
「…聞いてません」
「言ってないからな。ちなみに時間があるのにわざと返信しなかった場合は俺が直接来るから覚えておけよ?」
凄い勢いで逃げ道を塞がれている気がする。
あなたはその攻め方でいいのですか。
明らかに負担が大きすぎるだろう。
「ダレス様のご両親が知ったらきっと怒りますよ。騎士団の団長で、しかも男装している元孤児に執着しているだなんて」
「バレッサのことで?それに関しては大丈夫じゃないかな。『覚悟がある人ならそれでいい』って言われたし」
「……え?」
さらりと爆弾発言を落とされて思考が停止する。
「国を守る覚悟がある人間なら俺の両親は拒まない。騎士団の団長は命を懸けて国を守っているんだ。それだけの覚悟があるならばきっと認めてくださるさ」
「待ってください、結婚はしませんよ。というかお付き合いもしませんから」
「何でだ?」
きょとんとしたような顔で首を傾げられる。
何て説明しようかと迷っていたが、ここに来てカリンの口癖を思い出した。
「俺の前では素でいてくれ」
「無茶ですよ。ほら、ダレス様も『私』という1人称と『俺』という1人称を使い分けるでしょう?」
「でも今は『俺』だ」
「私にとってダレス様は来賓であり、目上の方なのです。確かにこの部屋で会話を重ねるにつれて若干絆されはしましたがそこは変わらないので」
そう言うと彼は苦虫を噛み潰したような表情をした。
「真面目すぎないか」
「何故僕が折れると思ったのですか」
「……あ、いいこと思いついた」
彼の言葉に呆れていると何かを思いついたのか口角を吊り上げた。
とんでもなく嫌な予感がする。
「さっき不敬罪がどうたら言っていただろ?」
「どうたらって…聞いていなかったのですか!?」
人の決死の言葉を何だと思っているのだろうか。
お門違いなのは分かっているがせめて聞いてくれよ。
「聞くわけないだろう。それともなんだ、あんな死にそうな顔していたバレッサをそのままにしておけば良かったのか?」
「…そんな顔してました?」
「してたしてた。俺そんなに嫌われたのかと思って絶望したんだから」
ケラケラと笑いながら言われるとなんだか怒っていたのが馬鹿らしくなってきた。
どうやら最初から彼に私を裁く気はなかったらしい。
「ダレス様、そろそろ本題に戻りましょう」
「ん?あぁ、そうだな。で俺が言いたかったのは、そんなに不敬罪とやらを気にするなら罪を償わせてやるということだ」
軽いテンションで罪を償わせてやるなんて言われてしまえば背に滝のような汗が流れる。
王族と言うのは煌びやかであり、残酷だ。
それが彼ら性質のようなものだから仕方ないのだが途中から城務めを果たした者にとってその冷たさに慣れることはない。
だからこそ、彼の一言は私にとっては恐ろしい以外の何物でもないのだ。
「…はい。償えることならば償わせてください」
「2人で居る時は素で居てくれ。この際サイラスだろうがバレッサだろうが問わないから」
「…へ?」
「大変か?」
「…そんなことでいいのですか?」
「ああ」
嬉しそうにそう言った彼に思わず聞き返してしまった。
「てっきり『付き合え』とか言われるのかと思いました」
「迷ったけれど関係だけ結んでも意味ないからさ。それはゆっくり外堀を埋めていくから覚悟してくれ」
少年のような笑顔でとんでもないことを言われる。
その宣言は怖いですって。
「でも明日には自国に帰られるのでしょう?」
「羽を伸ばしてこいと父上に言われたし1週間ぐらいはこっちにいる予定だ。まぁ、帰ってからも手紙を送る予定だったけど」
「…聞いてません」
「言ってないからな。ちなみに時間があるのにわざと返信しなかった場合は俺が直接来るから覚えておけよ?」
凄い勢いで逃げ道を塞がれている気がする。
あなたはその攻め方でいいのですか。
明らかに負担が大きすぎるだろう。
「ダレス様のご両親が知ったらきっと怒りますよ。騎士団の団長で、しかも男装している元孤児に執着しているだなんて」
「バレッサのことで?それに関しては大丈夫じゃないかな。『覚悟がある人ならそれでいい』って言われたし」
「……え?」
さらりと爆弾発言を落とされて思考が停止する。
「国を守る覚悟がある人間なら俺の両親は拒まない。騎士団の団長は命を懸けて国を守っているんだ。それだけの覚悟があるならばきっと認めてくださるさ」
「待ってください、結婚はしませんよ。というかお付き合いもしませんから」
「何でだ?」
きょとんとしたような顔で首を傾げられる。
何て説明しようかと迷っていたが、ここに来てカリンの口癖を思い出した。
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