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第7話
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それから長い時間をかけて今までのことを説明した。
ダレス様と出会った経緯
王族とは全く知らなかったこと
騎士団への入団に合わせて手紙にわざと返信しなかったこと
性別は詐称したのではなく濁していたら噂が1人歩きしてしまっただけだということ
男装は舐められないように自主的にやっていたこと
黙って話を聞いていた3人は時々顔を顰めたり、首を傾げたりしていた。
しかし誰も遮ることなく長い話を真剣に聞いてくれていた。
一通り話し終えるとイゴール陛下から質問が飛んできた。
「名前についてはどういう理由だ?」
「えっと…実は僕は孤児院の出身なんです。孤児院を出る時に名前を変える手続きをしました。その時から男装して騎士団に入るつもりだったので安直に厳つそうな名前にしようと思って…」
もはや尋問の様な空気に冷や汗をかきながら何とか答える。
陛下とダレス様はさらに真剣な目つきでこちらを見つめてくる。
「なら……お前は最初から女だったということなのか?」
「はい」
「……男だと思っていたから今まで男として接してきたのだが…」
「そこは本当にすみませんとしか言えないです。あ、でもこれから女として接してほしいとかは全く思っていませんので!今まで通りでお願い…したいです」
自然と身体が縮こまっていくのを感じる。
2人の反応が怖くて仕方なかった。
暫く沈黙が流れ、今度はダレス様が口を開く。
「なぁ、俺との関係はバレッサの中ではどうなったんだ?」
腕を組みながらダレス様は聞いてくる。
きっとこの返答次第では自分の首と胴体はお別れしてしまうことになるだろう。
「し、自然消滅したと思っています…」
「は?」
「僕のことを探していたのもお付き合いしていた過去を口止めする為でしょう?心配なさらなくても恋愛遍歴を話す友人もカリン先生しかいませんし…」
「俺がそんなしょうもないことのために何年もバレッサを探し続けていたと本気で思っているのか?」
「正直ダレス様が僕のことを覚えてくださっているとは思っておりませんでしたので…」
言い終わるより前にいつの間にか近づいていたダレス様に右手首を掴まれる。
そのまま床に押し倒されると逃げられないように馬乗りされる。
「ちょっ……痛いです、ダレス様!」
「手紙が返ってこなくなってから俺がどんな思いをしていたのか分かってないだろ」
目が据わったダレス様に抵抗するも男女の力の差は歴然でびくともしない。
騎士団の団長と言えど、私は体術や剣術が得意なだけで素直な力比べでは寧ろ弱い部類だ。
2人に助けを求めようと目線を上げるとちょうどカリンさんがクッションを振り上げるのが見えた。
「何してるのよ!」
その言葉と共にカリンは迷いなくダレス様の頭にクッションを振り下ろした。
面識があるとはいえ近隣国の国王の頭を殴るのは流石にまずくないか!?
殴られたダレス様は特に痛くなかったようだが、邪魔が入り苛立ったようにカリンを振り返った。
「無礼を承知でお伝えしますがサイラスは貴方の玩具ではありません。言いたいことがあるならちゃんと言葉にしなさい」
カリンさんの鋭い言葉で我に帰ったのかダレス様はおずおずと僕の上から退いた。
僕も体を起こして立ち上がる。
「ダレス様も今夜は城でお泊りになられるのでしょう?ここはこれから酒に潰れた方々の溜まり場と化しますので積もる話はお部屋でどうぞ」
「…分かった」
「陛下もそろそろ会場にお戻りください。主催者不在のパーティーなんて聞いたことありませんから」
「……」
「愚痴なら今度聞きますから今は頑張ってきてください」
そう言ってカリンは陛下の手を握ると優しく微笑んだ。
逃げないように右手首を握られたままの僕にとって、その姿は羨ましいものだった。
2人を見つめているとダレス様に手を引かれた。
「行こう」
簡潔に吐かれた言葉には有無を言わせぬ圧が含まれていた。
きっとこのまま抵抗してここに居ても2人に迷惑をかけてしまうだけだ。
僕は1つ頷いて引かれるままダレス様についていった。
ダレス様と出会った経緯
王族とは全く知らなかったこと
騎士団への入団に合わせて手紙にわざと返信しなかったこと
性別は詐称したのではなく濁していたら噂が1人歩きしてしまっただけだということ
男装は舐められないように自主的にやっていたこと
黙って話を聞いていた3人は時々顔を顰めたり、首を傾げたりしていた。
しかし誰も遮ることなく長い話を真剣に聞いてくれていた。
一通り話し終えるとイゴール陛下から質問が飛んできた。
「名前についてはどういう理由だ?」
「えっと…実は僕は孤児院の出身なんです。孤児院を出る時に名前を変える手続きをしました。その時から男装して騎士団に入るつもりだったので安直に厳つそうな名前にしようと思って…」
もはや尋問の様な空気に冷や汗をかきながら何とか答える。
陛下とダレス様はさらに真剣な目つきでこちらを見つめてくる。
「なら……お前は最初から女だったということなのか?」
「はい」
「……男だと思っていたから今まで男として接してきたのだが…」
「そこは本当にすみませんとしか言えないです。あ、でもこれから女として接してほしいとかは全く思っていませんので!今まで通りでお願い…したいです」
自然と身体が縮こまっていくのを感じる。
2人の反応が怖くて仕方なかった。
暫く沈黙が流れ、今度はダレス様が口を開く。
「なぁ、俺との関係はバレッサの中ではどうなったんだ?」
腕を組みながらダレス様は聞いてくる。
きっとこの返答次第では自分の首と胴体はお別れしてしまうことになるだろう。
「し、自然消滅したと思っています…」
「は?」
「僕のことを探していたのもお付き合いしていた過去を口止めする為でしょう?心配なさらなくても恋愛遍歴を話す友人もカリン先生しかいませんし…」
「俺がそんなしょうもないことのために何年もバレッサを探し続けていたと本気で思っているのか?」
「正直ダレス様が僕のことを覚えてくださっているとは思っておりませんでしたので…」
言い終わるより前にいつの間にか近づいていたダレス様に右手首を掴まれる。
そのまま床に押し倒されると逃げられないように馬乗りされる。
「ちょっ……痛いです、ダレス様!」
「手紙が返ってこなくなってから俺がどんな思いをしていたのか分かってないだろ」
目が据わったダレス様に抵抗するも男女の力の差は歴然でびくともしない。
騎士団の団長と言えど、私は体術や剣術が得意なだけで素直な力比べでは寧ろ弱い部類だ。
2人に助けを求めようと目線を上げるとちょうどカリンさんがクッションを振り上げるのが見えた。
「何してるのよ!」
その言葉と共にカリンは迷いなくダレス様の頭にクッションを振り下ろした。
面識があるとはいえ近隣国の国王の頭を殴るのは流石にまずくないか!?
殴られたダレス様は特に痛くなかったようだが、邪魔が入り苛立ったようにカリンを振り返った。
「無礼を承知でお伝えしますがサイラスは貴方の玩具ではありません。言いたいことがあるならちゃんと言葉にしなさい」
カリンさんの鋭い言葉で我に帰ったのかダレス様はおずおずと僕の上から退いた。
僕も体を起こして立ち上がる。
「ダレス様も今夜は城でお泊りになられるのでしょう?ここはこれから酒に潰れた方々の溜まり場と化しますので積もる話はお部屋でどうぞ」
「…分かった」
「陛下もそろそろ会場にお戻りください。主催者不在のパーティーなんて聞いたことありませんから」
「……」
「愚痴なら今度聞きますから今は頑張ってきてください」
そう言ってカリンは陛下の手を握ると優しく微笑んだ。
逃げないように右手首を握られたままの僕にとって、その姿は羨ましいものだった。
2人を見つめているとダレス様に手を引かれた。
「行こう」
簡潔に吐かれた言葉には有無を言わせぬ圧が含まれていた。
きっとこのまま抵抗してここに居ても2人に迷惑をかけてしまうだけだ。
僕は1つ頷いて引かれるままダレス様についていった。
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