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過去の遺物たち(新と比較のため置いておきます)
御出座し(2/25 一部変更)
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断続的な水音が響く陰湿な雰囲気を放つ洞窟の中で、ルファーは目を覚ました。
「ん……っ、何だここ…は……っ」
ルファーは、彼を森で襲った生物によって、両手を上げた状態で拘束されていた。
(くそっ、動けない……)
ルファーの鎧にも、不気味な紫がかった色をした生物が、数匹絡みついている。
「くっ、ふんんっ」
(どうにかして、ここから脱出しなければっ)
ルファーは、力の限り身体を動かして逃げようとする。
「こんのっ俺を離せっ、ふんっ」
ルファーの努力も虚しく、身体を捩ってもびくともしない。
「お目覚めですか?」
「だ、誰だっ」
突然ルファーの背後から、声が聞こえた。
コツ……コツ……
(刺客か?!)
得体の知れない相手の声に、ルファーは身体を緊張させた。
「初めまして」
ローブを羽織った男が、ルファーの後ろからぬっと姿を現した。フードに隠れて、顔はよく見えない。
「誰だ貴様! さっさとこの拘束をとけっ」
「嫌ですよ、せっかく捕まえたんですから。それに……」
男が耳元に顔を近づける。
「こんなに触手がお似合いの方、なかなかお目にかかれませんから」
男の吐息が耳を擽り、指先でルファーの腹を撫で回す。
ゾクゾク……ッ
ありったけの力で、ルファーは頭を振って男を振り払う。
「触るな気色が悪いっ」
(なんだ今の感覚は……っ)
味わったことのない身体中を這い回るような感覚に、ルファーは内心恐怖を覚えた。
「ふふふ、やっぱり貴方は噂の通り獰猛な獣のようですね」
「何……?」
「あー怖い、そんなに睨みつけないでください。魔斬りのルファー」
【魔斬《まぎ》りのルファー】
自身の身体に負けないくらい巨大な剣で、魔物たちを容赦なく切り裂いていく、ルファーの通り名だ。
「お前は、誰だ……?」
「ああそうそう、興奮して自己紹介が遅れました」
どこから吹いたのか、生暖かい風が吹き起こり男のフードを外す。
丸メガネをかけた清純そうな青年の顔が露わになる。
「私《わたくし》は魔国の淫術師《いんじゅつし》でございます」
「淫術師、だとっ」
「左様でございます」
【淫術師】
彼らは、口にするのも憚れるような恐ろしい術を使うという。
「ふんっ、その淫術師が俺に何のようだ」
「良くぞ聞いてくださいましたッ!」
演技がかったような声と動きで、淫術師は両手を広げる。
「魔王様が直々に私めに与えて下さった、特別任務。あぁっ、なんて光栄なことでしょう!」
恍惚とした表情で、淫術師は続けた。
「貴方様は選ばれたのです」
「選ばれた、だと?」
ルファーは訝しげな眼差しで淫術師を見る。
「はい。貴方は、魔国《まこく》に貢献する人物となられる方となったのです」
「……?!」
さらりと口にされた衝撃の言葉に、ルファーは一瞬言葉を失ったが、すぐさま顔を真っ赤にし烈火の如く怒り出す。
「何を言っている貴様っ」
「まあまあ、そんなに声を荒らげないでください。怖いじゃないですか」
「これが冷静でいられるわけがないだろっ」
「あなたが何と言おうと、これは決定事項なのです」
「何?」
「タタラン王国の生きとし生けるもの、全てが我が魔国の性的奴隷となります。あなたには、その礎となっていただくのです」
「ははっ」
「ん? 何がおかしいのです?」
ルファーは鋭く淫術師を睨みつけた。
「穢れなきタタラン王国は、貴様らのような下賤な者どもに堕ちるなど、あり得るわけがないっ」
言い切った後、鼻でルファーは笑って続ける。
「第一、この俺がお前たちのような低俗な輩の手先に、進んでなるわけがないだろう」
「……ほぉお、随分と強気なんですねぇ」
「当たり前だろう」
「それにしては、触手にガッチリ捕まってますが」
「こんなものっ、俺がすぐに殺してっ、やるっ」
三日月型に目を細め、淫術師は薄気味悪い笑みを浮かべた。
「では、貴方にその矜持を見せていただきましょうか」
パチン──ッ
淫術師のフィンガースナップの音が、洞窟中に鳴り渡った。
「ん……っ、何だここ…は……っ」
ルファーは、彼を森で襲った生物によって、両手を上げた状態で拘束されていた。
(くそっ、動けない……)
ルファーの鎧にも、不気味な紫がかった色をした生物が、数匹絡みついている。
「くっ、ふんんっ」
(どうにかして、ここから脱出しなければっ)
ルファーは、力の限り身体を動かして逃げようとする。
「こんのっ俺を離せっ、ふんっ」
ルファーの努力も虚しく、身体を捩ってもびくともしない。
「お目覚めですか?」
「だ、誰だっ」
突然ルファーの背後から、声が聞こえた。
コツ……コツ……
(刺客か?!)
得体の知れない相手の声に、ルファーは身体を緊張させた。
「初めまして」
ローブを羽織った男が、ルファーの後ろからぬっと姿を現した。フードに隠れて、顔はよく見えない。
「誰だ貴様! さっさとこの拘束をとけっ」
「嫌ですよ、せっかく捕まえたんですから。それに……」
男が耳元に顔を近づける。
「こんなに触手がお似合いの方、なかなかお目にかかれませんから」
男の吐息が耳を擽り、指先でルファーの腹を撫で回す。
ゾクゾク……ッ
ありったけの力で、ルファーは頭を振って男を振り払う。
「触るな気色が悪いっ」
(なんだ今の感覚は……っ)
味わったことのない身体中を這い回るような感覚に、ルファーは内心恐怖を覚えた。
「ふふふ、やっぱり貴方は噂の通り獰猛な獣のようですね」
「何……?」
「あー怖い、そんなに睨みつけないでください。魔斬りのルファー」
【魔斬《まぎ》りのルファー】
自身の身体に負けないくらい巨大な剣で、魔物たちを容赦なく切り裂いていく、ルファーの通り名だ。
「お前は、誰だ……?」
「ああそうそう、興奮して自己紹介が遅れました」
どこから吹いたのか、生暖かい風が吹き起こり男のフードを外す。
丸メガネをかけた清純そうな青年の顔が露わになる。
「私《わたくし》は魔国の淫術師《いんじゅつし》でございます」
「淫術師、だとっ」
「左様でございます」
【淫術師】
彼らは、口にするのも憚れるような恐ろしい術を使うという。
「ふんっ、その淫術師が俺に何のようだ」
「良くぞ聞いてくださいましたッ!」
演技がかったような声と動きで、淫術師は両手を広げる。
「魔王様が直々に私めに与えて下さった、特別任務。あぁっ、なんて光栄なことでしょう!」
恍惚とした表情で、淫術師は続けた。
「貴方様は選ばれたのです」
「選ばれた、だと?」
ルファーは訝しげな眼差しで淫術師を見る。
「はい。貴方は、魔国《まこく》に貢献する人物となられる方となったのです」
「……?!」
さらりと口にされた衝撃の言葉に、ルファーは一瞬言葉を失ったが、すぐさま顔を真っ赤にし烈火の如く怒り出す。
「何を言っている貴様っ」
「まあまあ、そんなに声を荒らげないでください。怖いじゃないですか」
「これが冷静でいられるわけがないだろっ」
「あなたが何と言おうと、これは決定事項なのです」
「何?」
「タタラン王国の生きとし生けるもの、全てが我が魔国の性的奴隷となります。あなたには、その礎となっていただくのです」
「ははっ」
「ん? 何がおかしいのです?」
ルファーは鋭く淫術師を睨みつけた。
「穢れなきタタラン王国は、貴様らのような下賤な者どもに堕ちるなど、あり得るわけがないっ」
言い切った後、鼻でルファーは笑って続ける。
「第一、この俺がお前たちのような低俗な輩の手先に、進んでなるわけがないだろう」
「……ほぉお、随分と強気なんですねぇ」
「当たり前だろう」
「それにしては、触手にガッチリ捕まってますが」
「こんなものっ、俺がすぐに殺してっ、やるっ」
三日月型に目を細め、淫術師は薄気味悪い笑みを浮かべた。
「では、貴方にその矜持を見せていただきましょうか」
パチン──ッ
淫術師のフィンガースナップの音が、洞窟中に鳴り渡った。
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