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番外編
白井 真『ほどほどが一番』 2
しおりを挟む「真くんはすごく可愛いんだから、絶対に僕の側から離れないでよ。分かった?」
「分かった分かった、離れないよ。もうこれで30回目……いい加減、耳にタコが出来そう」
だけど、奏多の制止を振り切って出て行きあんなことになった手前、母国に帰るまでは奏多の言う通りにした方がいいのは理解できる。
でも、俺が可愛いってのは理解できない。
確かに、奏多には日頃からよく可愛いと言われていたけど、ただのリップサービスかと思っていた。それが本気だったなんて、思いもしていなかったのだ。
(可愛いって言うなら、奏多の方が……。いや、奏多は可愛い系ってより綺麗系か?)
多分、奏多がアイドルとか俳優になったらすごく人気出ると思う。
俺の容姿で狙われるなら、奏多の方が危ないんじゃないか……?
色白で顔が小さく脚もスラリと長いし、目は大きく切れ長で、睫毛とかもめっちゃ長くて、鼻筋もまるで見本のような美しさだし、唇も桜色で……――。
「ねぇ、もしかして……誘ってる?」
「へっ!?」
なんでそう思ったのかと、後ずさる。
「そんな、唇を何度も舐めながら僕のこと眺められちゃあ……ねぇ?」
「え、はっ!? そんなことしてない!」
「ひどいなぁ、僕が嘘ついてるって?」
ニコニコと笑いながら近づいてくる奏多から逃げようとして、尻餅をついてしまった。
(ぅぐ、自分ダサすぎる……!)
「まったく、真くんからは目が離せないよ。いろいろな面で無防備だから、ほんと心配になる」
ヒョイと軽々と持ち上げられ、近くにあるベッドに下ろされた。
や、やるのか……とドキドキと胸が高鳴る。
別に、逃げようとしたのは奏多とするのが嫌なわけじゃなく、さっきの今でなんだか素直になれないっていうかなんていうか……と、心の中で言い訳をする。
しかし、一向に触れてこない。
不思議に思い、奏多を見上げると――奏多はいつものニコニコした笑みではない、真剣な顔を浮かべていて、それに驚く。
「――僕が、何も言わなかったのは……。真くんにもう一度、結婚の意思を聞くのが怖かったからだよ」
「え……?」
「少なからず、真くんは僕が軽薄な人間だと思ってるんじゃない? 昨日言ったことを今日にはどうでもいいと切り捨てるような、そんな人間に」
「え、ちょっ、奏多なに言って……? そんなこ――」
「真くんは、僕を好いてくれてはいても、信じてはいない。それで、常に逃げ道を作ろうとしている」
「まず、俺の話――」
「きっと、僕が結婚したいって言ったところで、付き合ってるんだから十分だろうと――」
「俺の話を聞けーーー!!」
全力で叫んだからか、奏多が耳を押さえてブルリと震えている。耳キーンしているようだ。
「バズーカートークすぎ! 俺にも喋らせろ! あと勘違いすんなよ、お前は軽薄な人間レベルじゃなくてパワフル不思議ちゃんだ。あと、なんだ……逃げ道だっけ? んなの、奏多と付き合うって決めた時点で自分で叩き壊してんだけど! 勝手に被害妄想爆発させてんじゃねぇ!」
「真くん……」
「はぁ……。自分で勝手に解釈しないでさ、ちゃんと言えよ。奏多を信じてなきゃ、とっくに逃げてる。お前こそ、もっと俺を信じろ」
感動したのか、耳が痛いのか、奏多が目をウルウルさせている。
「まぁ、つまり……。急だったけど、奏多と結婚出来たのはめちゃくちゃ嬉しい――んぎゃっ!?」
「一生大事にする! こんなに感動したの生まれて初めて! 真くん、好き好き好き!」
奏多からの激しいハグ。
うん、感動のウルウルだったようだ。
「真くん、いい?」
チュッと頬に口付けを落とされる。
「わ、わざわざ聞かなくても……」
「そうなの? いつもは、急にするなって怒るのに」
「そ、それは……――んっ!」
はむっと耳たぶを軽く噛まれ、右耳の後ろを舌がなぞり、反対側も同じように、味わうかのようにゆっくりと首筋におりてくる。
なんだかいつもより焦らされているようで、身体をモジモジと動かしてしまう。
「奏多、早く……」
「駄目だよ、大事にするって言ったでしょ」
小さく吸う音を立たせ、肌に赤い跡をつけられる。
なのに、胸の頂には触れてこない。
「いいから、こっちの方は大事にしなくていいから、もっと触って!」
「ふふ、真くん。そんなこと言って……いいの?」
「いいから、早く奏多のが欲しい……!」
グッと強く胸の粒を摘ままれ、口から甘い声が漏れる。
「……あとで、違うとか言って怒らないでね? 僕なりに大事にしようと耐えてたんだから……」
「ひっ、ふぁあ……!」
早急に後ろの蕾に指を入れられ、ぐちゃぐちゃとかき回される。
先走りで後ろの蕾まで濡れていたのだろう、それを使って中を暴かれていく――。
「真くん、愛してるよ」
邪気のない日だまりのような優しい笑顔。
奏多がたまに見せる、俺だけに見せる顔。
それが嬉しくて、そんな奏多が愛おしくて、胸がキュンと上にあがる感じがする。
「お、俺も……奏多を愛してる」
――身体の中に、重く強い衝撃が走る。
お互いがお互いを求め。
初めてじゃないのに、今回が初めての繋がりかのような……――時間も忘れて貪るような交わり。
きっと俺は、奏多を知れば知るほど好きになるだろう。
それは、もしかしたら奏多も同じなのかもしれない。
抱きしめるよう身を重ねてくる大好きなパートナーの全てを受け入れようと、俺もその背を強く抱きしめ返した。
♢◆♢
「真くん、怒らないよね? 僕、ちゃんと言ったからね?」
「クソッ! 最近おとなしいから、お前が超絶絶倫ヤロウってこと忘れてた……。凡人はほどほどが一番なん……ぐぅうっ、マジで腰イッテェ……!」
一日中は、身体に悪い。
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ヤンデレ、執着、溺愛最高です!
是非2組ともの結婚後のお話もあれば読みたいです♪
感想ありがとうございます!
その3点セットが入ると、ホント最高ですよね~!(笑)
結婚後のお話などは考えていなかったのでお約束は出来ませんが、もし思い浮かんだら執筆させて頂きますね(*^^*)
私のツボを押すヤンデレでした!!笑
いい意味で最後は裏切られました〜!
ありがとうございます♡♡
これからも応援します!!
感想ありがとうございます!
書いたものを気に入って頂けて、応援まで……めちゃくちゃ嬉しいです!
自分の好きにしか書いていなかったので、執筆当初は感想とか頂けるものだと思っていなかったですが、読者様たちは優しいですね。(つд;)嬉
これからもちまちまと書いていきますので、気に入ったヤンデレがいましたら、また覗いて頂けたら嬉しいです!(*^-^*)
感想ありがとうございます!
そう言って頂けて、とても嬉しいです( ;∀;)嬉泣
ここは、真という人間の新たなスタート地点となる部分でもあります。
虚勢→諦念→○○。といった形にですね!
これは、奏多がいるからこそ、新たなスタートを踏み出せます。
『白井 真 20』で、本編完結にはなりますが、番外編で各視点のお話や、少し先の未来のお話も数話ほど出しますので、引き続き完結までお楽しみ下さい(*^^*)