可哀想な君に

未知 道

文字の大きさ
上 下
36 / 36
番外編

白井 真『ほどほどが一番』 2

しおりを挟む
 


「真くんはすごく可愛いんだから、絶対に僕の側から離れないでよ。分かった?」
「分かった分かった、離れないよ。もうこれで30回目……いい加減、耳にタコが出来そう」

 だけど、奏多の制止を振り切って出て行きあんなことになった手前、母国に帰るまでは奏多の言う通りにした方がいいのは理解できる。
 でも、俺が可愛いってのは理解できない。

 確かに、奏多には日頃からよく可愛いと言われていたけど、ただのリップサービスかと思っていた。それが本気だったなんて、思いもしていなかったのだ。

(可愛いって言うなら、奏多の方が……。いや、奏多は可愛い系ってより綺麗系か?)

 多分、奏多がアイドルとか俳優になったらすごく人気出ると思う。
 俺の容姿で狙われるなら、奏多の方が危ないんじゃないか……?

 色白で顔が小さく脚もスラリと長いし、目は大きく切れ長で、睫毛とかもめっちゃ長くて、鼻筋もまるで見本のような美しさだし、唇も桜色で……――。

「ねぇ、もしかして……誘ってる?」
「へっ!?」

 なんでそう思ったのかと、後ずさる。

「そんな、唇を何度も舐めながら僕のこと眺められちゃあ……ねぇ?」
「え、はっ!? そんなことしてない!」
「ひどいなぁ、僕が嘘ついてるって?」

 ニコニコと笑いながら近づいてくる奏多から逃げようとして、尻餅をついてしまった。

(ぅぐ、自分ダサすぎる……!)

「まったく、真くんからは目が離せないよ。いろいろな面で無防備だから、ほんと心配になる」

 ヒョイと軽々と持ち上げられ、近くにあるベッドに下ろされた。

 や、やるのか……とドキドキと胸が高鳴る。

 別に、逃げようとしたのは奏多とするのが嫌なわけじゃなく、さっきの今でなんだか素直になれないっていうかなんていうか……と、心の中で言い訳をする。

 しかし、一向に触れてこない。

 不思議に思い、奏多を見上げると――奏多はいつものニコニコした笑みではない、真剣な顔を浮かべていて、それに驚く。


「――僕が、何も言わなかったのは……。真くんにもう一度、結婚の意思を聞くのが怖かったからだよ」
「え……?」
「少なからず、真くんは僕が軽薄な人間だと思ってるんじゃない? 昨日言ったことを今日にはどうでもいいと切り捨てるような、そんな人間に」
「え、ちょっ、奏多なに言って……? そんなこ――」
「真くんは、僕を好いてくれてはいても、信じてはいない。それで、常に逃げ道を作ろうとしている」
「まず、俺の話――」
「きっと、僕が結婚したいって言ったところで、付き合ってるんだから十分だろうと――」
「俺の話を聞けーーー!!」

 全力で叫んだからか、奏多が耳を押さえてブルリと震えている。耳キーンしているようだ。

「バズーカートークすぎ! 俺にも喋らせろ! あと勘違いすんなよ、お前は軽薄な人間レベルじゃなくてパワフル不思議ちゃんだ。あと、なんだ……逃げ道だっけ? んなの、奏多と付き合うって決めた時点で自分で叩き壊してんだけど! 勝手に被害妄想爆発させてんじゃねぇ!」
「真くん……」
「はぁ……。自分で勝手に解釈しないでさ、ちゃんと言えよ。奏多を信じてなきゃ、とっくに逃げてる。お前こそ、もっと俺を信じろ」

 感動したのか、耳が痛いのか、奏多が目をウルウルさせている。

「まぁ、つまり……。急だったけど、奏多と結婚出来たのはめちゃくちゃ嬉しい――んぎゃっ!?」
「一生大事にする! こんなに感動したの生まれて初めて! 真くん、好き好き好き!」

 奏多からの激しいハグ。
 うん、感動のウルウルだったようだ。

「真くん、いい?」

 チュッと頬に口付けを落とされる。

「わ、わざわざ聞かなくても……」
「そうなの? いつもは、急にするなって怒るのに」
「そ、それは……――んっ!」

 はむっと耳たぶを軽く噛まれ、右耳の後ろを舌がなぞり、反対側も同じように、味わうかのようにゆっくりと首筋におりてくる。

 なんだかいつもより焦らされているようで、身体をモジモジと動かしてしまう。

「奏多、早く……」
「駄目だよ、大事にするって言ったでしょ」

 小さく吸う音を立たせ、肌に赤い跡をつけられる。
 なのに、胸の頂には触れてこない。

「いいから、こっちの方は大事にしなくていいから、もっと触って!」
「ふふ、真くん。そんなこと言って……いいの?」
「いいから、早く奏多のが欲しい……!」

 グッと強く胸の粒を摘ままれ、口から甘い声が漏れる。

「……あとで、違うとか言って怒らないでね? 僕なりに大事にしようと耐えてたんだから……」
「ひっ、ふぁあ……!」

 早急に後ろの蕾に指を入れられ、ぐちゃぐちゃとかき回される。
 先走りで後ろの蕾まで濡れていたのだろう、それを使って中を暴かれていく――。

「真くん、愛してるよ」

 邪気のない日だまりのような優しい笑顔。
 奏多がたまに見せる、俺だけに見せる顔。

 それが嬉しくて、そんな奏多が愛おしくて、胸がキュンと上にあがる感じがする。

「お、俺も……奏多を愛してる」

 ――身体の中に、重く強い衝撃が走る。

 お互いがお互いを求め。
 初めてじゃないのに、今回が初めての繋がりかのような……――時間も忘れて貪るような交わり。

 きっと俺は、奏多を知れば知るほど好きになるだろう。
 それは、もしかしたら奏多も同じなのかもしれない。

 抱きしめるよう身を重ねてくる大好きなパートナーの全てを受け入れようと、俺もその背を強く抱きしめ返した。



 ♢◆♢


「真くん、怒らないよね? 僕、ちゃんと言ったからね?」
「クソッ! 最近おとなしいから、お前が超絶絶倫ヤロウってこと忘れてた……。凡人はほどほどが一番なん……ぐぅうっ、マジで腰イッテェ……!」

 一日中は、身体に悪い。


しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

tefu
2024.09.08 tefu

ヤンデレ、執着、溺愛最高です!
是非2組ともの結婚後のお話もあれば読みたいです♪

未知 道
2024.09.11 未知 道


感想ありがとうございます!

その3点セットが入ると、ホント最高ですよね~!(笑)

結婚後のお話などは考えていなかったのでお約束は出来ませんが、もし思い浮かんだら執筆させて頂きますね(*^^*)

解除
mmmma
2024.05.22 mmmma

私のツボを押すヤンデレでした!!笑
いい意味で最後は裏切られました〜!
ありがとうございます♡♡
これからも応援します!!

未知 道
2024.05.23 未知 道


感想ありがとうございます!

書いたものを気に入って頂けて、応援まで……めちゃくちゃ嬉しいです!

自分の好きにしか書いていなかったので、執筆当初は感想とか頂けるものだと思っていなかったですが、読者様たちは優しいですね。(つд;)嬉

これからもちまちまと書いていきますので、気に入ったヤンデレがいましたら、また覗いて頂けたら嬉しいです!(*^-^*)

解除
kas
2024.04.20 kas
ネタバレ含む
未知 道
2024.04.20 未知 道


感想ありがとうございます!

そう言って頂けて、とても嬉しいです( ;∀;)嬉泣

ここは、真という人間の新たなスタート地点となる部分でもあります。

虚勢→諦念→○○。といった形にですね!

これは、奏多がいるからこそ、新たなスタートを踏み出せます。

『白井 真 20』で、本編完結にはなりますが、番外編で各視点のお話や、少し先の未来のお話も数話ほど出しますので、引き続き完結までお楽しみ下さい(*^^*)

解除

あなたにおすすめの小説

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

俺の好きな人

𝓜a𝓨̆̈𝕦
BL
俺には大、大大、大大大大大大大大好きな人がいる 俺以外に触れらせないし 逃がさないよ?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

ヤンデレ蠱毒

まいど
BL
王道学園の生徒会が全員ヤンデレ。四面楚歌ならぬ四面ヤンデレの今頼れるのは幼馴染しかいない!幼馴染は普通に見えるが…………?

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

重すぎる愛には重すぎる愛で返すのが道理でしょ?

チョコレートが食べたい
BL
常日頃から愛が重すぎる同居人兼恋人の深見千歳。そんな彼を普段は鬱陶しいと感じている主人公綾瀬叶の創作BLです。 初投稿でどきどきなのですが、良ければ楽しんでくださると嬉しいです。反響次第ですが、作者の好きを詰め込んだキャラクターなのでシリーズものにするか検討します。出来れば深見視点も出してみたいです。 ※pixivの方が先行投稿です

嘘つき純愛アルファはヤンデレ敵アルファが好き過ぎる

カギカッコ「」
BL
さらっと思い付いた短編です。タイトル通り。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。