34 / 36
番外編
白井 真『奏多よりも最強な存在』
しおりを挟む「真くん。今から、両親に会いに行こう」
「……ん? 誰の?」
「僕の父さん、母さん」
「…………へぁっ!?」
頭の中に、『奏多は、人の子だったのか!?』といった、普通に聞いたなら酷いことが浮かぶ。
けど、奏多を知っている人なら頭を縦に振るはずだ。こんな人間離れした奏多が、人間として生まれていて、親しみを込めて『父さん、母さん』と言うなんて、と。
「もう、真くんの両親とおばあさんには挨拶したから、次は真くんの番」
「え? 挨拶なんて……いつした?」
奏多とこういった関係になったのは、両親は勿論のことだが……おばあちゃんが亡くなってからなのだ。
だから、訝しげに奏多を見てしまう。
「生前には、会ってないよ。お墓に、ね。次からは一緒に、顔見せに行こう」
「――……あっ! まさか……」
両親やおばあちゃんのお墓。とても綺麗にされていた。蒼井が墓石を掃除してくれていたのかと、勝手に思っていたが――。
「奏多、墓石……綺麗に掃除してくれていた?」
「当たり前でしょ。真くんを、この世に誕生させてくれた存在だよ? 大事にしないと」
感動や嬉しさというものが、ジィ~ンと胸に沁み渡る。
普段は自己中な奏多だけど。たまに、こういう人情に厚いことを、サラッとやってくれる。
だから、さっき『奏多は、人の子だったのか!?』と思っていたことを否定し。『奏多は、ちゃんと人の子だ』という考えに改めた。
♢◆♢
「あらあら~。こんな可愛らしい子が、奏多の相手なのねぇ~」
「ほんとうだなぁ、いい子そうじゃないか~」
「…………あ、えっと。白井 真です。よろしくお願いします」
「ふふふ、畏まらなくて、いいわよぉ~」
「ははは、そうだぞ~」
「父さん、母さん。今日、泊まるけど。いいよね?」
「いいわよぉ~」
「ゆっくりしていけ~」
ポカーンと、ふわふわ~とした奏多の両親を眺める。
(え、え? もっと、こう……。人間離れした、怖い感じのを想像してたから。頭が追いつかねぇ……)
確か……。奏多の女版な母親の方が、篠崎家の血筋らしいが(父親は入婿だという)。ふんわりふんわりしていて……すぐ誰かに騙されてしまいそうな人に見える。これで、よく今まで篠崎家でやっていけたなと、驚きしかない。
それに、男の俺が奏多の相手で全く気にしていないのも、重ねて驚いてしまった。
多分、奏多が事前に伝えていたのもあるだろうが……。それでも、奏多は一人っ子だと言っていたのだ。
親は、孫を見たいものだとよく聞くが。見たところ、一切気にしているようには感じない。
「今日は、お赤飯ねぇ」
「お祝いだから、鯛も用意しようか~」
「ほどほどにしてね。大量すぎても、食べきれないから」
「大丈夫よ~」
「明日、食べればいいからなぁ」
ふわふわ~と、簡単に騙されてしまいそうな奏多の両親と。飄々として読めない、奏多の雰囲気が混ざり合い。なんだか、摩訶不思議な光景に映る。だから、本当に親子なのか? と疑ってしまった。
いや、もしかしたら……。人から騙されそうな、両親のため。奏多は努力して、処世術を身につけたのかもしれない。
(そうやって、人の考えは読め、人からは読まれない性格になってしまったのか……?)
もう、奏多のことを『両親を守る、健気な子』のようにしか見えなくなった。
奏多を、熱い眼差しで見つめていると。奏多とパチリと目が合い、その目の中に欲が滲むのが確認出来た。
(ま、まさか……。いや、此処は奏多の実家だ。流石に、自分の両親がいるひとつ屋根の下で、そんな暴挙を働かないだろ。うん、絶対そうだ)
♢◆♢
「か、奏多っ! 此処では、やめ……っ、ふぅんっ! ぁあ……!」
「なに言ってるの? 真くんが、僕を誘ったんだよ? 頬を赤らめ潤んだ目で、僕をずっと誘ってたんだから」
後ろの蕾に指をさしこまれたが、滑りが良くなかったのか。奏多はそこに顔を寄せ、ペチャペチャペチャと舌で舐めてくる。
「あぁっ、そんなとこ、舐めないで……!」
奏多を退かすため、髪の毛を掴もうと手を乗せたが。猫の毛のように柔らかく、サラサラとしていて、ずっと触れていたくなるくらいの触り心地だ。
以前、この髪を強く引っ張ってしまったことがあったが。今は、引っ張ることで、もし痛ませてしまったら嫌だと思い。力を込められずに、撫でるような形となってしまった。
そうしているうちに。奏多は、唾液を後ろの蕾に垂らし。指を激しく出し入れし始めた。
「……っ! 家に! 俺たちの家に、帰ってから……奏多といっぱいするから……! 今は、駄目だって! 奏多の両親が来たら、どうすんだよ……っ!」
脚を大きく広げられ。ひくつく穴に、奏多の硬いモノの先端が、ぬぷぷ……と入り込む。
「大丈夫。僕の両親だって、そこまで馬鹿じゃ――」
「なんか、喧嘩してる~? 駄目だよ仲良くしな……――ああ、仲良くしてたんだねぇ。良かった、良かった~」
「あらあら、若いっていいわねぇ~。元気で~。ふふふ」
そして、奏多の父親と母親は「頑張ってね~」と言って、手を振り。何事もなかったように、すぐに去って行った。
「……奏多。ほら、来たじゃん」
「はぁ……。うん、止めよう。萎えちゃったし」
奏多は、ゲンナリとしたように頭を抱えている。
(奏多に、こんなダメージを与えるなんて……。ある意味、奏多の両親が一番最強なのかもしれないな)
――奏多の両親が、満面な笑みで出してくれたご馳走は、大量なおせち料理のようなものだった。
47
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。


ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です

重すぎる愛には重すぎる愛で返すのが道理でしょ?
チョコレートが食べたい
BL
常日頃から愛が重すぎる同居人兼恋人の深見千歳。そんな彼を普段は鬱陶しいと感じている主人公綾瀬叶の創作BLです。
初投稿でどきどきなのですが、良ければ楽しんでくださると嬉しいです。反響次第ですが、作者の好きを詰め込んだキャラクターなのでシリーズものにするか検討します。出来れば深見視点も出してみたいです。
※pixivの方が先行投稿です

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる