可哀想な君に

未知 道

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白井 真 11

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「はっ、はぁ……はぁ……」

(なに、これ……頭ボーとする)

 いつも、篠崎にされる時も、何がなんだか分からないけど……。これは、快楽を与えるためだけにされた行為だからか、篠崎が言うように『ただ気持ち良くなるだけ』だった。

「――っ、ん"ん"……」

 近くで、こもるような声が聞こえ。ハッとして強く抱えていたものを離す。

(お、俺……篠崎の頭、抱えてた……? ほ、本当に、最悪だ)

 まるで、その行為を喜び、迎えているみたいだと。自分の行動に、ショックを受ける。

「はぁ~、苦しかった。でも、真くんが良かったみたいで、嬉しいな」

 篠崎は嬉しそうな顔で、ペロリと濡れた自身の唇を舐めている。

(あ、あれ? まさか……)

「お前……飲んだ?」
「え? 当たり前でしょ?」
「はっ、はぁ? 馬鹿かっ! 吐き出せ! 腹を壊したらどうすんだ!?」
「なに言ってるの? 真くんのを吐き出すなんて、勿体ない。それに、さっき食べたケーキより美味しいもので、お腹壊すわけないよ」

 ご馳走さまというように、ニコニコと笑ってお腹をさすっている篠崎を、信じられない思いで呆然と見る。

(……こいつ、やっぱり頭おかしいだろ)

「お前、止めろよ。こういうの……これをやる意味あるか?」
「いつも、真くんのにいっぱい僕のを飲ませてるでしょ?」

 俺の下腹部をクッと押され、息が詰まる。

「これは、真くんが一生懸命に飲んでくれてるご褒美。飛びそうになるくらい、気持ち良かったでしょ?」

 カッと、頭の中を怒りが占め。篠崎の手を、おもいっきり払い除ける。

「……ふ、ざっけんな! んなの、いらね……――ひっ!?」

 びちゃびちゃと、生暖かい液体をお腹にかけられる。下を見ると、白いドロリとした液体がお腹に大量に付き、タラタラと脚の方にまで垂れてきた。考えなくても分かる、これは精液だ。

「は? お、おいっ! なに勝手に興奮してんだよ!? マジ、ふざけんな!」
「あ~あ、真くんの中に出したかったのに……ムカつくこと言うから出ちゃったじゃん」

 ガッカリしたような顔を浮かべるおかしな奴を、キッと睨み付ける。

「じゃあ、もう――」

『終わり』と言う前に、乱暴にベッドへと押し倒されてしまう。え? と驚いている間に。篠崎が出した精を、後ろの蕾にぐちゅぐちゅと押し込まれた。

「まぁ、すぐに入れられるようになったから……いいか」
「あっ、……ぅう、止め……くっ、んん!」

 篠崎の精によって、濡れてどろどろな蕾に――ズプププと侵入してくる硬く大きなモノ。

(この、絶倫ヤロウが……!)

 さっき欲を出したばかりである篠崎のモノが、もうカチカチに硬い。しかも、こいつのは長さまで、無駄に長く。それが、お腹の奥にまで侵入してきて……最初はいつも苦しいのだ。

 ――コツンと奥にまで当たり。俺の貧相なお腹に、鍛え上げられた腹筋がぐぐっと隙間なく押し付けられた。

 大きなモノに内蔵を押し広げられ。苦しくて、ハクハクと息を吸う。

「真くんの中、本当に好き……」
「はぁ、はっ……! い、いから……。早く、終わらせろよ!」

 苦しみに喘ぐ俺の口を、ふっと笑みを浮かべた篠崎の口で塞がれ、激しく揺さぶられる。
 濡れた音と乾いた音が混ざり合い、バチュバチュバチュといった、あまり綺麗とは言えない音が鼓膜を震わせる。

 唾液を啜られ、流し込まれ、ぐちゃぐちゃとかき混ぜられて。与えられる苦しさを、少しでも軽減しようと、重ねられた篠崎の唇の隙間から必死に息を吸い込む。

 腰の動きが早められた時に、俺の口からチュプリと舌が出ていき――。

「中に出すから、ちゃんと飲んでね……?」

 篠崎が、熱を孕んだ目で俺を見た。

「はぁ、はぁ……! 勝手に、出せば、いいだろ……。嫌だって、いっても……俺の言葉、聞かねぇくせに……」

 篠崎は「そうだね」なんて言って、ニコニコと笑い。俺の頭が揺れるくらいの激しさで、腰を叩きつけてくる。

(自分の思い通りの返答じゃないからって、キレんなよ。ガキか……)

 けど、ガクガクと頭を揺らされているせいで、気分悪くなってきた。

 少しでもその揺れを緩和しようと、ぐっと篠崎の身体に抱き付く。

「し、篠崎……。早く、早く中に、出して……!」
「……ッ、真くん……!」

 グチュンと突き上げられ。お腹の奥に、びゅくびゅくと跳ねるようにして注がれる熱。

「ふぁ、あああっ!!」

 あえて俺の気持ちいいところに当てているのか、そこの場所に熱が当たっている。
 視界がチカチカと点滅し、ぶわりと快楽の波に襲われた。


「もぅ、真くん可愛すぎ」

 気付いたら、篠崎にすりすりと頬ずりされていた。

「んん……。篠崎、寝ちゃダメ? 眠くて……」
「え~、早くない? もっと、イチャイチャしようよ」

(イチャイチャ? そう思ってんの、お前だけだよ……)

 けど、そんなことをストレートに言ったなら。酷い目に合うのは、今までの経験上からしても確実。
 だから、言いたい言葉を飲み込み、我慢する。

「じゃあ、ゆっくりするから」

 パチュン、パチュン……と、もどかしいくらいにゆっくり、腰を打ち付けられる。

「……はっ、ぅんん……っ!」

 いつもの激しさはなく、壊れ物を扱うように優しく身体を揺らされる。

「ふふっ、ゆっくりだと……真くんの可愛い顔がよく見える」

 篠崎に、じっと見つめられる――まるで『愛してる』と言っているような目で、ずっと。

 だから、気になった。本当に、俺をそう思っているのか……と。

「し、篠崎……。俺のこと、愛してる?」

 篠崎は、一瞬、驚いたように目を見開き。そして、ふわりと笑った。

「愛してるよ。前にも言ったでしょ? 真くんのこと、すごくすごく愛してる。真くんしか、いらない」

 言ったことに対し、誓うような……ただ触れるだけの口付けをされる。

「じゃ、じゃあ! もし、『全てを捨てて、俺と一緒に来て』って言ったら……そうしてくれる?」

 篠崎は、ピタリと動きを止めて――「そうするよ」とハッキリと言い、笑みを深めた。

「い、命も……? 命も、捨てられる?」

 そう言ってしまってから、ヒヤリとした。

(俺、バカか。させられもしないこと、言う必要ねぇのに……)

 そんなこと、させられない。それ以前に、何よりも大事な己の命を、『捨てろ』と言われて捨てる奴がいるわけない。
 小南にあんなお願いされたのが、変に頭にへばりついていて。つい、口から出てしまった。

「うん、捨てられるよ」
「……え?」

 何を言われたのか、分からず。ポカンと篠崎を凝視してしまう。

「真くんが『死んで』というなら、死んであげる」
「は、はぁっ? な、なに? なんでだよ?」

 頭が混乱し、ぐちゃぐちゃになる。
 あり得ないものに遭遇すると、思考回路に混乱を来すのは本当だったらしい。

「――でも、一緒に……真くんも連れて行くから」

 そう言って真顔になった篠崎は、俺の頬をスルリと撫でた。

「例え、僕が死んで、身体が無くなっていても……。絶対に、一緒に連れて行く。僕のいない世界で、幸せになんかさせない」
「…………の、呪い殺すつもりか?」

 篠崎は、再びニコリと笑い。「そうだよ」と至極当たり前のように頷いた。

「こ、怖いよ、お前……」
「なら、真くんは僕より早く死んでね。そうしたら、直ぐに追いかけるから」
「え、自ら死ぬってこと?」
「うん」
「…………(唖然)」

 もう駄目だと。篠崎の胸中は、やっぱり理解出来ないと。考えを放棄する。

「分かった、とりあえず……。続きするなら、してくれ」
「ん~? あれ、真くん……僕の答えを聞いた後に、何かを言いたかったんじゃなかったの?」
「無い、無い。聞いてみたかっただけ」

(本当、怖い奴。なんで、そんなに色々と鋭いんだよ。深刻な話を、こんな風に繋がっている状態で言えねぇって……)

 言い詰められるかと、恐々としていたが。篠崎は「そっか」と軽い感じに言って、グッ、グッ、と腰の動きを再開した。

「ふっ、はぁ……あっ、……」
「真くん、好き、好き。愛してるよ……」

 今まで、行為中に。篠崎から、こんなに真っ直ぐな言葉で『好き』や『愛してる』と言われたことはなかった。
 多分、以前そう篠崎が言った時。俺が激怒したからかもしれない。
 俺が、今回。怒ることがなかったから、大丈夫だと思ったのか。何度も、熱心に伝えられる。

(趣味悪い奴……。俺なんか、好きになるなんてさ――)

 もう流石に、篠崎の気持ちを疑うことは出来ない。
 どう見たって、篠崎は俺を愛している。それも、“狂気の孕んだ愛”だ。

 以前は、こんな一方的な愛なんて、理解出来なかった。けど、篠崎の生まれを考えると。性格がこうなってしまうのは、必然なのだろう。篠崎にとっては、これが当たり前なんだ。だって、周りの人間が全員、おかしいから……真っ当に成長が出来なかったはずだ。

 小南は、篠崎がキチガイで、情も何もないといったように話していたけど……。本当に情がないなら、怒ったり喜んだりなんかしない。
 俺が見る限り、最初は分からなかったけど。篠崎には、ちゃんと感情がある。
 なら……話せば、きっと分かってくれる。


 あまりに緩やかな動きをされるからか、意識がゆっくりと落ちていく。

 意識が落ちる間際――「俺と、一緒に来て……」と言ってしまったような気がする。
 でも、篠崎はいつも通りな笑みを浮かべていたから……だだの気のせいかもしれない。


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