恐愛ナマコにストーカーされて、常識はずれな星に落とされました

未知 道

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16.カラフルさんの持つ能力

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 ※蔑み、侮蔑されるような表現があります。ご注意下さい。


 ----------------


 ――おじさんに、お礼と別れを言い。
 俺とカラフルさんは、骨壺を持って。一旦、小さい家に戻った。


「この遺骨を媒介に――貴方の記憶を引っ張り出しましょう」
「え、なに……それ?」
「わたくしは、その個人と深い関わりの深い、物質を媒介にし。記憶を呼び覚ますことの出来る、能力持ちなんですの」
「は……? ぇえ? 怪力と、しぶとい生命力が……カラフルさんの能力じゃないの?」
「それは、わたくしの家系に伝わる体質ですわよ!」

(あれが、体質? ヤバすぎない? もう、あんなのチートだよ。失礼だけど、記憶を呼び覚ますのが、ショボく感じるんだけど……)

「取り敢えず、さっさとやりますわ!」

 俺の頭に触れようとするカラフルさんの手を、パッと避ける。

「ちょっ、ちょっと、待って! それが、本当に俺と関わりがあるなんて、限らないじゃんか!」

 よく分からない事をされるのに、恐怖を感じる。脳みそ弄くられて、頭おかしくなったりしそうで怖い。

(それに、おじさんの言う……。マリアって名前の人、マジで知らないし)

「いいえ、絶対にありますわ」
「なんで? 意味、分かんないんだけど……」
「共鳴していますもの。『貴方を待っていた』というように」
「え……? 待って、いた?」

 ――カラフルさんが、能力を使用する時。個人と関わりのない物質は、まったく共鳴を起こさないという。

 この遺骨は、俺に向けて大きく共鳴しているらしいのだ。


「で、でも~……。俺、怖い……」

 カラフルさんの言うことが、嘘だとは思わないけど。怖いものは、怖い。

「もうっ! ウジウジして! 鬱陶しいですわねっ!!」
「ぎゃっ!!」
「【リミッター解放・繋ぎ糸】」

 カラフルさんに、頭をガシリと掴まれて。そこから、何かがじんわりと入ってくる――――。



 ********


「うぇ、汚ねぇ~……。うわ! 俺、見られた!! 呪われちゃう! 醜くなる呪いにかけられちゃうぞ!」

 ぎゃはははといった蔑むような笑い声。いつものことだ。

「なんで、マリアさんはそんなに……。いつも、汚くて臭いの?」

 教師たちに、言われ続けた言葉。

「うっ、うわぁああ~~ん!! 怖いよ~!」

 幼い子供に、私の顔を見られ。泣かれたことは、一度や二度ではない。


 ――私は、醜い。顔が、グチュグチュとした膿んだような肌をしていて、悪臭もする。

 これは、私の血筋によるせいだった。

 先祖代々、強い能力持ちであり。その強さは……普通は勝手に弾かれるため、攻撃を与えることの不可能な――この世界を統べる【ナマコ神の化身】や【愛し人】という尊き存在にすら。この血筋からの力であれば、通用させることが出来る程、強力なものだ。

 しかし、その強さを持つ弊害なのか……。この血筋である人間は、身体に何かしらの異常を抱えて生まれてくる。
 私の父は、右脚が動かなかった。祖母は、声を出せなかった。曾祖父は、右目が見えなかった。

 私は、顔の皮膚機能が正常ではなかった。

 何故? せめて、隠せる場所であれば良かった。せめて、男であれば良かった。せめて、有効に使うことの出来る能力を持っていれば良かったのに……――。


「愛し人を、他の星へと転移させ。そこで、確実に殺せ……良いな?」
「はい……」

 私から距離を取り、顔を嫌悪に歪める男を見て。私は、下を向く。

 仮面で顔を隠してはいるが、その悪臭までは抑えられない。だから、当然の反応だろう。

「もう、良いから……下がれ」
「……はい」

(ああ、痒い……)

 皮膚に炎症があるのに、仮面で密封しているせいで。余計、痛くて痒くて堪らない。


「――……あんなのでなければ、次世代を残せただろうに……勿体ない」


 ――ボソリと呟かれた言葉に、肯定は出来ない。

 この血筋は、もう私しかいない。
 それは、強すぎる力を持つからかもしれないが……。先祖の歴史を辿ってみても、皆、子供は一人しか生まれなかったからだ。

 だから、私が血を繋がなければ、この奇異な能力を繋ぐことは出来ないだろう。

 でも、それで良い。もしかしたら、私のような子が。何世代後に、生まれてしまう可能性だってある。そんなの、可哀想だ。
 能力を、先祖が繋いだ行為自体。私には、呪いを繋いでいったようにしか感じなかった。勿体ないなんて……思えるわけがない。


 自宅に戻り、仮面を取る。
 そして、すぐに顔を洗い。気休めにしかならない薬を塗る。

 有名だと言われている、全国全ての皮膚科に診てもらっても。これを治すことは、不可能だと言われた。
 だから、やはり……。これは、呪いにしか思えない――。

「……ふっ、馬鹿ね。愛し人の代わり――傀儡となるものを、神の化身に充てがおうなんて。今に、天罰が下るわよ」

 勿論、それを手助けする私にも、酷い天罰が下るだろう。

 だが、もういい。私に、こんな辛い事ばかりを与える世界なんて、早く消えてしまえ。


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