16 / 32
16.カラフルさんの持つ能力
しおりを挟む※蔑み、侮蔑されるような表現があります。ご注意下さい。
----------------
――おじさんに、お礼と別れを言い。
俺とカラフルさんは、骨壺を持って。一旦、小さい家に戻った。
「この遺骨を媒介に――貴方の記憶を引っ張り出しましょう」
「え、なに……それ?」
「わたくしは、その個人と深い関わりの深い、物質を媒介にし。記憶を呼び覚ますことの出来る、能力持ちなんですの」
「は……? ぇえ? 怪力と、しぶとい生命力が……カラフルさんの能力じゃないの?」
「それは、わたくしの家系に伝わる体質ですわよ!」
(あれが、体質? ヤバすぎない? もう、あんなのチートだよ。失礼だけど、記憶を呼び覚ますのが、ショボく感じるんだけど……)
「取り敢えず、さっさとやりますわ!」
俺の頭に触れようとするカラフルさんの手を、パッと避ける。
「ちょっ、ちょっと、待って! それが、本当に俺と関わりがあるなんて、限らないじゃんか!」
よく分からない事をされるのに、恐怖を感じる。脳みそ弄くられて、頭おかしくなったりしそうで怖い。
(それに、おじさんの言う……。マリアって名前の人、マジで知らないし)
「いいえ、絶対にありますわ」
「なんで? 意味、分かんないんだけど……」
「共鳴していますもの。『貴方を待っていた』というように」
「え……? 待って、いた?」
――カラフルさんが、能力を使用する時。個人と関わりのない物質は、まったく共鳴を起こさないという。
この遺骨は、俺に向けて大きく共鳴しているらしいのだ。
「で、でも~……。俺、怖い……」
カラフルさんの言うことが、嘘だとは思わないけど。怖いものは、怖い。
「もうっ! ウジウジして! 鬱陶しいですわねっ!!」
「ぎゃっ!!」
「【リミッター解放・繋ぎ糸】」
カラフルさんに、頭をガシリと掴まれて。そこから、何かがじんわりと入ってくる――――。
********
「うぇ、汚ねぇ~……。うわ! 俺、見られた!! 呪われちゃう! 醜くなる呪いにかけられちゃうぞ!」
ぎゃはははといった蔑むような笑い声。いつものことだ。
「なんで、マリアさんはそんなに……。いつも、汚くて臭いの?」
教師たちに、言われ続けた言葉。
「うっ、うわぁああ~~ん!! 怖いよ~!」
幼い子供に、私の顔を見られ。泣かれたことは、一度や二度ではない。
――私は、醜い。顔が、グチュグチュとした膿んだような肌をしていて、悪臭もする。
これは、私の血筋によるせいだった。
先祖代々、強い能力持ちであり。その強さは……普通は勝手に弾かれるため、攻撃を与えることの不可能な――この世界を統べる【ナマコ神の化身】や【愛し人】という尊き存在にすら。この血筋からの力であれば、通用させることが出来る程、強力なものだ。
しかし、その強さを持つ弊害なのか……。この血筋である人間は、身体に何かしらの異常を抱えて生まれてくる。
私の父は、右脚が動かなかった。祖母は、声を出せなかった。曾祖父は、右目が見えなかった。
私は、顔の皮膚機能が正常ではなかった。
何故? せめて、隠せる場所であれば良かった。せめて、男であれば良かった。せめて、有効に使うことの出来る能力を持っていれば良かったのに……――。
「愛し人を、他の星へと転移させ。そこで、確実に殺せ……良いな?」
「はい……」
私から距離を取り、顔を嫌悪に歪める男を見て。私は、下を向く。
仮面で顔を隠してはいるが、その悪臭までは抑えられない。だから、当然の反応だろう。
「もう、良いから……下がれ」
「……はい」
(ああ、痒い……)
皮膚に炎症があるのに、仮面で密封しているせいで。余計、痛くて痒くて堪らない。
「――……あんなのでなければ、次世代を残せただろうに……勿体ない」
――ボソリと呟かれた言葉に、肯定は出来ない。
この血筋は、もう私しかいない。
それは、強すぎる力を持つからかもしれないが……。先祖の歴史を辿ってみても、皆、子供は一人しか生まれなかったからだ。
だから、私が血を繋がなければ、この奇異な能力を繋ぐことは出来ないだろう。
でも、それで良い。もしかしたら、私のような子が。何世代後に、生まれてしまう可能性だってある。そんなの、可哀想だ。
能力を、先祖が繋いだ行為自体。私には、呪いを繋いでいったようにしか感じなかった。勿体ないなんて……思えるわけがない。
自宅に戻り、仮面を取る。
そして、すぐに顔を洗い。気休めにしかならない薬を塗る。
有名だと言われている、全国全ての皮膚科に診てもらっても。これを治すことは、不可能だと言われた。
だから、やはり……。これは、呪いにしか思えない――。
「……ふっ、馬鹿ね。愛し人の代わり――傀儡となるものを、神の化身に充てがおうなんて。今に、天罰が下るわよ」
勿論、それを手助けする私にも、酷い天罰が下るだろう。
だが、もういい。私に、こんな辛い事ばかりを与える世界なんて、早く消えてしまえ。
1
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)


【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい
市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。
魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。
そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。
不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。
旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。
第3話から急展開していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる