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11.めっちゃイイ子のカラフルさん
しおりを挟む「ちょっと!! 貴方、いい加減にしてくれません!? 言葉巧みに、わたくしを撒いていますわねっ!?」
バァ~~ンと扉が開き、カラフルさんが入室してきた。けど、俺は今……それどころじゃない。
シコ様が、やっと俺に興味をなくしてくれたと思ったのに……と、ショックを受けているのだ。
(なんでだよぉ。くそっ! ヤルデ~チャウ、もっと頑張ってくれよっ!!)
「……なに、なさってますの? 変顔?」
オーマイガと、両頬を挟んで口を開けていたら。カラフルさんに、めっちゃ引いた顔をされた。
「もう、俺ムリ~! カラフルさん、俺、家に帰りたいぃ~!!」
「……? 貴方が、シコシコ~ル様に付きまとっているのではなくて? そう、聞いていたのだけれど……」
「へぁっ!? お、お、俺が? カラフルさん! そんなわけないよおっ!? んなこと、誰が言ってんのさ!?」
カラフルさんに、キョトンとした顔を向けられ。余計に、意味分からない。
(なんで、そんなデマを、信じたの~? 俺、泣くよ?)
「え? ヤルデ~チャウ様が……」
(ヤルデ~チャウのくそ野郎!! シコ様の愛も得られず、虚言癖があるなんて救いようがねぇな!)
「ない、ない、ないから!! 見てよ! シコ様に、こんなんされたから、嫌でも出れないんだよっ!」
バッと布団をよけて、カラフルさんに足首を見せた。
ほらほら、見てよ~! なんて思ってたけど、俺はふと我に返る。
これを見せても。シコ様ラブな、この星の人間が信じてくれるとは思えない。だから、無理だよな~と、肩を落とし俯く。
「貴方!? この傷……っ! 今、医者を呼びますわ! お待ちになっていて……!」
「え……?」
悲鳴のような声が聞こえ、驚いてカラフルさんに向き直ると。顔を歪め、泣きそうなカラフルさんが視界に入る。
(え、カ、カラフルさん……。俺の為に、悲しんでくれてんの? す、すごい、イイ子!!)
今までの人生の中で、俺をここまで心配してくれた人。カラフルさんが初めてで、もう、めちゃくちゃじ~んとする。
でも、バタバタと部屋を出て行こうとした、カラフルさんのいつも通りにギラギラした後ろ姿を見て。何だか、嫌な予感がした。
よく分からないけど、このまま医者を呼び。おおごとにしたら駄目なような、そんな確証もないモヤモヤとした感覚――。
「まっ、待って!! カラフルさん、もういいから! 多分、歩けないのは確定だし。一応、シコ様に処置はしてもらったからさ……」
「で、でも……」
「本当、大丈夫だから! カラフルさんが心配してくれただけで嬉しいよ。ありがとう」
カラフルさんは、少し扉の前で佇んだ後。また俺の近くに戻って来て、何か思い悩んだ顔をしている。
(いや、マジで。カラフルさんが愛し人になった方が良いよな? ここまで、ほぼ見ず知らずの人間の為に、行動してくれるんだよ? 絶対に、国が発展すると思う)
「ねぇ、カラフルさんって。名前なんていうの?」
「は!? 今さらですのっ!?」
カラフルさんが沈んだ顔をして、ぼぅとしていたから。違った話題を振ると、グワッと食いついてきた。
(よしよし、カラフルさんって単純だよな~。ははは!)
「まぁ、いいですわ。よく、耳をかっぽじってお聞きなさい。わたくしは――シオフキ~ノ・マンマンですわっ!!」
「…………で、カラフルさんって、好きな食べ物はなに?」
「え!? 名前のくだりは、なんだったんですのっ!? はぁ、食べ物は……貝柱が好きですわね」
カラフルさん、面白い。コロコロ変わる表情が見ていて飽きない。
容姿は、どちらかというと。綺麗とか可愛いよりも、クールで格好いい感じなのに、その表情で可愛らしく感じる。
(俺。もし、彼女にするなら……こんな子が――)
「――ちょっと、聞いてますの?」
「……っ、え? うん、貝柱が好きなんだよね?」
「ああっ! やっぱり、聞いてませんでしたね。ちゃんと、お聞きになって! ――今から、3日後の新月に。シコシコ~ル様の休眠が一週間ほど入ります。その日、わたくしが貴方を元の場所に帰しますから……。それまで耐えて、と言ったんですわ」
「え、休眠? 帰す? どういうこと……? カラフルさん、俺の帰る場所とか……知らないよね?」
「シコシコ~ル様は、力を使う代償を少しでも緩和するため。一番、力を安定させることの出来る新月に休息を取るんですの。貴方の帰る場所は勿論、知らないですわ。けど、思い浮かべた場所に、帰ることが出来る泉がありますの。だから、帰りたいのなら……その日が一番良いと考え――……ああっ! わたくし、これからご婦人に料理を教えなければなりませんの! では、3日後に迎えに行きますわね! ごきげんよ~う!!」
「あ、カラフルさん……!」
ピュンッと風のように去っていく、カラフルさん。
(そんな高いヒールでよくコケないな。バランス力、すごい……)
目に悪いギラギラした後ろ姿に、尊敬の眼差しを送る。
「ふぅ……――ッ! な、なんだ。気のせいか……?」
カラフルさんが部屋から出て行き、扉から目を離した時。テーブルの脚に、ナマコが生えている気がした。
けど、しっかり見たら。そんなものは無い。
だから、ただの気のせいだと思うことにしたが……。全身が総毛立ち、ゾクゾクとした寒気が、なかなか収まらなかった。
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