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126.〖炎竜〗現在

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 △▼△▼△▼△▼


「――ゅうっ! 炎竜っ! 聞いてるか~? お~い?」

 ふと、気がつくと――ワシの目の前で、主がその手をヒラヒラと振っていた。

『ん……? ああ、すまんのぅ……。少し、ぼぅっとしておったわ』
「へぇ~? 炎竜も、考え事とかすんだな~! いつも、飄々としてるから分からないけど……。悩みがあるなら、いつでも聞くぞ? ――あっ! もしかして……。炎竜さ、俺とレイドの子供達が産まれた当初から。張り付くように、毎日、毎日、面倒見てたからスゲー疲れてるとか? 無理して来なくても良いんだぞ……?」

 主が心配そうに、ワシの顔を覗き込んでくる。

『ワシが好きで来ておるのじゃから、その楽しみを奪わないで欲しいの~!』
「もう、充分に楽しんだろう?」

 主を自分の方に引き寄せたレイドが、眉をひそめてワシを見遣った。

『ホッホッホッ!! 相変わらず、気の短い男じゃな~! 短期は損気じゃよ~?』
「………は?」
「ちょっ、ちょっと! レイドっ!! そんなに魔法を展開すんなよ~! 危ないだろ!?」

 レイドは、極級魔法を大量に発生させ。それらを全て、ワシへと向けた。主が、それを慌てて止めている。


「わぁ~! すごい!! お父さんと炎竜で、魔法の勉強してるの?」

 近くにいた輝緑がこちらに走り寄って来て、キラキラとした目を向けてきた。
 それでワシはすかさず、悲しい! という風に顔を押さえる。

『違うんじゃ~! 一方的に、勉強させられそうなんじゃよ~~!! シクシクシク……』

 ワシが泣き真似をしたら、輝緑は「人の嫌がることは、しちゃいけないんだよ?」と、レイドに一生懸命に説明している。

 レイドは、苦虫を噛み潰したような顔をし。出していた魔法を瞬時に消した。

 その後、直ぐ。輝白が来て「輝緑に用があるんだ」と言い。嫌がる輝緑を、ズルズルと引きずるように連れて行った――。


「はははっ! 輝緑にそう言われたら、何も出来なくなっちゃうよな~?」
「チッ!」

 主が爆笑し。レイドはワシを睨み付け、舌打ちをしている。

 ふむ……。レイドは、ワシを恋敵だと思っておるようじゃな? 前に、レイドの反応が面白くて、挑発したことが何度かあるからの~。そうだと、勘違いさせてしまったみたいじゃ……。

『今、ハッキリしておくがの~……。ワシは、主をそういう目では見ておらんよ? というより、ワシにとって2人共に大事な……――』

 ――友のように思っておる。

 自然と、そう口に出そうとしていた自分に対し。目を見開き、驚く。

 そして、主とレイドをじっと見つめた――。

「炎竜?」
「どうした……?」
『……。2人共に、大事な同士だと……思っておる』

 ――少し、声が震えてしまった。

 ワシは、ずっと――魂についての解釈が、間違っていたのかもしれない。

 何故、今まで気がつかなかったのだろうか……?

 主と、レイドは……。今は亡き、2人の友にあまりにもそっくりだった――魂の“中心部以外”は。

 主は、中心部と外側の色が、二つともに真っ黒な魂。

 レイドは、中心部と外側の色が、二つともに真っ白な魂。

 外側の色は、セルディアとレイナの色にそっくりであり……。魂の輝きや、容姿や性格までも似通っている。

 もし……。魂を判断する、基柱だと思っていた中心部が。外側の色を定着させる、接着面のような役割を担っているだけのものならば――。

 ワシは再び、大事な2人の友に出会えた……ということになる。

 ただ、正直。これに関しても、自己判断での解釈であるから……正解かは分からない。
 それこそ【世界の意思】というものに、問い質さないからには――。


『さて、ワシはそろそろ。火山に帰るとするかの~』
「炎竜、本当にさ……。なんか悩み事とかあったら、いつでも聞くぞ……? いや、今でもさ……」

 主は、ワシを引き留めようとしている様子だ。

『ホッホッホッ!! 主、そんなこと言ったら。また、ワシがレイドに睨まれてしまうじゃろ~? 大丈夫じゃから、ワシは――』
「炎竜、何を悩んでいる? そんならしくない顔をして……。俺には話せない、というならば……席を外そう。それで、怒ることはしない」

 レイドは、真っ直ぐにワシを見ていた。

 そこまで2人が気に掛けてくれるとは思わなかったから、少し戸惑う。

『いや、席を外す必要はないからの。……そうじゃな。悩み、という訳ではないが……――ただ、過去の記憶に……浸っていただけなんじゃ』

 主も、レイドも……。ワシの話を、じっと聞く姿勢であった。

 そうか……。これは、ずっと一人で抱えていたものを聞いてもらえる、良い機会かもしれぬな……。

 この2人とは、大きな隕石でも落ち、この星が一瞬のうちに消えぬ限り――、永遠なる時を共にすることになる。
 ならば、今もワシの胸を突き刺す、過去の記憶からくる痛みを2人には知って欲しいと……そう思った。


 ワシは、2人に己の暗い過去を話すため。口を開いた――。


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