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122.〖炎竜〗過去

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「でさ~! あいつら、俺が試して検証した手柄を自分達のもんにしやがって!! 終いには『狂人が、自分の脳に何かがあると切り開いていて。私達がそれの存在に気が付き、確たるものとしました』って、言ってやがってさ! 俺、狂人扱いだぞっ!?」

 セルディアが頬を膨らませ、怒り心頭に叫んでいる。

『ホッホッホッホッ!! それは、ドンマイとしか言えぬな~!』

 セルディアは、ワシの血を与えてから直ぐ、体調がみるみる良くなり――あれから、10年が経過していた。


 それで今、セルディアが憤慨していることとは……『魂の器というものの存在を知ってから。それの耐久性を確かめようと、一緒に奮闘していた研究所に裏切られ、手柄を横取りされた』ということであった。

 それは、今から5年くらい前。セルディアが、たまたまレイナをじっと見ていた時、魂の存在を認識出来たようで。キラキラと目を輝かせながら、ワシにこれは何だと聞いてきた。だから、魂の存在を伝えたのだ。

 すると、それを確かめたいと言い。セルディアは、家を飛び出して行った。

 セルディアは、何かに夢中になると周りが見えなくなるようで……。それは、セルディアが幾度となく山に来ていた時から思ってはいた。

 それで、久しぶりに帰って来たと思ったら……。このように、愚痴を言っている。


「急に、『レイナ、大発見だ!! 俺は大物になって帰って来るから、それまで待っててくれっ!』って、私が止めるのも聞かず、勝手に出て行って……。そんな、危ないことをしていたの?」

 レイナは、能面のような表情を浮かべていて。非常に、怒っているようだ。

「い、いや~! だって、俺……。炎竜の能力を授けられても、強い魔法は全く引き継がれなかっただろ? 出来て、魂の存在が見れるようになったのと、寿命が伸びたっていう形だったからさ……。レイナを守れるもの、なにも持ってないじゃん? 何か、地位とか権力とかだけでも……得たかったんだよ」
「あ……。セ、セルディア……」

 怒っていたレイナの頬が、ボッ!! と赤らんで。怒りが収まり、恋する乙女の顔になっている。

『ヒュ~ヒュ~! 熱いのぉ~!! あ~あ~! ワシは、と~~っても邪魔者のようなのでな~! また頃合いを見て、顔を出すとしようかのぅ~。次に会う時には、2人のやや子をワシにも抱かせて欲しいものじゃな~!! ホッホッホッホッホッ!!』

 ワシは、2人が何やらピーピーと言っているのを知らんぷりし。空間魔法を使って、火山へと戻った。


『ふむぅ……。ワシの能力が一切引き継がれていないのは、やはりあのような魂をしているからかの……?』

 魂の存在を認識することと、寿命が伸びることは。ワシの血を授かれば、元からついてくるものであるから……能力でも何でもないのだ。

『ま、だとしても……。レイナとも、血の契約をすれば良いだけじゃから問題はないのぅ。セルディアは、レイナに守ってもらう方が似合いじゃしな~!』

 生まれた性別を間違えたのか? というくらいに。レイナは勇ましく、セルディアは可愛らしい。

 だからといって、セルディアをそういう目で見ている訳ではなく。どちらかというと、小動物を見るような気持ちだと例えるとしっくりくる。

『後、90年じゃな……。確か、レイナは28歳だと言っておったから。最級魔術師ならば、寿命まで全然間に合うの』

 ――ワシは、レイナにも血の契約を行うつもりだった。

 それは、3人で居る時間が、とても心地よく感じているからだ。

 ワシの血を与え。人間の寿命が、どの程度伸びるかは。それをしたのが、セルディアが初めてであるし……。そこまでの詳細は、ワシでも分からぬが。確実に、長い時を共にすることは出来る筈。

『ホッホッホッ!! その前に、2人の子が生まれそうじゃの~?』

 ワシは自然と、楽しげに声を上げて笑っていた。



 ********


 セルディアと、レイナとは――花見に行ったり、キャンプに行ったり、海に行ったり。ショッピング等というものに行って、2人がワシの服を選んで買ってくれたりと……人間の娯楽を教わった。
 何だか、自分は炎竜ではなく『ひとりの人間』になったような気にもなる。
 きっと、それは――2人が、そのようにワシに接しているからだと思うけれど……。

 ワシにとって、以前は瞬く間に過ぎていた日々が。濃く、愛おしくも感じてきたのだ。


 ――そして……。それから、80年が経過した。


 それまで、2人には子が出来ず。ワシは、純粋に不思議に思って聞いてみると――。
 セルディアは幼い頃、高熱を何日間も出した時があり。その後、病院に身体を診てもらうと……。熱による後遺症で、精子の数が極端に少なくなっていると診断されたようだ。

 セルディアは「体質が変わったから、大丈夫かと思ったんだけどな~」と苦笑いしていて。レイナは「別に、子供が絶対に欲しいって訳じゃないから」と涼しい顔をしていた。


 だが、それを話した一月後に――。
「赤ちゃんが出来たんだ!」と、レイナとセルディアが嬉しそうに笑って、ワシに報告してきたのだ。


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