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120.〖炎竜〗過去 ※微
しおりを挟む――過去。ワシには、人間の友が2人いた。
********
ワシがこの世に生を享けて、1億年程してから【人間】というものが生まれた。
なんだか、その人間達が煩わしくなったのもあり。ワシは、徐々に火山に籠るようになっていった。
そして、何時からか。人間が、この世を支配するようになって――三千年程の月日が経った。
『はぁ~……。また、居るのか……』
3年ほど前から。一人の人間が、ワシが居る火山へと辿り着こうとしているのか……。この付近を、うろうろと歩き回っている。
『ただの人の子が、ワシの幻影魔法を解術出来るわけがなかろうに……』
一生懸命、解術を試みているのか。その人間は、何かを唱えながら同じところを行ったり来たりしていた。
「はあ~!! もう、チクショ~~! これを絶対に解術してやるからな~~~!! 待ってろ! 火山っ!!」
勿論のこと、解術は出来ず。その人間は悔しそうな表情を浮かべて、地面をダンダンと強く踏みつけている。
『馬鹿な人間だの……。瞬く間に終わる生を、こんな意味もないことに費やすなど……』
それからも、その人間は諦めずに此処へと来て――。
更に、5年が過ぎた。
『まったく……。あやつは常に暇なのかの?』
また、あの人間がこの山に来たことに気が付き。意識をそこに向ける。
「ん~? これは、幻影を見せる魔法だということは分かるけど……。どんな原理なんだろ? そんな魔法、聞いたことないしな~……」
そりゃ、そうじゃ。ワシの力は、人間の魔力とは全く違うものじゃからな。その使える術も、違うのは当たり前じゃ。
『にしても……。随分と、変わった魂をしておるの』
その人間の魂は、中心部が白色で。それを、黒色がぐるりと囲んでいる。
昔、ワシがまだ人間に対しての興味があり、街で生活していた時。暫くしてから、人間には魂の色があることに気が付いた。
今まで見てきた、殆どの魂の色は。中心部の方が、濃い色であったのだ。
その中心部と、同じ色であればある程。健康な身体や、強い魔力を持ち、長寿であるようだった。
そして、中心部よりも、周りの色が濃い魂の持ち主は。身体や、魔力に異常があり――30年も生きられない程に、生が短い者であった。
だから、この者も。そう長く生きることが出来ないだろう……。
だが、少しだけ……この人間を気になってはいるのだ。それは、ここまでハッキリと両極端な色をした魂は、初めて見たからだ――。
********
『最近、あやつ……来ないの』
あの人間は、徐々に来る頻度が少なくなっていたが……。ここ一週間は、姿を一切見せなかった。
『死んだのじゃろうか……? まぁ、あのような魂では、長くは生きられぬから……』
何だか、胸の辺りがモヤモヤする……。
こんな気持ちなど。生まれてこの方、感じたことなどないから。ワシは、非常に戸惑っていた。
『……仕方あるまい、あやつの様子を見てくるか』
人の姿になり、ぐるぐると街中を歩き回り。己の優れた聴覚で、人間達の会話を聞いていると――あやつの話をしている者を見つけた。
「あんな死に損ないの、どこにレイナは惚れたんだろうな~? 話によると、例の火山にご執心らしいじゃん? キモいよな~!!」
「本当、本当~! むしろ、その山でさっさと死んどけって思うわ! しかも、今。レイナに看病されてるんだろ? マジで苛つくっ!」
やはり、魂の寿命に例外はないのじゃな。……さて、あやつらに聞き出すかの。
ワシは、2人の男達に近づき――。
「……ん? 何だ、あんた?」
「おい、なにじろじろ見てんだよ?」
『♢♢◆♢♢♢♢◆♢……』
自白魔法をかけた。
「「……ここから、28メートル先を左に曲がり、33メートル先を左に曲がった先に赤い屋根をした一軒家があります。そこに、『セルディア・カルダス』と『レイナ・ルーブル』が居る筈です」」
ふむ、ここから直ぐだったようじゃな。
ワシは、そやつらの自白魔法を解き。代わりに、『恐ろしい化け物に襲われる』という幻影魔法を直ぐにかけた。
「「ぎゃぁあああ~~~~~っ!!?」」
『ふん……。一週間程で術が解けるよう設定してやっただけ、ありがたく思うんじゃな』
********
あの男達が言った通り、進んでいくと。赤い屋根をした一軒家が、周りの家から離れるようにポツンと立っていた。
『ここじゃな……』
ワシは、家の外から耳を澄ます――。
「――……イナ。本当に、もう来なくて、良いから……。幼なじみ、だからってさ……そこまで、しなくて良いんだ。お前は、自分の好きなこと、して良いんだぞ……?」
「私、自分の好きなことしてる。なんで、そんな突き放すような事、言うの……? 私の気持ち、分かってるでしょ……っ?」
力なく、あの人間――セルディアが言った言葉に。レイナが、嗚咽を漏らしながら言葉を返していた。
「レイナ……。でも、俺……。もう、死ぬんだ。だから、俺じゃくて……――んぅっ!?」
それから、ワシの耳に――くちゅくちゅと濡れた音と、セルディアが何かを言おうとしているような、モゴモゴと籠った声が聞こえるだけになった。
……ワシ、ここで何しているんじゃろう?
人の情事に、聞き耳を立てているのが。なんだか、申し訳なくなってきた。
「……はぁっ、はぁっ……! ……っ、レ、レイナ!? な、何で……!?」
「私、セルディアとじゃなきゃ……絶対に嫌。セルディアが死んだら、生きていきたくない」
「そ、そんな、こと……! 言わないで、くれよ! 俺は、俺だって……。レイナと、一緒に生きていたい……。だから、あの火山にだって、ずっと行ってた。もし、辿り着けたら……願いが叶うって……。そんな、ただの迷信を、信じてさ……」
ほう、成る程の~。だから、あんなにも火山に辿り着こうと、必死じゃったのだな……?
――ワシは、その2人が居る窓際に回った。
2人は、一緒に生きたいとか、何とかを……グスグスと泣いて話している。
ふむ! では、ここはワシが一肌脱ぐかの~!!
『その願い、聞き入れようっ!!』
ワシは窓にへばりつきながら、そう言うと――2人は、化け物を見るような目をしてこちらを向き。そして直ぐに、つんざくような悲鳴を上げている。
なんじゃ……? まったく、失礼な奴等じゃの~?
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