ダンジョンの核に転生したんだけど、この世界の人間性ってどうなってんの?

未知 道

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117.大家族

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「こら~! 輝灰っ!! そこら中を走るなっ! ひとん家なんだからなっ!?」

 ――灰色の髪と目をした子供が、ちょこまかと走り回っている。

「うるせ~! バ~~カっ!! バ~~カっ!!」

 あっかんべーとして、またドタバタと走り回っていて――カッチーンときた。

「うおりゃ~~~!! はっはっはっ!! まだまだガキだな~!」

 俺は、走り回る輝灰を素早くキャッチし。腕の中に拘束する。

「離せ! 離せよーーーっ!! 今、走るの~! 走りたいの~~!! うわ~~~んっ!!!」

 自分の思い通りにならなかったからか、輝灰はぴえんぴえんと泣き出してしまった。

「まったく、元気なのは良いけど……――輝灰、流石に人様の家では迷惑だろ? 森に帰ったら、いくらでも走っていいからさ……。分かった?」

 輝灰をギュッ! と抱き締め、頭を優しく撫でた。

「……分かった」

 むぅ~! とした顔をしながらも、なんだか嬉しそうに頬が赤くなっている。


 う~ん! やっぱり、子供は可愛いな~!!


「輝灰だけずるいよっ! 僕も、僕も、抱っこっ!!」

 ――緑色の髪と目をした子供が、泣きそうな顔をし。

「じゃあ、わたしも……」

 ――赤色の髪と目をした子供が、静かにこちらに視線を向け。

「勿論、私も~!!」

 ――紫色の髪と目をした子供が、ピョンピョンと飛び跳ね。

「ふふっ! 僕も」

 ――白色の髪と金色の目をした子供が、柔らかく微笑み。

「輝白が行くなら、俺も……」

 ――黒色の髪と銀色の目をした子供が、白い髪の子供を見ながらそう言っている。


 ドドドドドーーーーーッッ!!! と残りの子供達、全員が――凄い勢いで走って来る。


「ちょっ、ちょっ! ちょっと、まっ……――みぎゃっ!!?」


 俺は、6人の子供達に押し潰された。


 それで、何故か……。「お母さんは僕のだから~!!」って輝緑が言ったのを皮切りに、「なんで……? わたしの、だよ?」「えぇ~! 私のでしょ?」「いやいや、俺のだからっ! 皆どけよ~!!」って、俺は綱引きのようにされている。


 お、親って、スゲー大変だよぉ……。


 そう、俺は――【輝灰キハイ】【輝緑キリョク】【輝赤キセキ】【輝紫キシキ】【輝白キハク】【輝黒キコク】という可愛い子供達を、7年前に生んだのだ。



 ********


 俺は、レイドとラブラブなセックス……と言って良いのか分からないが。取り敢えずは、気持ちを通じ合わせた後。魔術塔へ行った。

 そして……。俺達が離れていた時に、ジジィ共にごちゃごちゃにされた魔術塔内の、情報の修正や整理、だいぶ落ちてしまった評判を取り戻す為。新しく迎え入れた仲間達と、話し合いをしていたんだ。

 それで、その中の1人が話し合いで分からなかったことを聞きにきたんだけど……。俺は、その子に近付いて説明してて――ふと、気がついた。『あれ? 白のプレゼントって言われてた力が発動してない……?』……と。

 魔術塔にいる皆の等級は、全て頭の中に入ってる。

 その子は、中級魔術師だから。今までのことを考えると、それに反応してしまう筈なんだ。

 でも、一応は等級を聞いてみた。けど、やっぱり中級魔術師だった。

 だから、俺は握手を求めたんだ。

 戸惑いながらも、その子は握手をしてくれて……。それで、その力が発動していないことに俺は非常に驚き――めちゃくちゃ、ベタベタと触りまくった。

 それで、ついでに近くにいた子達も、触りに触りまくった。

 すると……――全員が、吹っ飛ばなかった。

 俺は、その力が無くなったことが嬉しくて「ひゃっほいっ!! やったぜっ! やったんだーーーっ!!」と叫んだ。

 確かに、その力に助けられた面もあったけど……。街の中に入って生活するには、人との距離感を気にしなくてはならなくて……それはとてつもなく大変だった。

 現に。罪もない人達を、何度か吹っ飛ばした経験があるのだ。

 だから、本当に嬉しくてバンザーイ!! バンザーイ!! って、していたら……。その手を、誰かに優しく握られた。

「んっ? 何だい? 今なら、なんでもしてあげるよ!」と言って、手を握る人へと笑顔を向けたら――キラキラと輝くような笑顔を浮かべている、レイドと目が合った。

 あっ! そうだ、レイドにも伝えておこう!! と思って。俺は凄く高揚したまま、レイドにそのことを言ったんだ。

 すると……。レイドは、更に笑みを深め。俺と、どうしても2人きりで話したいことがあるんだと言った。

 だから、俺達は森に帰ることにした。

 俺は、皆にバイバ~イ! と手を振って、別れを告げると。皆も、にこやかに手を振り返してくれたんだけど――レイドの後ろにいたらしいロンウェルは、どうしてか首を振って、ため息を吐いていたので……。俺は、それを不思議に思ったんだ。

 その理由は、森に帰り。ダンジョンを出した瞬間に分かった――。

 俺はレイドに、これでもかというくらいに抱き潰され。しかも、それの最中に、何度も何度も『レイド以外の、人の身体には触れません』と約束させられた。

 事が終わった後、少しして――。理由も言わず、急に責め立ててきたレイドに、何だかムカムカしてしまい。家出ならぬ、家である俺自身が出て行き、ロンウェルに愚痴りに行ったんだけど……。すぐに、俺が悪いと言われて追い返された。

 で、結局はいつもの森にすごすごと戻り。帰って来たレイドは、普通な感じだったから。俺も、もういいか~! と思って、その件を引きずることは止めた。

 それから何日かして、ハッ! と気が付いた。

 そういえば、最近ちゃんとディスプレイを見ていなかったな、と……。

 どのくらいの能力値になっているのかも知りたかったから、それを出そうとしたんだけど。一切、表示されなかった。

 それから、何度も試してみた。でも結局、表示されることは無かったんだ。

 なんでかは分からなかったけど、多分……。白のプレゼントの力が消失したことと、何か関係性があるんだろうな? とは思った。

 それに、俺が持っている、力の変化はないし。炎竜を召喚したい時は、来て欲しいと念じれば通じているらしいから……。特に、生活に支障を来すことはなかった。

 だから、全てが終わったから、それらの力が無くなったんだ……と俺は解釈することにした。


 ――それから、4ヶ月後。俺が子供を妊娠していることが判明し。

 もう、皆で凄く喜んだ。

 その中でも。俺やレイドと同じくらいに、ロンウェルと炎竜がずっと喜んでくれていて……。

 ロンウェルは、色々なベビーグッズを作ってくれていた。

 それから、7ヶ月後くらいに赤ちゃんが産まれたんだけど――その人数に、俺は仰天したんだ。

 6人、6人だぞ? 新米ママに、6人はマジでハードだろ!

 そもそも、6人なんて大人数を、一般的に考えても産める人はなかなかいないし。どうやって面倒を見れば良いんだ? と苦悩した……。

 でも、そんな悩みなんて吹き飛ぶくらい。子供達、全員がめちゃくちゃ可愛いんだ。

 レイドも、可愛い! 可愛い!! って表情を緩め、喜んで面倒見てくれてるし……。用事がある時以外は、毎日のように炎竜がダンジョンへと訪れて面倒を見に来てくれて。それで、何だかんだで上手くいっていた。


 でも、一つだけ。とてつもない悩みが出来た。


 それは――俺が、もし、動物並みにポンポンと子供を産める体質だとしたら。流石に、俺が色々な意味で死んでしまうと……。それを考えただけで、恐ろしく思ったのだ。

 だから、悪いとは思ったけど……。子供達を、理由をつけてロンウェルに預け。俺は、有名な婦人病院に行って、避妊をしたいんだと相談しに行った。

 それで、身体を診てもらったんだけど。医者からは、「妊娠する機能があった痕跡は見受けられるが、そこの部分だけを切り取られたかのように消失している」と伝えられた。

 俺は、とても驚いたけど。同時にホッともした。

 いや~、あのまま子供を産んでいったら。いつか、俺とレイドの子供達だけで、国を何個も作れるくらいの人数になってしまうだろ?

 それが分かり。俺は「良かった~!!」と笑顔で病院を出たら――レイドが、その出口近くでキラキラと輝くような笑顔を浮かべて俺を見ていた。

 だから、それをレイドにも伝えておこうかな~? と思って。俺は、レイドにそのことを言った。

 すると……。レイドは、更に笑みを深め。森に帰ったら、俺に話したいことがあるんだと言い。
 子供達は、今日一日はロンウェルが見てくれるんだとも、レイドから伝えられた。

 だから「マジっ!? 久しぶりにゆっくり出来る! ロンウェルには、いつも感謝しかないな~!!」とレイドと話ながら、2人で森に帰り。ダンジョンを出した瞬間に――レイドに襲われた。

 意味が分からずに、ぐちゃぐちゃに抱き潰され。気絶して意識が戻り、まだヤってて、気絶して意識が戻り、まだヤってて……をずっと繰り返した。

 それで、それの最中に、何度も何度も『レイド以外の人に、身体を見せません』と約束させられた。

 事が終わった後。意味不明に、責め立ててきたレイドに凄くムカムカしてるのに……。レイドは、何事もなく俺に話かけてきたから、ガン無視した。
 子供を迎えに行った時にも。俺の隣で涼しい顔をしているレイドに苛ついて、ロンウェルにその事を愚痴ったんだけど、即座に俺が悪いと言われ……。レイドと子供達と一緒に、俺は森へとすごすごと帰った。

 ロンウェル酷いよな!? あんなに、俺が帰って来たのを泣いて喜んでたのに! レイドとタッグを組んで、俺を苛めてさ~!

 まぁ、それでも……。レイドも、ロンウェルも、俺にとって凄く大切な存在だから。結局は、何かがあっても直ぐに許せちゃうんだけどな~……。


 ――という日々を過ごしているうちに、子供達がすくすくと育っていき。あっという間に、7年が経過していた。


 ********


  
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