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109.レイドの成り立ち

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「なぁ、レイド……。ずっと、気になってたんだけどさ、聞いてもいいか? ――あっ、嫌だったら言わなくても良いからな」


 ――過去、俺がヤツィルダだった時。レイドは、一歩引いている感じがあったし。
 ダンジョンの核になってからは、よく分からぬうちに強引にヤられまくり。
 それが無くなってからは、禁術機や世界の歪みのことなどで、目が回る程に忙しくなったりと……。

 その合間に雑談はしても、レイドと深い話をしてはこなかった。

 それで、今回。それらが無くなったらからこそ、レイドと腹を割って話をしたいと思っていた。


「ん? 何だ……?」

 俺が、急に畏まってそう聞いたからか。レイドは、不思議そうにしている。

「あのさ、どうして……。ここを、ケモフ達の拠点に決めたんだ? その……色々と、あっただろ?」

 俺は、ずっと気になっていた――俺達が今いる森は、白の力を得るため。レイドが百年間も、苦しい思いをしてきた場所だからだ。


 すると、レイドは何故か表情を緩め――。


「ああ。確かに、言われてみればそうだが……。俺はあの時まで、長く決まった場所に留まることがなかった。けど、百年間もここにいたからか、愛着が湧き。帰るべき場所のような気になった。日当たりが良いから、気持ちも良いしな……」


 のほほんとした、返答をされた。


「へ? えっ、あぁ……。そ、そうなんだ……」


 じゃあ、ケモフ達のことがなくても、居たってことか? と……。俺は、少し呆気にとられてしまう。


 なんだか、レイドって……。やっぱ、どこか抜けてるところあるよな?
 けど……。そういう風に捉えられてるなら、良かった――。



 △▼△▼△▼△▼


 ――魔術塔に居た子達のことや、ヤツィルダの時にレイドと言い合っていた時のことなど。過去にあった話を、懐かしみながらポツポツと話していて……。

 レイドって、俺と出会う前からこんな感じだったのかな……? と思い。それで、レイドから幼少期の話とかを聞いたことないな……と気付く。

 一度、気になると……それが非常に気になってしまう。


「レイドって。子供の頃、どんなだったんだ? こう言うと、あからさま過ぎだけど……。両親から、めちゃくちゃ大事にされたんじゃないか?」


 そう、殆どの極級魔術師は。家族には、特に凄く大事にされる。

 世間は。極級魔術師同士であれば、極級クラスの子供が絶対に生まれると思っているみたいだけど……。実は、その認識は――半分アタリで、半分ハズレなんだ。

 極級の子供が、産まれる確率が。等級が弱~最級からだと、0.1%であるのが。極級同士だと、10%に増えるだけだ。

 極級と、他の等級との組み合わせでは。そもそも、子供が授かることすら難しく。運良く出来ても、極級の子供が産まれるのは、他と同じく0.1%の確率までに下がってしまっている。

 そして、その認識が、なぜ世間に広まっていないのかは……。
 極級魔術師は、そういう目的で狙われるから、目立ちたくないと――自分の等級を隠している者達が多いからだった。極級魔術師同士で子をなすなら、特に……ひた隠しにするだろう。
 そうなれば、勿論のこと。極級魔術師の体質についての詳細は、大きく広まることはない。

 しかし、それでも世間では。極級と、他の等級との子供が出来る可能性は、ほぼ無いのだということだけは分かっている。にも関わらず、狙われるのが問題なのだ。

 だからか、極級クラスの子供が生まれた両親は。子供が自立出来るまで、世間から隠すように大事に大事に囲うように育てている。
 ――それは、まだ幼子の場合には。己の強い魔力をちゃんと扱えず。低級魔術師にさえ、捕らえられてしまうこともあり得るからだった。

 俺も、このことは。魔術塔の研究者の人から聞き、初めて知ったことだった。ということは――極級魔術師だとしても、この事実を知っている人は少ないのかもしれない。



 レイドは、少し顔をしかめてから――。

「大事にされてたのかは知らんが……。幼い頃は、いつも牢に閉じ込められていたな」

 そう、ため息混じりに言った。

「――は……はぁっ!!?」

 牢に、閉じ込められるって……なんで?

「な、なに、それ……?」

 レイドも、よく分からないというように首を傾げている。

「俺の両親は、低級魔術師であったようだ。それで、俺が生まれたものだから……。どう扱って良いのか、分からなかったのだと思うが……」
「は、はぁああっ!? そんなん、あるか!? 意味分かんね~!!」

 すると、レイドは何かを思い出したかのように「ああ、確かに……理解し難いこともあったな」と言う。

「俺が15を過ぎた頃。その牢に、大勢の女性が集まり、俺の身体を弄くり回す、という行為を頻繁にされていた。その頃は、既に術を扱うことは難なく出来たのでな……。それで、来る者達を追い返す日々を過ごし、気が付けば両親が寿命を迎えていた」
「…………は?」


 え? え……? レイドも、ミィーナと同じ待遇をされてたのか……?

 レイドの場合は、それに反撃をしていたから。意味が分からなかった、という認識みたいだけど……。

 なんで、そんなことを普通に出来るんだ?


「その後は、俺にとってはあってないような牢を破壊し……。各地を回って旅をしている時に――ヤツィルダに出会った」

 俺が、レイドの境遇についてぐるぐると考えていたら。レイドは、何ともないような顔をして話を続けていた。

「俺が街中を歩いている時、急にヤツィルダに腕を掴まれて……。凄く赤いだとか、熱そうだから髪を触らせてくれと言われ。俺は驚いて、空間魔法を使ったが……。腕を掴まれていたから、一緒に連れて来てしまったな」
「はははっ! そんなこともあったな~?」

 レイドは顔を綻ばせ、俺と出会った頃のことを楽しそうに話している。

 それで、本人が気にしていないのに。俺が、変にズルズルと引きずってちゃダメだと思い。その話の方に、気持ちを移した。


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