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105.逃げた先で、責められる

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「塔主様、そんなに慌てて……。一体、どうされたのですか?」
「ロンウェルに、会いたくなっちゃってさ~!」

 今、魔術塔の5階にある科学室にお邪魔していた。

「――絶対に、違う理由ですね……?」

 ロンウェルから、じとっとした目を向けられた。

「ははは~!! ――あ、そういや……。あれから大丈夫か? 国王のジジィ共に、何か難癖つけられたりとか……」


 国王からの者達は、全員【追放】した。


 その後に、よくよく魔術塔内部を調べてみると。国の裏金やら、カジノやら、詐欺のようなことをして集めた金品など……。この場所で、だいぶ悪いとこをしていたようだ。
 だから、俺やレイドに対して、財宝を奪うとか賊だとかなんか言ってたんだな~と妙に納得した。

 それから、忍者の格好をした人達全員を魔術塔の仲間にしたんだ。

 それで、魔術塔を歩いていると、沢山の忍者とすれ違うから凄く面白いんだよな~。


「国王の者達については……。ここで行っていた事実を公表したことで、信用も全てが地に落ちたようですし。個人では何の力もない者達ですので……。もし、何かを言われたとしても、たいした問題にもなりませんから大丈夫です」

 まあ、確かに……。この魔術塔の実績によって、大きな顔をしてたようだけど、個人個人は大したことない奴らだったもんな。

「――じゃあ、あの情報については……?」
「ああ、それは。ハートシア様が、国が混乱に陥っていた時から根拠立てて説明をしていたのと……。今回、ハートシア様に、国の者達や他国の者達も大勢救われていたということが大きく功を成したようで――全国の法にも組み込まれると、塔主様が来るちょっと前に伝書が届きました」

 これは、全てが落ち着いた時に聞いたのだが。俺が、炎竜に聞いた話を、レイドに伝えたその時から。レイドは、ずっと世界の仕組み――核、キィラ、ケモフ、光粒の役割のことを、世界に発信してくれていたという。

 そして、それらを人間が傷つけることを禁止する、というような法律を作るために動いていたが……。最初は誰も取り合ってくれずに、レイドは酷い批判を浴びていたらしい。

 しかし、いくら批判されても。レイドは、光粒の種が噴き出すのを待つしかない期間中。国外にも足を運び、具合の悪い者達に回復魔法をかけて回っていた。

 遠くの国に飛ぶ時には、炎竜も手伝ってくれていたようだけど……。あの時のレイドは、いつも疲れ果てて戻って来ていたのを覚えている。

 レイドは、それを善意でやっていたみたいだけど。結果的に、それのお陰で大勢の心をも動かしたということだ。

 その時、俺は……魔術塔から、逃げるジジィ共を【追放】するため、追いかけ回すので必死過ぎて(直接、本人に言わないと追放出来ない仕組みのせい)。疲れて帰って来るレイドに、ちゃんと声をかけてなかった。
 そのことを悪かったと思い、謝ったら。レイドは『互いにやるべきことや、成せることが違うから、気にしなくていい』と言ってくれたけど……。それでも、当時のことは凄く反省した――。


「そうか、レイドのお陰だな……」
「そうですね……。しかし、ハートシア様は、必要以上に背負い込んでしまうところもありますから……。なんだか、とても心配です……」

 ロンウェルは表情を強張らせ、深刻な顔をしていた。

「え……? まぁ、確かに……。レイドって、そういうところあるよな~」
「そうです! そうです!! 今も、塔主様が家出をして、どんなに思い悩んでいることかっ! あぁっ! 嘆かわしいっ!!」

 よよよ……と。ロンウェルは、ハンカチを出し、目元を押さえている。

「え? え……? い、家出!? な、何だよ、それ!!」
「お可哀想な、ハートシア様……。あんなに、塔主様のために頑張っているのに……それが報われないなんて……っ!!」

 ロンウェルは、ずっと。可哀想だ、可哀想だ、と言いながら、シクシクと泣いてる(?)。

 え……? もしかして、俺。ロンウェルに、スゲー責められてる……?


「――も、もう! 俺、帰るからっ!!」

 俺がそう言った途端。ロンウェルはパッ! とハンカチから顔を上げ、ニッコリと笑顔で手を振ってきた。

「はいっ! ハートシア様にも、よろしくお伝え下さいね~!」

 ロンウェル、やっぱり泣き真似だったんか!!
 まったく、いい性格してるなっ!

「ロンウェルのバーカ!! 俺自身が家だから、家出じゃないんだよ~~だっ!!」


 ――俺はそう言って、逃げるように研究室から飛び出した。


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