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103.高所ではふざけるな
しおりを挟む「あいつら、大丈夫かな?」
まだ少ない数のキィラとケモフ達は、恐らく、この国一帯を巡回してくれるのだろうけど……凄く心配だ。
希少性が高い生き物だって言われてるんだ。捕まえられたりしてないよな……?
「ヤマダ、心配はいらない。ロンウェルは、あの防御壁に追跡魔法もつけていると言っていた。もし、邪な人間に捕まえられたりしたら、防御壁によって傷つけることは出来ないし。囲われたならば、後から場所を特定することも可能だ」
「うへぇ~、マジ……? ロンウェル、どんだけレベルアップしてんだよ~」
移動式の防御壁に、保護魔法、追跡魔法までつけられるって……。ロンウェルって、本当は人間じゃね~だろ?
「そうだな……。ロンウェルには、いつも驚かせられる」
レイドを見上げると。クスリと笑っていて、表情を和らげていた。
その表情は、信頼や尊敬している者へ向けるようなものだった。
俺と同じく、レイドもロンウェルを尊敬してんだな~。色々と、相談とかもし合ってたようだし……。
でも、なんだか……ちょびっと寂しいかも。
例えるなら、友達同士が仲良くなるのはスゲー嬉しいけど。自分の知らない間に、どこか2人で出掛けてたみたいな……そんな、しんみりした気分。
まぁ、俺の場合は仕方ないんだけどな。
――なんて、子供じみたことを考えてたら炎竜に『主~』と呼ばれ、意識がそちらに向く。
『やっぱり、2人だけで行った方が早いと思わんか~? ワシが人形になれば、こんな大きな身体で移動しなくとも、主を横抱きにしてスイスイと運べるんじゃがな~』
そうそう、炎竜は人形の時には。爪、牙、尻尾、翼など、身体の一部を自由に出せたり出来るようだ。
だから、その話が出た当初。炎竜には、人形に翼だけ生やして、さっさと各地を回ろうと言われていたんだけど――レイドが猛反対して、何故か3人で行くということになった。
「ん~……。だから、それは――……ぅわっ!? ちょっと、レイド!! マジで、ここでは止めろよっ!!」
レイドが殺気を込め。術を出していたから、慌てて止める。
いや、こんなところで喧嘩のようなことをされたら……真面目にヤバいだろ? 地面との距離、どんだけあると思ってんだよ……?
なんでそんなに、レイドと炎竜がやり合うのか、本当に分からない。
「炎竜、何度言えば分かる……いい加減にしろ」
レイドは、出していた術を消しはしたが。殺気はそのままで、唸るような低い声で炎竜へ言葉をかけている。
『ホッホッホッ!! 何のことじゃ? まったくもって分からんなぁ~? じゃが、余裕のない男はみっともなく感じるの~。そんなに、自分に自信がないんじゃな~?』
まぁ、なんだか……。炎竜は、レイドを面白がっておちょくってるような感じもするんだよな。
「は? おい、このクソヤ――」
「はい! ストップ、ストップ!! これが終わるまで、2人は会話を交わすなっ!」
いつも、俺をだしに使われたり。真ん中に挟んで喧嘩してたり。いい加減、勘弁して欲しいわ。
それからは静寂が流れ。その中で、俺が発光しているだけになっていた。
そういや、俺って周りからどう見えてんのかな?
前に。光粒の花を身体中に生やした時には、化け物だって言われたけど……。今は、身体から綿毛を噴き出す化け物……みたいな?
何となしに、チラと下を見ると――夜にも関わらず、大勢の人が外に出ているようだった。
よくよく注視すると、こちらに指を指していたり。指を組み、膝をついている人が多いようだ。
「え? まさか……。国を侵略しに来た、化け物とか……思われてないよな?」
『ホッホッホッホッホッ!! 主、それは無いから大丈夫じゃよ。聞くと、神様が自分達を助けに来てくれた……と泣いて喜んどるようじゃな』
そういえば、炎竜が昔。人間よりも、何百倍も耳が良いんだって言ってたことがあったな。
「今、この光粒の種によって、空気が清浄されているからな。人にとっては、体調が良くなることで余計にそう感じるんだろう」
ああ、そっか……。確かにそうだよな。ずっと体調が悪かったのに、光粒の種が降って来たことで、それが緩和したなら。何かに救われたと思うよな。上手くいっているようで、良かった……。
――レイドも、視線を下に向け。安心したような表情を浮かべていた。
レイドは、国の皆に回復魔法をずっとかけていたから。俺よりも、心にずっとその重圧がのし掛かっていたのかもしれない。責任感が強い奴だからな……。
「そうか……。だったら、良かったな」
レイドには、核の力を使うための手助け等をしてもらい。
炎竜には、各地に光粒の種を広げることを手伝ってもらっている。
だから、これが出来たのも。レイドと、炎竜が居てくれたお陰だと。本当に感謝していた――。
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