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99.自信は大事なもの
しおりを挟むロンウェルは、5階にある倉庫の一部に防御壁を張り、馬鹿の父親を閉じ込めてくれたようだ。
俺達がそこに着くと、馬鹿の父親が目を覚ましていて。あのジジィ共と同じようなことをピーピーと煩く叫んでいた。だが、少し脅すと、慌てて黒の禁術機を入手した状況を話した。
気がついた時には、禁術機を手に持っており。レイドに術をかけなければいけないという使命感に駆られて、それを行った……と。まったく悪びれもせずに説明していた。
そして、その間の行動は、自分自身でも細かくは思い出せないようであり……。
それは、前にレイドが言っていた――禁術機によって、馬鹿の父親も、行動を操作されていたとの結果でしかなかった。
それから、その後処理などはロンウェルが行うと言ってくれたので。悪いと思いながらも、俺とレイドはそれに甘えることにした。
△▼△▼△▼△▼
「――塔主様、あの者を警備に引き渡しました」
ロンウェルがこの部屋――【塔主の間】に入って来る。
「ロンウェル、本当にありがとな」
「いえいえ! これくらい朝飯前ですっ!」
ロンウェルは、胸を張って得意気な様子になっていた。
なんか、ロンウェル変わったな~。
前は、何だか自分を下げているというか……。自身なさそうな雰囲気が漂っていたんだ。本当に、凄い奴なのにさ。
レイドの過去を見た時、ロンウェルは何かを吹っ切れた場面があった。
だから、ロンウェルが人の言葉をプラスに受けとり、返せるようになったのは――レイドのお陰なのかもしれない。
「ロンウェルが明るくなって良かった。きっと、レイドのお陰だな?」
俺は、ツンツンとレイドを小突いた。
「いや、俺は何も……」
レイドは、眉尻を下げて苦笑いをしている。
う~ん? レイドは、何で元気ないんだろ?
「はい! でも、それは……。ハートシアと、塔主様のお2人のお陰なんですよ」
「え、俺……? ロンウェルに、なんかしたっけ?」
ロンウェルからそう言われて、俺はレイドからロンウェルに視線を移す。
ロンウェルは、とても嬉そうにニコニコと笑って俺達を見ていた。
「前に、塔主様が言っていたではありませんか! 『――俺は、自分が出来ないことを出来るロンウェルを尊敬するし、素直に凄いと思う。でも、相手にそれは大したことじゃないと、沈んだ顔で否定しかされなければ……それは気分の良いものじゃないぞ? 俺は、お前に自信を持って欲しい。それは、お前にしか出来ないことだ』と……私はこの言葉をずっと忘れられなかったのです」
「あ~……。確かに、言ったような気が……」
そんなことを言ったのは記憶にあるが、自分自身でも一語一句は覚えてはいないのに。ロンウェルは、それを全て覚えていたとは……凄いな。
「ハートシア様にも、塔主様と同じことを言われて……。何故だか、その言葉か素直に胸に落ちて来たのです。それからは、今までの気持ちが嘘のように、自分に自信が持てるようになっていたんですよ」
「そうか。俺達の言葉で、ロンウェルが良い方に変わったようで……良かった」
実は、ロンウェルに言った後に。個人の気持ちを変に強制するなんて、人として駄目だったかなとか……自己嫌悪に陥っていたんだ。
だから、ロンウェルが俺の言葉を大事に覚えていて、レイドの言葉により自信へとに繋がったなら……本当に良かったと思う。
ロンウェルは、それからレイドの方をチラチラと見て。レイドの方へ「あの……」と話し掛けた。
「ハートシア様……。塔主様に、話しても良いですか?」
「んん……? なに、なに?」
話すって? 何か、あるのか……?
レイドの方に視線を向けると、それに対してロンウェルに頷いているようだった。
――それから、ロンウェルは。俺が、ヤツィルダとしての記憶が戻る以前に起こった、過去の話をしてくれた。
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