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96.子供の遊び場とは、なんたることだ?
しおりを挟む――【3階・会議室】を設定し、扉を引く。
「勝手なことをっ! この魔術塔を維持していたのを誰だと思っている!? ワシらは、60年もここを守ってきたんだぞ! それを、最近帰ってから我が物顔で権力を振るいおってっ!!」
「そうだ、そうだ! 私達の功績を何だと思っている!? この国をずっと支えてきたのは、私達なんだぞ!!」
「古代魔術師だか何だか知らんが、結局はもう居らぬ初代塔主との取り決めで貴様に権力が与えられたのだろう? 今は、私達の時代なのだっ! 過去の古い考えの者には引っ込んでもらいたい!!」
ん~? なんか、ピーピー言ってる奴らがいるな?
「レイド、お待たせ!」
「ああ、ヤマダ。すまないな……清浄は大丈夫か?」
レイドは、俺が試しに緑南橋地区で核の力を使ってみたところまでは一緒に居てくれて。
レイドに『陸地の清浄は、どのくらいかかりそうだ?』と聞かれたから、『この調子だったら、だいたい3時間くらいで清浄出来るかな~』と言っていたのだ。
あれ? じゃあ、まさか……。3時間経つまで、このジジィ共の騒音をずっと我慢してくれてたのか?
うわ~、どんな苦行だよ。
「貴様! 何者――」
「ああ、陸地の毒性はだいたいは排除したから、問題はなくなったと思うよ。ごめんな、3時間経つまで耐えてくれたんだろ?」
「いや、ヤマダが謝る必要はない」
「そうか、ありがとな……――それで、レイドがあんな状態になったのかは、ちゃんと聞けた?」
「いや、延々とこのような状態で、話になら――」
レイドが話しているのを聞いていたら。ズイッと俺の目の前に、ジジィの一人が割り込んで来た。
「うわっ! びっくりした~~!! ……なんだよ? 今、すっごく大事な話をしてたんだけど? ちょっとだけ、待っててくれよ。後で、ちゃ~んと相手してやっからさ~!」
「き、貴様~~! ワシを馬鹿にしおってっ!! 許可のない奴が、何故この魔術塔に入っておる!? ここはワシらのような権力の持つ者しか入れぬのだぞっ! 子供の遊び場ではないっ!!」
は? 子供、だと……?
「あ・の・な? 俺、実はさ~ここの初代塔主なんだよな~~!! 俺だったらお前らを、即座にこの魔術塔から永久追放することも可能なんだけど……?」
この魔術塔を作った時に、塔主だけがある権限が――魔術塔に在籍している者を、即刻追放する事が出来ることだった。
塔主と並んだ権限のあるレイドが、追放を言い渡したとしても。1年間は、魔術塔内にその者は出入りが出来てしまうのだ。
俺は、今までこれを使う機会がなかったし。別に必要ないと思っていたけど……。今の状況では、この権限にとても救われることになりそうだな。
俺がそう言った瞬間、辺りがシーンと静まり返り。直ぐにジジィ共の大きな笑い声が、部屋中に響き渡った。
「はっはっは!! ボク? 駄目だよ~~そんな馬鹿みたいな冗談を言ってはね~。親御さんは何処かな……? ――誰か、このガキの親を知っている者はいるか? その者はクビだな。この魔術塔に、こんな馬鹿なガキを連れてくるなんてなぁ~?」
「いや、見たことはありませんね……。きっと、この子供は7階から下りて来たのでしょう。本当に勘弁して欲しいですよね~? ちゃんと子供の管理すら出来ないなんて、恥ずかしい親ですよ! まったく!!」
「ほら、ほら~! ボク~? おじちゃんが、そこまで連れて行ってあげるから、こっちにおいで? ……ハァ、ハァ!」
……馬鹿の父親の件で。このジジィ共と、一度は会ったことあるんだけど?
あんな俺を馬鹿にしといて、こいつら全員が忘れてるとか……ここは耄碌ジジィの集まりかよ?
しかも、禁術機が無くなったからか知らね~けど、レイドにも上から目線で話してたしさ~……。
――うん、こいつら救いようがね~な!
「……レイド、頼む」
「ああ。今直ぐに、殺ろう」
レイドが極級魔法を出していたので、それを慌てて止める。
「違う! このクソジジィ共を、ここから逃げられないように拘束してくれってことだよっ!!」
――不服そうな顔をしながらも、レイドはジジィ共に拘束魔法をかけてくれた。
何故だか、俺を連れて行くと言った奴にだけは極級のを使っていて。魔力の消費が激しいのに何故だろうとは思ったが、レイドなりの理由があるのかな~と、あえて聞かないことにした。
「さぁ~て……。まずは、洗いざらい話してもらうとするかな」
床に転がっても尚、元気にピーピー言っている奴らを見下ろし。はぁ……とため息を吐いた。
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