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95.陸地の清浄、魔術塔の掃除

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 △▼△▼△▼△▼


 ――レイドと現実に戻ると、ダンジョン内に居た筈の白達は、既に消えていた。

 黒の禁術機の嘆きや、白の優しげな笑顔を思い出すと、やるせない気持ちが込み上げてきたが、レイドにも白に聞いたことを早急に共有した方が良いと思い。すぐに話を伝えた。

 すると、レイドは割り切れない思いがあるような……非常に複雑な表情を浮かべていた。

 レイドは俺以上に、禁術機との関わりが深い。それによる大勢の被害者達を今まで見てきている。

 だから、禁術機の事情は理解出来ても……。自分が過去に経験した様々な惨劇を考えると、簡単にそれを受け入れることが出来ないのかもしれない。

 それから、レイドが何故あのような状態になっていたのかは――。

 レイドは、魔術塔の班長達に集合するように伝書を飛ばし。班長達が揃ったと返信が来たので、会議室へと入ったら、途端に意識を無くしてしまったようで。レイド自身も、良く分からないようだった。
 だから、それを確認する為。レイドは再び、魔術塔に向かうと言った。

 心配で、一緒に行きたかったが。俺は、陸地の清浄を行わないといけない。
 レイドには、十分気を付けるように口酸っぱく言い。魔術塔へと行く、その背を見送った。




 △▼△▼△▼△▼



「ふぅ……。だいぶ、全体に行き渡らせたかな?」

 陸地を清浄してから、3時間ほどが経過した。

 俺が目を付けていた――扉に似ている取っ手部分を掴んで引くと、すんなりと開き。あとは、魔力を注げば良いだけだった。

 あの時、核としての力を使うことが出来なかったのは、やはり黒の禁術機がそれを妨害していたからだろう。
 黒の禁術機は、それが可能な程に世界と深く繋がっていて。徐々に壊されていく世界を、常に感じていたと思うと……。とんでもない苦しみだったのではないか、と。俺がこれを行い、世界と繋がったことで本当の意味で理解出来た。

 だから、そんな風に苦しみを味わう存在が、もう二度とこの世界から生まれることが無いようにと。俺は、一心不乱に魔力を注ぎ込んだ。


「核達が居た場所を全て回るのは、流石にキツイもんな~。もしやと思って、試しにここからやってみて……出来て、良かった」

 元々は、複数の核達が分担して土地の清浄を行っていたが。全世界を回るのは、炎竜やレイドがいても流石に骨が折れることだろう。

 それで俺は……――世界が緑南橋地区から、陸地の清浄が出来るように、仕組みを変えていたことを思い出し。
 その場所から核の力を流せば、全世界に行き渡らせることが出来るのではないかと考えた。

 魔術塔と、緑南橋地区は場所が近いというのもあったので、レイドにもその理由を話して。空間魔法で、俺も一緒にそこの近くまで送ってもらった。

 すると、予想は的中し。緑南橋地区から、全部の陸地に核の力を巡らせ、土地を清浄することが可能だった。

 俺は、この緑南橋地区に直接ダンジョンを展開して、核の力を使えるから良かったけど。
 前にいた核達は、元の場所から緑南橋地区に力を集結させていたから、そうとう大変だったのではと……核の力を使ってみてそれを感じた。



「そりゃ~、核達の負担は凄かったよな。だから、世界が壊れるのが早まったのかも……」


 暗くなりそうな気持ちを、ため息と共に吐き出していた時。俺の元に、ヒラヒラと蝶々の形をした伝書が飛んで来た。


「ん? これって……。ああ、そういう事だったんだな」


 伝書は魔法具なのだが……。一般的に、たくさん売られている伝書は性能が悪い為、紛失してしまうことが多々あるのだ。

 でも、ここに来た伝書は、機密情報を送る時に使われるもので性能がよく。しかも、送りたい相手にしか見えない魔法がかけられている。

 だから、このような精密な魔法具は、二級以上の魔法具職人が作っているものだった。(魔法具職人は、十級から一級までの等位があり。試験とかも、けっこうハードなものらしい)


 魔法具のことを思い出しているうちに、俺の手にその伝書が触れた。

 ――情報が頭の中へと流れて来る。


「『すまないが、魔術塔に来れるなら来て欲しい。レイド・ハートシア』……か」


 それを俺に伝え終わると、その伝書はボッ! と燃えて、跡形もなく消える。

 これは、情報を魔力に乗せて相手に伝えるものだから、証拠が残ることはないのだ。


「前は、不思議に思ってたけど……。レイドが俺の知らぬ間に情報を得ていたのは、この伝書からだったんだろうな」


 あの時は、めちゃくちゃそれが不思議だったけど……。今だったら、様々な知識が俺へと戻ってきたから理解出来る。

 きっと、レイドも俺の記憶が戻ったと知ったから、この方法を使って伝えようと思ったのだろう。

 もし、前だったら。良く分からずに逃げてるか、魔法で撃ち落としたかもしれない。
 俺、虫がけっこう苦手だから……。


「多分、魔術塔のジジィ共があーだこーだ言ってんだろうなぁ~。……うん、よし! レイドと一緒に、まずは魔術塔内の掃除をするか」


 魔術塔が、何故あのようになってしまったのかは――ジジィ共から直接聞くとしよう。


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