95 / 140
95.陸地の清浄、魔術塔の掃除
しおりを挟む△▼△▼△▼△▼
――レイドと現実に戻ると、ダンジョン内に居た筈の白達は、既に消えていた。
黒の禁術機の嘆きや、白の優しげな笑顔を思い出すと、やるせない気持ちが込み上げてきたが、レイドにも白に聞いたことを早急に共有した方が良いと思い。すぐに話を伝えた。
すると、レイドは割り切れない思いがあるような……非常に複雑な表情を浮かべていた。
レイドは俺以上に、禁術機との関わりが深い。それによる大勢の被害者達を今まで見てきている。
だから、禁術機の事情は理解出来ても……。自分が過去に経験した様々な惨劇を考えると、簡単にそれを受け入れることが出来ないのかもしれない。
それから、レイドが何故あのような状態になっていたのかは――。
レイドは、魔術塔の班長達に集合するように伝書を飛ばし。班長達が揃ったと返信が来たので、会議室へと入ったら、途端に意識を無くしてしまったようで。レイド自身も、良く分からないようだった。
だから、それを確認する為。レイドは再び、魔術塔に向かうと言った。
心配で、一緒に行きたかったが。俺は、陸地の清浄を行わないといけない。
レイドには、十分気を付けるように口酸っぱく言い。魔術塔へと行く、その背を見送った。
△▼△▼△▼△▼
「ふぅ……。だいぶ、全体に行き渡らせたかな?」
陸地を清浄してから、3時間ほどが経過した。
俺が目を付けていた――扉に似ている取っ手部分を掴んで引くと、すんなりと開き。あとは、魔力を注げば良いだけだった。
あの時、核としての力を使うことが出来なかったのは、やはり黒の禁術機がそれを妨害していたからだろう。
黒の禁術機は、それが可能な程に世界と深く繋がっていて。徐々に壊されていく世界を、常に感じていたと思うと……。とんでもない苦しみだったのではないか、と。俺がこれを行い、世界と繋がったことで本当の意味で理解出来た。
だから、そんな風に苦しみを味わう存在が、もう二度とこの世界から生まれることが無いようにと。俺は、一心不乱に魔力を注ぎ込んだ。
「核達が居た場所を全て回るのは、流石にキツイもんな~。もしやと思って、試しにここからやってみて……出来て、良かった」
元々は、複数の核達が分担して土地の清浄を行っていたが。全世界を回るのは、炎竜やレイドがいても流石に骨が折れることだろう。
それで俺は……――世界が緑南橋地区から、陸地の清浄が出来るように、仕組みを変えていたことを思い出し。
その場所から核の力を流せば、全世界に行き渡らせることが出来るのではないかと考えた。
魔術塔と、緑南橋地区は場所が近いというのもあったので、レイドにもその理由を話して。空間魔法で、俺も一緒にそこの近くまで送ってもらった。
すると、予想は的中し。緑南橋地区から、全部の陸地に核の力を巡らせ、土地を清浄することが可能だった。
俺は、この緑南橋地区に直接ダンジョンを展開して、核の力を使えるから良かったけど。
前にいた核達は、元の場所から緑南橋地区に力を集結させていたから、そうとう大変だったのではと……核の力を使ってみてそれを感じた。
「そりゃ~、核達の負担は凄かったよな。だから、世界が壊れるのが早まったのかも……」
暗くなりそうな気持ちを、ため息と共に吐き出していた時。俺の元に、ヒラヒラと蝶々の形をした伝書が飛んで来た。
「ん? これって……。ああ、そういう事だったんだな」
伝書は魔法具なのだが……。一般的に、たくさん売られている伝書は性能が悪い為、紛失してしまうことが多々あるのだ。
でも、ここに来た伝書は、機密情報を送る時に使われるもので性能がよく。しかも、送りたい相手にしか見えない魔法がかけられている。
だから、このような精密な魔法具は、二級以上の魔法具職人が作っているものだった。(魔法具職人は、十級から一級までの等位があり。試験とかも、けっこうハードなものらしい)
魔法具のことを思い出しているうちに、俺の手にその伝書が触れた。
――情報が頭の中へと流れて来る。
「『すまないが、魔術塔に来れるなら来て欲しい。レイド・ハートシア』……か」
それを俺に伝え終わると、その伝書はボッ! と燃えて、跡形もなく消える。
これは、情報を魔力に乗せて相手に伝えるものだから、証拠が残ることはないのだ。
「前は、不思議に思ってたけど……。レイドが俺の知らぬ間に情報を得ていたのは、この伝書からだったんだろうな」
あの時は、めちゃくちゃそれが不思議だったけど……。今だったら、様々な知識が俺へと戻ってきたから理解出来る。
きっと、レイドも俺の記憶が戻ったと知ったから、この方法を使って伝えようと思ったのだろう。
もし、前だったら。良く分からずに逃げてるか、魔法で撃ち落としたかもしれない。
俺、虫がけっこう苦手だから……。
「多分、魔術塔のジジィ共があーだこーだ言ってんだろうなぁ~。……うん、よし! レイドと一緒に、まずは魔術塔内の掃除をするか」
魔術塔が、何故あのようになってしまったのかは――ジジィ共から直接聞くとしよう。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
魔族に捕らえられた剣士、淫らに拘束され弄ばれる
たつしろ虎見
BL
魔族ブラッドに捕らえられた剣士エヴァンは、大罪人として拘束され様々な辱めを受ける。性器をリボンで戒められる、卑猥な動きや衣装を強制される……いくら辱められ、その身体を操られても、心を壊す事すら許されないまま魔法で快楽を押し付けられるエヴァン。更にブラッドにはある思惑があり……。
表紙:湯弐さん(https://www.pixiv.net/users/3989101)
召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる
KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。
ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。
ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。
性欲悪魔(8人攻め)×人間
エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
「陛下を誑かしたのはこの身体か!」って言われてエッチなポーズを沢山とらされました。もうお婿にいけないから責任を取って下さい!
うずみどり
BL
突発的に異世界転移をした男子高校生がバスローブ姿で縛られて近衛隊長にあちこち弄られていいようにされちゃう話です。
ほぼ全編エロで言葉責め。
無理矢理だけど痛くはないです。
転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!
スイセイ
BL
夜勤バイト明けに倒れ込んだベッドの上で、スマホ片手に過労死した俺こと煤ヶ谷鍮太郎は、気がつけばきらびやかな七人の騎士サマたちが居並ぶ広間で立ちすくんでいた。
どうやらここは、死ぬ直前にコラボ報酬目当てでダウンロードしたBL恋愛ソーシャルゲーム『宝石の騎士と七つの耀燈(ランプ)』の世界のようだ。俺の立ち位置はどうやら主人公に対する悪役ライバル、しかも不人気ゆえ途中でフェードアウトするキャラらしい。
だが、俺は知ってしまった。最初のチュートリアルバトルにて、イケメンに守られチヤホヤされて、優しい言葉をかけてもらえる喜びを。
こんなやさしい世界を目の前にして、前世みたいに隅っこで丸まってるだけのダンゴムシとして生きてくなんてできっこない。過去の陰縁焼き捨てて、コンプラ無視のキラキラ王子を傍らに、同じく転生者の廃課金主人公とバチバチしつつ、俺は俺だけが全力でチヤホヤされる世界を目指す!
※頭の悪いギャグ・ソシャゲあるあると・メタネタ多めです。
※逆ハー要素もありますがカップリングは固定です。
※R18は最後にあります。
※愛され→嫌われ→愛されの要素がちょっとだけ入ります。
※表紙の背景は祭屋暦様よりお借りしております。
https://www.pixiv.net/artworks/54224680
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる