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90.魔力が変わらず、一安心
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――レイドが白い禁術機を掴み、心の中で願いを言っていた場面を最後に、俺の意識が浮上する。
レイドの壮大過ぎる過去を、まるで映画等を見ているかのように眺めることしか出来なかった。
自分自身の感覚が戻り。クラクラする頭を押さえながら、周囲を見ると……――荒れ果てた広野に、俺は立っているようだ。
「……ん? ここは……。いつもの、森か?」
レイドが長い間、白と共にいた場所であり。
青い鳥や毛玉達の為に、レイドが防御壁を張っている森が、ボロボロになったような姿だった。
あの後、白の能力で願いを叶えて貰ったんだよな? どうして、こんな状況に……?
レイドが森に向かう時。既に、街も機能していないと言っていた。
だとしたら、俺がダンジョンの核になっていた期間中は、街全体がこのような状態になってたってことか?
――まだ少し、頭がクラクラとするが。大きく息を吐き、足を前に踏み出す。
「ま、とりあえず……街に下りてみるか」
森を下っている最中。俺が見た、レイドの過去を思い返し、整理する。
俺が何故、前世の記憶をそのまま持っていたのかは――俺の魂が、次の輪廻に向かった場合。完全に消滅してしまうから、そのまま引き継がれていたということ。
禁術機の性能を、どのように調べていたんだろうと思っていたのは――レイドや、過去にいた魔術塔の人達が頑張って調べ上げたり、追跡や制圧する機械まで作ってくれていた。
初めて会った俺のことを、レイドはどうしてこんなに好きなんだろうと、凄く不思議に感じていたことは……――過去のヤツィルダの姿形や雰囲気、魂のままであったからだった。
――俺は、小さな頃に事故にあったんだと両親から言われた。けど、頭を強く打った後遺症なのか、一部の記憶が飛んでしまっていた。飛んだ記憶の中に、蛇になっていたレイドとあのように会ってたのか……。
けど、正直……――レイドの記憶から見た俺のことは、自分の事なのに、自分のことでないように感じる。いや、実感が湧かない……と言った方が正確か。
俺がこんなんじゃ、あんなに俺の為に奮闘してくれた人達に、申し訳なくなるな。もしかしたら、時間が経てば……また気持ちが変わるのかな?
それらを、グルグルと考えているうちに。街に着いたが――。
「えぇっ!? な、何だよ、これ……?」
そこら中に、人間の骨みたいなのが転がっている。
「いや、まさか~……。こんなん、ならないだろ? 流石に……。だって、レイドが禁術機を連結して、白に願って俺を生き返らせたんだぞ?」
一通り、街を見て回っても――……全ての場所が同じような状態だった。
それから、うろうろとしているが。自分が、一体何をすれば良いのかも分からない。
白は、俺だったら大丈夫だって言ってたけど……。マジで分かんね~よ。
「え……? どうすりゃいいんだ? もう、全部見て――ああっ! そうだ!! 魔術塔は、まだ確認してなかった……」
確か……ここから近いから、直ぐに着くな。
――少し歩くと、カフェのような場所へと着いた。
「あれ? そういや、俺って、この魔術塔に承認されてんの? ヤツィルダの魂でも、一応は転生しちゃったから……身体は違うよな?」
けど、ここで考えてても、どうしようもない。
扉の取っ手を握って、魔力を流し込む……――。
――カチャン。
「おおっ、開いた!? 何で? ……あっ! ああ~! そっか、よく考えてみたら。鍵の役割を果たすものは、身体じゃなくて魔力だもんな? ってことは、魔力は同じってことか? 良かった~!! ……ん~~? え~と? それで、場所はどう決めるんだ?」
それからの反応がなかったので、取っ手をクルリと回すと――――。
【1階】――◀
【2階】――
【3階】――
【4階】――
【5階】――
【6階】――
【7階】――
【8階】――
頭の中に、1階から8階の文字が浮かび上がって来て、何か矢印みたいなものが1階についていた。
このまま扉の中に入ったら、1階ってことか?
他の階にはどう行くんだ……? 頭に浮かぶってことは、8階まではあるんだよな?
「んん、と……? あっ! 魔力を流す毎に、階が上がるんだな? で、8階行ったらまた1階に戻る、と。成る程、良く出来てるな~! ……これ、どう作ってんだ? パッと頭に浮かぶのも凄い。こちらにも魔力が流れるようになってて、それで形をイメージをにしてんのかな? ……――っと、こんなこと考えてないで、早く行かないとだな」
魔術塔の構造に感動し。こんな状況で、それの仕組みを考えてしまっていた。
「どんな場所かも、良く分からないし。やっぱ、結局は1階からだよな……?」
矢印が1階に指しているのを、ちゃんと確認してから――扉を通り抜けた。
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