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70.〖レイド〗過去
しおりを挟む「何度も、同じ事を言わせるな……」
「でもな、レイド。俺達でも被害を収められない程、事件が大きくなり過ぎてる。やっぱり、炎竜からの協力を得た方が良いと思う」
――最近、ヤツと会えばこの話ばかりだ。
「なら、お前がその炎竜とやらに会っている最中。この国はどうする? 現状、この国を動かしているのは国王ではなく……塔主であるお前だ。そのお前が、国を出ると言うのか?」
国には、一応は国王というものが存在しているが。魔術塔が出来てからというものの、実際に国を動かしているのは塔主である、こいつだ。
だから、国王は『国の象徴』という名の、お飾り同然となっており。今の事件に関しても、まったく使い物にはならなかった。
「うん……。本当悪いんだけどさ、レイドに空間魔法を使ってもらえれば直ぐに――」
「ふざけるなっ!! 何故、俺がそのような意味もないものに、大量な魔力を消費しなければならない!? 他力本願も大概にしろ!」
「レイド……」
ヤツは、苦しそうな顔をして俯き。それから黙ってしまった。
俺の意見に、是とする返答がないということは、行くことを諦めてはいないのだろう。
酷く、苛々する――。
「……よく、分かった。貴様とは、前々から反りが合わないと思っていた。行きたければ勝手に行け。俺は、手伝わないがな」
「レイド、待ってくれ! 話を――」
ヤツが、俺の肩を強く掴んできた。
「チッ! 触れるなっ!!」
俺は苛々したまま。魔法で風を起こし、ヤツを弾き飛ばした。
「ぐぅっ!!」
ヤツが吹き飛んで、壁に身体を強く叩きつけられ。それで、どこか怪我をしたのか、痛そうに顔を歪めている。
「――ッ! ……俺に、馴れ馴れしくするな」
俺は、その顔を見ていると胸が苦しくなり、視線を逸らす。
「レイド、ごめんな……」
ヤツは呻きながら、ゆっくりと起き上がり。そのまま部屋を出て行った――。
********
次の日、魔術塔の者達がたまたま話していたのを聞いた。
医療室の者に、ヤツが治療を頼んでいたと……――。
「……あの時、やはり怪我をしてしまったのか?」
――だから、とてもモヤモヤとしながら技の修練をしていたら。気がつけば回復魔法を習得していた。
「チッ! 俺は、馬鹿か……!」
今、俺は――塔主の部屋の前に立っている。
だが、どんな顔をして会えば良いのかと……なかなか扉を開けられないでいるのだ。
「はぁ……。会ったからといって、どうすれば……」
ヤツなら、多分。俺を許してくれるだろうが――。
「あれ、ハートシア様……? どうなされたのですか?」
「――ッ! あ、ああ。塔主に用があってな……」
「えっ!? 塔主様、ハートシア様に伝えてなかったんですか? 先程、炎竜に会いに国を出られたんですよ」
「……そうか、また帰って来た時に伺おう」
俺はその者の返事を聞く前に、直ぐに空間魔法を使い。その場を後にした。
「クソが……! 無責任な奴め」
ヤツは、魔力量が非常に多い為。通常では1年程もかかる、その国でも。足に高速化の魔法を絶えず使い続けることで、1ヶ月程あれば行けるのだと前に言っていた。
それでも、1ヶ月はかかるんだ。
その間は恐らく。この事件に関する負担は、俺にのし掛かるだろう。
「まさか、昨日の事への当てつけなのか? クソッ! 性悪がっ!!」
俺は、むしゃくしゃとしながらも。その日から休みなく、国の見回りをするようになった。
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