ダンジョンの核に転生したんだけど、この世界の人間性ってどうなってんの?

未知 道

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68.〖レイド〗過去

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 久しぶりに酒でも飲もうと、懇意にしてる酒屋から質の良い酒を譲り受けて貰った。それを手持ち、宿に向かっていた時。「お~い! レイド~~!!」と、うるさい声に呼び止められる。


「元気にしてた~? おっ! 何それ、何それ? おぉ、すげぇ~! 年代物じゃんっ!!」

 ヤツは、俺が手に持ってる酒を覗き込んでくる。

「どうせ、また無理だったんだろう……?」
「そう、そう、そう~~~!! もお~。炎竜、頑固も頑固っ! 話したり、酒類貢いだり、珍味な食べ物も貢いでさ~。最近はすんごく仲良くなって、笑い合う仲にもなったのに……。それでも、使役されることだけは絶対に嫌だって言うんだっ!! はあ~……。俺、そんな悪いことしそうに見える? 別に、炎竜の力を使って、世界征服してやろうとか企んでもないのに~!」


 ヤツは肩を落とし、トボトボと歩いている。


 二度と戻って来るなと言った3ヶ月後くらいに、ヤツは俺の前に突然現れ。何事もなかったかのように、その炎竜との件や見聞きした様々な事を延々と話してきた。

 それから少しして、ヤツはまた国を出て行ったが。3ヶ月間隔で帰って来て、まるで報告みたいに俺に話をしてくるようになっていた。

 そうしているうちに、100年程が過ぎ。いつの間にか、俺とヤツは普通に会話をし合う仲になったのだ。


「でも、炎竜は優しい奴なんだ。俺が山でずっとうろうろして、疲れてへたり込むを繰り返して1ヶ月くらい経ってからさぁ~」
「幻影魔法を解いてくれたんだろ?」
「あれ? 前に、言ったことあったっけ~?」
「いつも、けっこう同じこと言ってるな」


 ヤツは、頭を掻き「それは失敬失敬、アハハハ~~っ!!」と笑っている。本当、適当な奴だな……。


「あっ! そうだ!! なぁ、なぁ! レイドってさ、酒……けっこう好きだよな?」
「まあ、そうだな」

 俺は、何故だか飲み食いは必要ないが。酒はけっこう好んで飲んでいた。

「じ・つ・はっ!! 俺、クリムルの実から作られたお酒、手に入れたんだよなあ~!」


 千年に一度、10分だけしか存在出来ない実の……?

 その実は、10分が過ぎたら一瞬のうちに腐り落ちてしまう。

 だから、実に強力な保護魔法をかけてから、酒を製造をしなければならない為。非常に高額である。

 そして、その酒はとてつもなく極上な味だと聞く。


「それは、いくらで譲り受けられるんだ?」


 俺が、そういうと。ヤツはニンマリと笑った。


「レイド!! 俺と一緒に、魔術塔を更に盛り上げようぜっ!!」
「断る」
「へっ? なんで~……?」
「面倒だと、前から言っているだろう」

 最近は煩く言わなくなっていたから、諦めたかと思っていたが……そうでもなかったようだな。

「マジでさ~。魔術塔にレイドが居れば、もっと出来ることが増えるのになぁ~……。ほら、不可思議な機械らしきもののことだってあるだろ? なんとか、その存在を突き止めないといけないし……」
「……ああ」


 最近、変な現象が起こっている。


 ある者達は、自分が愛していた人を、何故だか急に憎むようになって殺めてしまい。

 ある者達は、急に身体を動かすことが出来なくなり、そのまま凌辱され。それを苦に、自ら命を絶ってしまっていた。


 愛していた者を殺めた犯人達は。何故、自分がそんなに愛していた者を憎み、憎んでいた者を愛してしまうようになったのかが分からないのだと、泣き喚いていた。

 そして、身体を動かすことの出来なくなった者を凌辱した犯人達は……頭がおかしくなっていたのだ。

 その頭がおかしくなってしまっている全員が、唯一共通して言っていることは『機械が頭を弄る』ということだった。


 そして、最近は人の全身が真っ黒になり、死亡するという現象が起こっていた。



 俺自身も、理解し難い事を経験したことがある。


 ここからだと、遠い地であるが。ある時、救助要請をしている国があった。鬼気迫るようだったので、俺は空間魔法を使い、即刻、そこに向かったのだが。間に合わず、既にその国は火の海であった。

 そして、国を滅ぼした様子である犯人を見つけ。俺が攻撃を仕掛けると、それに呆気なく沈んだ。

 国を滅ぼす程の魔術師が、俺が軽く撃った魔法で意識を落としたのがあまりにも不思議で。その事情聴取に俺も立ち会うと――。

 犯人は混乱してはいたが、受け答えはしっかり出来たのだ。

 だが、いくら質問しても。国を滅ぼした時の記憶はまったく無いというのと――犯人を詳しく調べてみたら、中級魔術師であったようだ。


 その人知を越えるような現象は。恐らく『機械』というものと、何かしらの関係性はあるだろうと俺は考えていた。

 確かに、このままにしていたら……危ないかもしれないな。


「それに関しては、俺も協力しよう」
「え、えっ……? えぇーーーっ!? マ、マジで? レイドが、俺の熱い誘いをオッケーしてくれた!! やったぁ~~っ!! イェーーイっ!!!」

 ヤツはめちゃくちゃ嬉しそうに、くねくねと変な踊りみたいなのを披露している。

「おい、変な言い方をするなっ! お前の為じゃない、事件の究明の為だからな!!」
「いや、いや、いや~! まったく、レイドってば素直じゃないんだから~!!」


 そう言ってしなだれかかって来たヤツに、俺は極級魔法をお見舞いした。


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