ダンジョンの核に転生したんだけど、この世界の人間性ってどうなってんの?

未知 道

文字の大きさ
上 下
65 / 142

65.核の力が使えなかった理由

しおりを挟む
 


「ヤマダが核としての力を使うには、赤いお兄さんの力も必要なんだ」

 それは、黒の禁術機も言っていたな。

「俺だけでそれが出来ないのは、何でだ……?」
「それは、元々ヤマダの魂は人間であったから、核が使う自然力ではなく、魔力を体内に宿しているんだ。だから、自然力を使い、世界と同期することが出来る炎竜と関わりの深い――赤いお兄さんの魔力を、ヤマダの体内に入れることで、やっと世界と同期が出来て。その力を使用することも可能になるんだ」


 ああ、急に、核の使い方が分かったのは。レイドの魔力が、俺の体内に入ったからだったのか……。

 ん? でも、それじゃあ、おかしいよな?


「核が自然力を使うなら。同じく自然力を使う炎竜は、どうしてそのことを知らなかったんだ……?」
「炎竜は、世界が意識して産み出そうとした生命ではなく、不意に生まれた存在で……。世界を清浄する役割を与えられていない。だから、それを理解出来ないのは当たり前なんだ。それでも、自然から産み出されているからか、世界と同期することは出来るんだよ」

 確かに、役割が与えられているなら。核や毛玉達、そして禁術機のように……己の役目を果たそうと必死になるもんな。

「けど、例え、炎竜がそれを知っていたとしても……。自然力は、魔力のように人へと流し入れることは出来ないものなんだ。だから、赤いお兄さんがいてくれて、僕も助かったよ。――……これら、全ての要素も含め。僕は、君達にこの世界を託すことが出来るとも思えたんだ」
「世界を……。そうか、俺は世界を救う為の、全てを兼ね揃えているからか」


 よく考えてみると――。

 俺が核ということで、地上の清浄も出来て。更には、運良く光粒の花もここにたくさん咲いていて……レイドだって俺の側にいる。

 恐らく、白がした選択とは――俺とレイドに、この世界を任せるということなんだろう。

 だから、白は絶対にこの事を伝えないといけない、と言ったんだ。これが唯一、壊れた世界であっても修復出来る、手立てだから――――。


 ふいに、白が近くにある光粒に視線を向けた。


「うん、正直……ここまで上手くいくとは思っていなかったよ。種を運ぶ役割の子達は、種が流れやすいように、普通は外にしかその種を運ぼうとはしないんだ。でも、こんなに埋め尽くすくらい持って来てるなんて……凄いね」


 白は洞窟内をじっくりと見て、嬉しそうに目を細めていた。


「でも、マジでびっくりしたぞ? あいつらが持って来た、次の日に凄まじい勢いで生えてきたからな……」

 あの光景をいま思い出しても、鳥肌が立つ。

「ふふっ! ダンジョン内はね、実は土がとても綺麗なんだ。だから、本当は一番、光粒の花が咲きやすい場所なんだよ。ただ、室内と認識されてしまっているから……」

 話の途中。白は急に、ハッとした様子で自分の手を見た。

「……うん、時間だね。そろそろ、赤いお兄さんを助けに行かないと」


 ――白の身体が、ついたり消えたり点滅し始める。


「――――ッ! 白、消えるのか……?」


 白は悲しそうな表情を浮かべ、頷いた。


 分かってる。この状況を打開する為に、それが出来る白が呼ばれた……。でも、それは――『蘇らせる』ではなく『喚ぶ』だった。

 それに、今だからこそ、そう思ってはいても。俺の意識下が。まだ会ってもいない存在を蘇らせる、ということまで、相手の状態も分からないのに、考えることは出来なかったんだろう。

 もし、その時に白のことを知っていたなら――。


 俺の目から、勝手に涙がボロリと零れた。慌てて、それをゴシゴシと拭う。


 白は、目を見開いた後。ふわりと微笑んだ。


「ありがとう。僕のために泣いてくれて……」


 あ~……。もう、俺マジで格好悪いな。

 少し話しただけで分かった。白は本当に、優しくて良い子なんだと。

 いや、きっと……。白以外の、禁術機たちもそうだったのかもしれない。
 俺が出会った――灰の禁術機も、黒の禁術機だって。本当は誰かを傷つけたくない、と訴えているように見えた。苦しそうにしていて……助けて欲しいと、踠いているようだった――。


「ヤマダ。赤いお兄さんの頭へと、手を乗せて」


 俺は白に言われるまま、レイドの頭に手を乗せた。


「多分。先に、赤いお兄さんの記憶が見えると思うけど……。それは、しっかりと見て、受け止めてあげて欲しい。それからは、僕が教えなくても……ヤマダだったら大丈夫」
「分かった。ありがとう……白」


 白は、ニコッと笑って俺に頷いた。


 意識がグニャグニャと掻き回されたようになり、次いで何かに引っ張られそうになった。

 その時。ずっと黙っている黒の禁術機が、ふと気になって……そちらに目線を向ける。


 黒の禁術機は――ただ、白だけを見詰めていた。


 それが、俺の視界に映るのと同時に。意識がぐるりと暗転する。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

処理中です...