62 / 142
62.目を背けた、後悔
しおりを挟む俺は、直ぐに炎竜を召喚しようとした。だが、申請しても、承認がされなかった。
それが何故なのか、思い至ったのは。黒の禁術機も、世界と同期をすることが出来る。だから、同期している炎竜に、何か干渉しているのかもしれない。
俺が、それを黒の禁術機に聞くと……――。
『世界と同期するのを、ずっと疎かにしてきた炎竜の精神を。そこの場所に押さえ込むなど、容易い』と、吐き捨てるかのようにして言われたのだ――。
△▼△▼△▼△▼
どうしよう、どうすれば……?
黒の禁術機の前であるが、恥も外聞も無く。レイドに口づけたり、一向に立たない陰茎を舐めたりもしたが――意味が無いことだと気が付いてしまった。
それは、濃厚接触だと時間がかかり過ぎる。
この、術の進行具合からすると……確実に間に合わない。
「あ~あ~。そんなことしていても、俺の術は絶対に解術出来ない。まあ、良い足掻きを見せてくれたからな――ほら、これをやるよ」
俺の前に、何かを投げ落とされた。
「え……。なんで?」
禁術機の本体が、地面に転がっている。
「ん? どうした……? 喜べよ! 俺を破壊することが出来るんだからさっ!!」
腹を抱えて笑っている、黒の禁術機の行動が信じられなくて。俺は、それを呆然と眺めてしまう。
「おい、おい、おい? 俺ばっかり見ててさ~。そいつ、良いのか? 死ぬぞ? 俺か、そいつ……どちらか一つだ。別に、迷うもんでもね~だろ?」
「――――ッ! く、そ……!!」
俺は――黒の禁術機を、手に強く握る。
「は、はははははっ!! そうだ! そうなんだよ!! それが、人間だっ!! 所詮、お前も元は人間だ。結局は、そういうもんなんだ……」
鋭い痛みを、手に感じるが……。それよりも、俺の手に持つ物がパキパキパキと壊れていくのを見ると。
灰の禁術機の時と同様、モヤモヤとしたものが胸に強く湧き上がってくる――。
「……っ、黒の禁術機、俺は――」
「それ以上言うな!! 偽善者がっ!! いいんだよ! どうせ、もう……これで終わりなんだ」
そうだ。結局は、俺も選んだ。
命の選別をした。
だから、何を言っても。自分を楽にするためだけの、自己満足でしかないだろう。
俺は、もう何も言えなくなり……。壊れゆくそれを、ただ見ていた。
――【パリンッ!!】
手の中にある禁術機が壊れた。
直ぐに、レイドを見るけれど……術の進行が止まっていない。
何故だと思い、黒の禁術機がいたところを見ると――――。
「消えて、ない……?」
「くく……っ! ははははっ!! お前、おつむが弱いな? 俺は言ったぞ? 残留思念が強い、とな。完全に消滅する3日までなら、力は弱くなるが術を使える。しかも、破壊される前にかけていた術に至っては、そのまま解けることも無いからな?」
なら、レイドは確実に――。
「更にもう一つ、残酷な真実を教えてやるよ。お前が使おうとしている核の力はな――その男がいないと使えない。だから、もう、全て終わりなんだ。終われば良い、こんな世界なんか……」
黒の禁術機は、笑いながらも辛そうに涙を流している。
同じだ……。灰の禁術機と――いや、きっと全ての禁術機も……そうだったんだろう。
――なんで、こんなことに……?
俺が、いけないのか?
ああ……。そう、そうだ……――俺は、自分自身のことから目を背けていた。
ずっと、ずっと、知らない振りをしてきた。
炎竜にだって、ちゃんと問い詰めれば良かったんだ。
特に、レイドは……もしかしたら、俺のことを知っているのかもしれない、とも思っていた。
懐かしそうな目を向けられた時だってあったし、俺に関する何かを隠しているようにも感じた。
そして、何よりも……――愛おしいという目で、ずっと、ずっと、俺を見ていて。いつも、大事にしてくれていた。
「……理由、聞くの……後回しにせず。直ぐに、聞けば良かった……」
ジワジワと視界が悪くなっていき、ボロボロと涙が溢れ出す。
本当に苦しくて……胸の辺りをギュウッと強く握り締めた。
そうか……。レイドは、俺が輝石になった時も、炎竜の傷を肩代わりした時も、こんな気持ちを味わっていたんだな。今さら、理解するなんて……――。
――ピピ。
【〖幸運に抱かれし者〗の強い苦痛を察知。
原因を取り除く為に、MAX幸運∞×10の使用を許可しました】
これは、まさか。
あの時の――。
〖確認〗を押す。
――ピピ。
【原因の排除をオート設定にしますか?】
〖YES〗を押す。
――ピピ。
【原因の排除=MAX幸運∞×10(残り1回)∶白を喚ぶのみ。
権限を使用しますか?】
〖YES〗を押す。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
目覚めたそこはBLゲームの中だった。
慎
BL
ーーパッパー!!
キキーッ! …ドンッ!!
鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥
身体が曲線を描いて宙に浮く…
全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥
『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』
異世界だった。
否、
腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる