ダンジョンの核に転生したんだけど、この世界の人間性ってどうなってんの?

未知 道

文字の大きさ
上 下
61 / 144

61.最後の禁術機との対面

しおりを挟む
 


「ん、分かって来た!! 分かって来たぞ~~~っ!!」


 あの後、レイドは魔術塔に用があると足早に出て行った。恐らく、炎竜から聞いた諸々の話を伝えるためにだろう。

 そして、俺はあれからずっと魔力の流れを読んでいたのだが。遂に、それが分かって来た。


「よし、よし、よ~し!! おっ! ここか? もしかして、ここだったのかっ!?」


 魔力の流れを、しっかりと読み取れてから見てみると――いつも魔法を出す出口の隣に、閉まっている扉のようなものが見えた。
 不思議と、取っ手みたいになっているところも付いてあって、本当に扉にしか見えない。

 俺は、魔力の流れを読んでいるうちに、その中で細かく操作も出来るようになっていた。
 だから、その扉の取っ手に、操作した魔力を絡ませるようにして、強く引いた。


「おし! 開け~~~ゴマっ!!」


 ――シュゥウウ。


 ん? なんか、ショートしたみたいになったぞ?
 あれ? 確かに引いたよな……?


「あれ、戻ってる。何でだ~?」


 それから、何度試しても結果は同じだった。


「あああ~~~っ!! なんでだよ! 俺の直感は、ここだって言ってるんだぁあっ!!」


 そうなんだ、これを見つけてからというものの。成さなければならない、という使命感に駆られている。

 多分、これは核としての本能なのかもしれない。


「いや、ていうかさ~! もっと早くに、この本能みたいなの来てくれよ~!! 俺が意識していなくてもっ!!」


 本当、こんな状況になる前に知ってたらな……。

 俺がしんみりとして、ため息を吐いていた時――黒い渦のようなものが、いきなり俺のダンジョンに出現した。


「なっ、なんだ……っ!?」


 それが収まると。レイドが地面に倒れ込んでいるのが、俺の目に映る。


「え……? レ、レイドっ!! な、何が、何が起こって……っ!?」
「ふ~ん……。お前が、白の救った魂か」


 真後ろから声が聞こえて。俺は、慌てて後ろへと振り向く。

 すると、10才くらいの子供が、俺を観察するような目で見ていた。
 何故か、その目にヒヤリとしたものを感じる。


「ガキじゃん」


 は……? こいつ、俺の事ガキっつった?


「俺はガキじゃねーぞ! お前のがガキだろっ! ってか、誰だよ……お前?」
「おい、おい。そんな悠長にお喋りしてて、良いのか?」
「はぁ? 勝手に入って来て……――あっ!!」


 そうだ、こんなよく分からんガキと、話してる暇なんてない。

 レイドに駆け寄り、何度も名前を呼ぶが……。グッタリとしたまま動かない。
 確認したところでは、外傷もないし。気絶しているように見えた。


「はぁ~。こんな馬鹿に、なんで白は……」


 呆れた声が聞こえたのでガキを見ると、冷たい目をしてこちらを眺めていた。

 多分、原因はこのガキだろう。


「お前、レイドに……ん?」


 俺は、ガキに何か違和感を感じた。

 まさか、こいつ……。


「あ、やっと気がついた? 初めまして、俺は人間に【黒の禁術機】って言われてるみたいだな」


 そうだ、あの現れ方からして変だというのもあるけど。ガキを良く見ると……。灰の禁術機と同じく、身体が透けている。


「黒の禁術機。なんで、ここに……?」

 俺がそう言った途端。黒の禁術機は大きな声で笑っていた。

「はあ~……。あのさ~、何故だかまだ分からないんだ? お前が、なんで核の力を使用出来ないんだと思う……?」

 黒の禁術機は、やれやれといった様子で。俺にゆっくりとした口調で話してきた。

「まさか、お前の仕業……?」
「ああ。俺は、世界と同期出来るからな。お前の力が流れないよう、遮断するなんて簡単だ」

 世界と、同期って……炎竜と一緒じゃないか。

「じゃあ、お前も炎竜と同じように、自然力を使うのか?」
「……自然力を使うのは一緒だけどな。あんな奴と同等だと思われたくはない。あいつと違って、俺は、ずっと、ずっと、苦しい思いをしてきたっ! 特に、俺は……っ! その土地や空気の淀みだって嫌でも伝わって来る! 全然違うんだよっ!!」

 そう言い終えた黒の禁術機は、苦しげに顔を歪めていた。

「なら、俺がそれを打開出来るのに……どうして邪魔をするんだよ?」

 黒の禁術機が苦しい思いをしていたのは、その表情から十分伝わってきた。けど、それなら何故、邪魔立てするのかが分からない。

「……俺、けっこう辛抱強く待ってたんだぞ? こうなるまでに、もし打開してくれるなら……猶予だってやろうと思ってたんだ。でも、こんなに世界を壊しきるまで、何もしてくれなかったじゃないか。だから、許せない」
「だから、今――」
「今さら、遅い……っ! ……こうなったのも、全部お前のせいだ。あんたらが、邪悪だって決めつけて壊し回っていた俺達は、世界を救う役割を持っていたんだからな」


 世界を救う? 禁術機が?

 禁術機の行動を思い返す――……まさか。


「人間を滅ぼす、ことか?」
「ああ、そうだよ。世界が、己を壊していく人間を『悪』だと考えたんだろうな。――でも、俺一人じゃ……役割は果たせない。まだ、灰がいれば……」


 黒の禁術機があまりにも、苦しさに踠くように話していて……俺は言葉を発することが出来なかった。


「……――そうだ、灰は馬鹿な奴だ。もし、俺があいつの能力を与えられていたら、直ぐに人間達を滅ぼしたのに。一度、国を落としただけで怯えて。最後の最後まで、人間を滅ぼそうとしなかった。お陰で、世界はこの有り様だ……」


 灰の禁術機……。やっぱり、あの時。人間を滅ぼそうと思ってはいなかったんだな……。

 同じ仲間である、黒の禁術機がこう言っているのなら。確実だろう。


「……灰は覚えてなくても、俺はこいつの顔を一度たりとも忘れたことはなかった。だから、俺のかけた術で誰よりも苦しんで死んでもらうんだ!」


 ――黒の禁術機は、手で髪をグシャグシャと掻き回し、ぶつぶつと話している。
 途中から、俺に話すというよりも、自分自身の鬱憤をぶちまけているだけのようだった。

 レイドを睨み付け、過去に会った事があるといった風に話しているが――。
 俺はそれよりも、術をかけたという言葉に驚く。


「おい! お前、レイドに術をかけたのか!? 術者がいない、のに……?」


 そう、術者が見当たらない――だから、俺は……。ただ、レイドが気絶しているのだと思っていた。
 禁術機が能力を発動し、移動するには……術者が必須じゃなかったのか?


「あ~。そんなことにも、辿り着いてなかったんだ? ……まあ、もう最後だ。教えてやる。勿論、能力を使用するには、術者は必要だが――俺と白、緑は、人間を使わずとも、自分から移動することは可能なんだよ。白と緑は、一度、能力を使うと壊れちまう性質だったが。俺達は壊された後の、残留思念も強い」


 黒の禁術機は、どこか寂しそうに目を伏せている。

 なんだか、灰の禁術機の時もそうだったけど……。まるで、子供のようだ。
 苦しさや悲しみをたくさん感じ、辛くて泣き叫んでいる、子供のようなんだ。

 俺が、早く核の力を使えていれば、こんな事態にならずに済んだ?
 皆、苦しまずに済んだのか……?


「――核の力に、早く気付かなくて……ごめん」


 黒の禁術機に謝るというよりも。ぽろりと、そんな言葉が出てしまった。今、誰かに謝ったからといって……どうしようもないのは分かっているのに――。

 俺の言葉に、黒の禁術機は目を見開き。それから、俺を強く睨み付けてくる。


「ふざけんな!! そんな一言で、済むわけないだろっ! ――……はははっ! ほら、見ろ!! 漸く、術の進行が出て来たぞ?」


 黒の禁術機が、笑いながら指さした方を見ると――レイドの身体が、ジワジワと黒く染まり始めていた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神童と噂の次期公爵様がなぜか嫌われ者の俺のことを"推し"といって溺愛してくるんだが?〜そもそも推しってなんですか〜

佐藤恵美
BL
邪神の色として忌み嫌われている黒髪赤目で生まれてきてしまったルパート・アストロス。生まれながらの子供に似合わない聡明さもあって周囲から煙たがられていた。しかし、突然神童と名高い公爵家の次男から婚約者の打診が来て!?疑心暗鬼になりながらも会ってみたら目が合った瞬間に「ほんとに、推しがこの世に存在してる!!」と叫ばれて!?2人の関係は!? この世界では同性しかいなくて子供はそれ専用の魔法を使うと出来るってことで。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  さあ、他を完結させてないけど夢に出てきた設定が面白かったから書いていくぞ!お気に入り登録15くらいいったら(行くわけがない笑)続き書くかも? 追記:思ったよりも反響があったためゆっくりちょこちょこ書いていこうかなとか思ってます。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない

迷路を跳ぶ狐
BL
 自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。  恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。  しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

王子様から逃げられない!

白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

処理中です...