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60.魔力の流れを意識する ※微

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「成る程な。それが、世界の理だったのか」


 ダンジョンへと戻り。炎竜からの話を、レイドに伝えると。
 レイドは、何かを納得したような様子で、しきりに頷いていた。


「レイド。俺、核としての力を使いたいんだけど……どうすれば良いか分からないんだ。何か、知ってたりしないか?」

 炎竜にも分からないことを、他の誰かが知っている可能性は低いけど。藁にも縋る気持ちで聞いてみる。

「ヤマダ、魔力を流す時。それを意識しているか?」
「魔力……?」

 魔法を発生させる時は、どちらかというと構築する方にばかり意識を向けているから。魔力を流す時のは、なんとなくの感覚でしかしていなかった。

「俺、流す方にあまり意識を向けたことは無いな。もしかして、それが出来れば……核の力を使うことが出来るかもしれないってことか?」
「ああ、実際やってみなければ分からないが……」


 可能性があるなら、それにかけるしかないよな。

 この世界のタイムリミットも、刻一刻と近づいている筈だから――。


 魔力の流れ、か。

 魔法を発生させようと、魔力を流す。

 しかし、何度やっても。構築する方に意識が向いてしまう。


「魔力の流れを把握するよりも、構築する方にばかり意識が向いて……うまく出来ないな」
「そうか。普通は、構築の方に意識を向ける方が難しいのだが。ヤマダは魔法を弱体する為に、それに対して、ずっと強く集中していたからな。無意識に、それが優先されてしまっているのかもしれない」


 うん、めっちゃめちゃ構築に集中してたもんな~。

 ってか、言ってなかったんだけど。やっぱりレイドはそれに気がついていたんだ。


「う~ん。何とか、流れの方に意識を変えないとだよな……」


 俺がいつも見ていたディスプレイに、そんな説明はなかった。

 レイドの言うような、当たり前に出来ることだから、表記すらしていなかったのかもしれない。

 何だか……。それが出来ないというのが、凄く悔やしく思った。


「ヤマダ、すまない。後で、どんな責めも受ける」
「ん? なに、レイ――んんっ!?」


 えっ? え? 何で、いきなりキス??

 レイドに舌を絡まされ、唾液を大量に流し込まれる。


「――ん、ふぅっ! ん、んく……っ!」


 なんだ……? レイドに唾液を流し込まれる度。何だか、身体に波のようなものが引いたり押し寄せたりしているのを感じる。


「ふぅ……。――ヤマダ、俺の魔力に意識を向けてくれ」
「はぁ、は……! レ、イドの、魔力……?」


 身体に流れる魔力へと、意識を向けると。俺とは異質な魔力だからか、それをしっかりと感じ取れた。


「それが、魔力の流れだ。だいたいの流れる場所は同じだから、そこをよく覚えていれば大丈夫だろう」
「あ、ありがとう! というか、魔力って渡すこと出来たんだ?」


 レイドはキョトンとした顔をした後。直ぐ、苦笑した様子を見せる。

 え、その反応はなんだよ。


「これは、渡したのではなく。周囲の人へ『この者に、手を出すな』と牽制する為だけの……マーキングみたいなものだ。それをされた方は、他者に魔力の痕跡を残されるだけであり、その魔力を利用することは出来ない。それは、使える魔力は、自分自身のものでしか不可能だからだ」
「へ……? マ、マーキングっ!?」

 なんだそりゃ!? 犬がやる、あれだよな……?


 魔力に関しては。人それぞれ違うってのは、何となくは分かっていたから。そこまで驚かなかったが。


「ヤマダ、本当にすまない。体感するには、これが手っ取り早かったんだ。心配せずとも、2日も経てば消えるものだから安心してくれ……」

 レイドは、シュンとし。既に怒られたような表情になっている。

 え? 俺、怒るつもりないんだけど……?

「別に、怒ってない。むしろ、これのお陰で魔力の流れが分かったし……助かった」
「そうか、良かった」

 レイドは、ホッと表情を緩め。いつもの澄まし顔に戻る。

 うん、やっぱ。レイドはデフォルトの顔が一番だ。


「にしても、レイド凄いな~! 炎竜には分からないって言われたことを、可能性とはいえ、知っているなんてさ!」

 それが瞬時に思いつくだけでも、凄いと思う。

「いや、炎竜は人間が使う魔力を使うわけではなく。自然力というものを使っているから、分からずとも仕方がないだろう。俺も、自然力の詳細までは知らないから……。相手にとっても、それは同じことだ」

 あ、そういえば。前、炎竜にも人間が使わない力みたいな事を言われてたな。それのことか?

 でも、そうなら……レイドの拘束魔法はどうなってんだ?

「レイドって、炎竜が自然力で使う……拘束魔法とか使えるよな? あれは、魔力の中から消費してるのか?」
「そうだ。炎竜の力を与えられたからといっても、人間であることは変わらないからな。自然力を使うことは出来ない」


 ほうほう、成る程。これを聞いて納得いった。
 ディスプレイ上にあった、拘束魔法の説明で意味ありげに『構築する力によって』『魔力で出来ているもの』と書かれてた理由は。
 レイドの魔力で構築する拘束魔法なら、魔法防御力を上げれば弾くことが可能ということか。
 だから、炎竜の自然力で構築する拘束魔法は、魔力ではないから。魔法防御力を上げようが関係なく、当たれば確実に拘束されるんだな。
 うん、だから何だって話だけど。……てか、そこまで書いといて欲しかったわ。


「だが、あれは凄まじく魔力を消費するから、なるべくは使わないが……」

 レイドが苦々しい顔で言っているのに、俺は驚く。

 いや、いや、いやっ! 最初の頃、めちゃくちゃ使ってなかった!?
 俺のことを拘束したくて、バンバカ撃ってたよな?


 俺はそれについて、レイドに異議を唱えようと思ったが……。それよりも、自分のやるべきことを早くやらなければと、何とか気持ちを切り替え――。
 話をしている間にも、意識をずっと向けていた魔力の流れへ、更に集中することにした。


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