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51.意味も分からず、主となる
しおりを挟むんん……? 何か、スゲー身体が重い。
身体に、何かが乗ってる?
ふわふわしてるから、毛布かな。
……あれ? なんか、枕固くね?
革素材なのか、スベスベしてて気持ち良いけど……固。
『主、起きておるな?』
……え? 枕が喋った?
頭の辺りで、声がした。でも、それ以上は声が聞こえてこない。
気のせいか~と思って、また眠りに落ちそうになる。
けど、顔に光が当たっているのか眩しくて。ゆっくりと目を開けた。
「ぅ、んん……? あれ、ここ……」
キョロキョロと辺りを見渡すと、いつもの森にいるようだった。
ん~? 毛玉達、俺を寝床にしてたな?
だから、身体が重かったのかよ……。
服の中に潜り込んでいた毛玉達を、ポイポイと全て外に出す。
きゅいきゅいと抗議されたけど。俺は、ぼぅっとした頭のまま、その鳴き声を真似し、首を振った。
『ホッホッホ!! まるで、主も小動物のようじゃの』
「炎竜……? あれ? 身体が、戻ってる……」
炎竜を見ると。傷ひとつ無く、ピンピンしている様子だった。
『そうじゃ。主のお陰で、この生をまだまだ謳歌することが出来るようだの~。ホッホッホッホッホ!!』
「え?」
主? お陰……?
――ああっ!!
寝ぼけてた頭が、驚きからパッとクリアになる。
そうだった!!
あのシステムが急に起動して、炎竜を使役するとかなんとか言ってたんだよな。
え? じゃあ、俺。使役……出来たのか?
「え~と。炎竜、俺……状況がいまいち把握出来てないんだけどさ。もしかして、お前を使役してたりする?」
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使役って……心からって言ってたよな?
俺のどこに、そんな慕うような要素が……?
「俺、そんなお前に好かれることしたっけ?」
めちゃくちゃ不思議なんだけど。
『ふむ。好いた、というより……もう二度と後悔を残したくはなかったのじゃ。主から、申請が来た時は驚いたが。それも、過去に成せなかったことの罪滅ぼしの為に、承認したのじゃよ。ホッホッ! いやはや、こんな事が起こり得るなんての~! ホッホッホッホッ!!』
「え? だから、どういう事だよ……?」
炎竜って、俺と誰かを重ねてる?
過去、何かがあったんだろうけどさ。それ、俺じゃないよな?
『こんな事』ってのも、理解不能だし……。
長く生きると、回りくどい言い方になるんかな?
『まさか、ワシの傷を全部肩代わりするなんて……大それたことをしたものよ』
「へ?」
あれ……? あ、ああっ!!
そうだった。あの時、考える時間もなかったし。炎竜が助かりそうな感じのを、深く考えずに了承してたな……。
『主の、その姿を見て……。あそこにおる、赤い者がずっと泣き叫んでおったぞ?』
「……赤い者?」
炎竜が視線を向けているところへ、俺も同じように視線を向けると――――。
木の影になっていて気が付かなかったが、レイドがグッタリとした様子で伏せっていた。
俺、炎竜の存在にいくら驚いたからって。レイドの状態を忘れちゃ駄目だろ……!
レイドは、俺が意識を失う前。無理に魔力を使用しているようだったから――。
「レイド……? お、おいっ、大丈夫か!? レイドっ!!」
俺は立ち上がり、レイドの元に走って行く。
「レイドっ! レイドっ!! ……おい?」
レイドの頬に触れ。あまりの冷たさに、ビクリと身体が震えた。
え……? そんな……。ま、まさか、死――。
レイドの顔を、呆然と見ていたら。炎竜が、俺の肩を尻尾でポンポンと叩き『心配しなくとも、大丈夫じゃ』と言う。
「それって、どういう……?」
『魔力を空にしてしまったようなのでな、今は深く休眠しておるのだろう。身体の冷えも、早く魔力を増やす為。身体の機能を最小限にしておるからなのじゃよ』
レイド、俺を回復するために……。更に、魔力を使用したのか?
なんで……? 俺は、死なない可能性が高い。だから、レイドの魔力が戻るまで、放置してくれても良かったのに……。まさか、見た目の問題か……?
「俺、そんなヤバい感じだった?」
『うむ……。使い古された、ボロ雑巾のようじゃったな』
……例え方、他にないのかよ。
『――じゃが、なんだか妙な気もするの……。あの、灰色の……お主らが、禁術機と言っていたもの。ワシから見れば、本当に国を滅ぼすつもりがあったようには見えんかったのじゃ』
「……え? でも、火山を噴火させようと……してたんだよな?」
『う~む……? してたのじゃろうか? 主達が来る以前に、何度か噴火させる機会があった。なのに、何故か……。その時は、噴火をさせようとしなかったのじゃ。まるで、敢えて止めているかのように……』
灰の禁術機……。確かに、とても苦しそうだった。言われてみれば。本当は、こんなことしたくないのだと……泣いて訴えていたようだった。
『それに、あの時……。主には無理だとしても、赤い者に術をかければ良かった筈じゃ。そうすれば、世界にある国全てを滅ぼすなど、一刻もあれば容易いじゃろう』
「……中級魔術師で、極級魔術師だから。レイドが術にかかったなら……そうだよな」
紫の禁術機は、殺人衝動が個に作用するものだったが。灰の禁術機は全てを破壊したくなる衝動が起こる。もし、レイドが術にかかったなら。それで、詰みだっただろう。
でも、術者である馬鹿は、炎竜にばかり構い。紫の禁術機の時みたいに、こちらに術をかける素振りすらなかった。いま考えてみると。それは、おかしいことだと思うし……。あの噴火後に。俺は、馬鹿が喜びによって命令を止めたと思っていたが。炎竜の話を聞き。禁術機が、それを止めるように指示していたとしか思えなくなった。
それは――普通、術にかけられた者達は、術者を守るだろう。なのに、俺が馬鹿に危害を加えているのにも関わらずに、攻撃を止めるのは変だった。
あんなことをされてたんだ、きっと馬鹿は無意識にでも『自分を守れ』と命令していた筈だ。
それを、術者よりも優位性の高い、禁術機が『攻撃を止めろ』と……術にかかった者達に、指示を送っていたということじゃないのか?
俺が、あの時に。モヤモヤとした感情が湧き上がったのは……。違和感のようなものを、知らず知らずに感じていたからなのだろう――。
『これは、ただのワシ個人の見解じゃが。お主らを、待っていたんじゃないかの? 自分を、止めてもらいたかったのかもしれんな……。ワシには、そうにしか見えんかった』
俺も、炎竜と同感だ。……けど、レイドの言葉の端々からは。禁術機に、強い憎悪のような気持ちを向けているようだった。もし、俺達が禁術機に対し、庇うような言動をしたら。レイドと、揉めるような事態になる可能性もある。
だから、炎竜には。確実なことではないのなら、ここだけの話にしようと言った。すると、炎竜に『ここだけの話、なんて……2人ともに似てるの~』なんて言われて。
俺は意味が分からず。それは、どういうことなんだと聞いたが……。炎竜は、話しを流すかのように――俺が気絶した後の出来事を、矢継ぎ早に喋り始めた。
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