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48.ぶち切れて、一人キャッチボール

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「くそっ!! ヤバいだろ、これ……」


 禁術機の術にかけられた数十いる人間達は、最級魔法を使っている者が殆どであり。その中の2人程は、極級魔法をも使っていた。

 今まで、レイドしか俺に攻撃を与えることが出来ないと思っていたけど。強い魔術師であれば、それが可能だったようだ。

 何故なら、少しずつではあるが。俺の体力が減って来ているからだ。


「レイド! 大丈夫かっ!?」

 俺は、ステータスのお陰で、仮に当たってもよっぽどのことがなければ平気だろうが。レイドは、大量に当たってしまったら危ない。

「はぁっ! ……くっ! ヤ、マダ、俺の事は、気にしなくて、良い……。すまない、俺が……読み誤った」

 レイドは魔力切れを起こしかけているのか、顔色が悪くなってきている。

 最初に、拘束魔法を使ってしまったのが失敗だったのだろう。馬鹿を拘束しようと術を使用したが、周りの奴らがそれを邪魔する。
 ならばと、拘束魔法は複数人にかけることが可能だとレイドは言って。一人ずつ拘束していたが……。2人の極級魔術師が、それを回避し続けていた。
 複数の人間にかけているから当然、レイドの魔力が足りなくなり。先ほど、かけていた術が解除されてしまい。全員が再び、こちらに向かって来ていた。


 どうすれば良い……? 早く切りを付けないと、レイドが先に倒れてしまう。
 そうなれば、瞬時にこいつらの格好の餌食となる。

 チッ! あの馬鹿は、未だに炎竜に何か言ってるし……。

 あいつの持ってる禁術機を奪わないといけないのに。向かおうとすると、直ぐに数多くの攻撃を向けられ、近付くことすら出来ない。



 △▼△▼△▼△▼


「あれ~? お前らまだやってたの?? あはははは~~~っ!! 面白いなぁっ!! さっさと、くたばれよお~~っ!」

 炎竜に、何か言うのに飽きたのか。いつの間にか、馬鹿がこっちにやって来ていたようだ。


 しめたっ! 距離が近くなったからワンチャンあるかも!!

 こういう奴は、逆上させた方が扱いやすかったりする。

 一か八かやってみるか……?


「お前、本当に小心者だな? 自分で戦いもしないで、後ろでビクビクしててなぁ~?」
「は、はあっ!? お、お前!! ふざけんなよっ!! 汚い輝石のくせにっ!!!」


 馬鹿が顔を真っ赤にし、更にこちらに近付いて来た。

 おっ! 効果ありだな……? よし、この調子で――。


「――ッ!? ……えっ!?」


 急に、凄まじい噴火音が聞こえてきて。直ぐ、火山のマグマが、火柱のようになって噴き出し――こちらに降り注いで来る。


「――ひ……っ、うわっ!!?」

 あれ――ヤ……っ、ヤバい、ヤバい、ヤバいっ!!
 あんなの、当たったらドロドロに溶けるっ!!

 大量な溶岩が広範囲に降ってきていて、全てを避け切ることは出来ない――。


「ヤマダっ!!」

 レイドは青白い顔をしながら。馬鹿共も含め、俺達がいる場所を防御壁で囲んだ。

「ぁあっ! レイド! 助かった!! ……へ、平気か?」

 レイドは膝をつき。苦し気に顔を歪め、息を吐いていて――これは、もう魔力切れ寸前なのだろう。

「は、はははははっ!!! やっと噴火したぁああーーーっ!!! ざまぁ~~みろぉお~~~!! ひゃははははははーーーーーーっっ!!!!」


 ――ブッチン。

 ああ~! マジで、キレたわ。


「クッソ馬鹿野郎ーーーーーーーっっ!!!!」
「ぎゃぁあああああ~~~~~っっ!!? やめぇっ!? ひぃっ!! ぎゃああああああーーーーーーー!!!?」


 俺は、馬鹿で一人キャッチボールをすることにした。

 幸運スキルで吹っ飛ばした後。地面につく前に、また吹っ飛ばしてを繰り返す。


 ――ポトッ!


「ん?」


 その後も、馬鹿を吹っ飛ばしている最中。何かが目の前に降って来た。

 ……あっ!! これ、禁術機じゃね!?


「レイドっ!! ごめん、あの馬鹿よろしくっ!」
「ああ……」

 レイドは、スゲー嫌そうな顔をしながらも。馬鹿が地面にグッチャリする前に、キャッチしてくれた。

 まあ、その後にぶっ叩いて気絶させてたけど。


 ――ん……? そういえば、周りの攻撃が止んだな?

 術にかかっている人は、苛々した様子を見せてはいるが。フラフラとしながら、その場で立たずんでいた。

 操られている人達は、ちょうど火山が噴火した瞬間。動かなくなっていたような気がする。

 馬鹿が、命令していたのを喜びにより止めてしまったのかもしれないな。

 それは、馬鹿が術者で良かったと言うべきか。


「これが、禁術機……」


 それを手に取る……――。

 ――【バッチンッ!!】


「いっ……!?」

 いってーーーーーっ!!?
 な、なに!? クッソ痛いんだけどっ!!


 手に持っている禁術機から、バチバチと電気が俺に流れてくる。


「ヤマダ!? 大丈夫か……?」
「だ、大丈夫、ではないけど……。これ、いま俺が離したら駄目な、気がするから……我慢す、る」


 そう、いま絶対に離してはいけないと……。俺の直感が、言っている気がするから――。


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