上 下
46 / 142

46.火山周りの探索

しおりを挟む
 


 山頂を目指して山を登って行くと。途中で禁術機を追跡する機械が円状に変化し、浮いて俺達を案内してくれた。
 だから、レイドの見立て通り。この山に禁術機が居るのは間違いない。

 だが、山頂ギリギリで、機械は一帯をただグルグルと回るだけになり。なかなかそこへ辿り着けなくなった。
 道をじっくりと見渡すと――巧妙に、幻影魔法をかけられているようだった。

 レイドが言うには、それは禁術機の仕業ではなく。炎竜の術らしい。
 炎竜は、以前から人との交流を避けている様子であり。その姿を見た者は、数えられる程しかおらず。
 レイドが産まれた千年前には既に存在していたようなので。恐らく、千年以上はこのようにしてなるべく人と関わることをせず、生きていたのだろうというが……。俺は炎竜の事より、レイドの年齢に仰天してしまった。



 △▼△▼△▼△▼


「あ、あち~~~」


 ――レイドは、かけられていた幻影魔法の仕組みを何となく分かると言い。それを解いた。

 すると、術を解くまではなかった筈の道が急に現れ。機械はその道を進んで行ったので、俺達もそれに続いて歩いて行ったら――ブワァーーーっ!!と凄い熱に襲われ始めた。
 今は、ボコボコと煮えたぎる火山周りを俺達は歩いているのだが。凄まじい熱気に、肌が焼かれているようで痛い。

 しかも、禁術機を追跡していた機械が、強烈な暑さのせいで一瞬で壊れてしまった為。自分達の力で禁術機を探す羽目になっていた。


「はぁ……っ、攻撃等を軽減出来る、防御魔法を纏ってこれならば……。ここに人が居た場合、その者は禁術機の術にかかっている、と考えた方が良いだろう」

 レイドは、パタパタと服の中に空気を送るようにしていたが。直ぐに顔をしかめ、その行動を止めた。

 煮えつくような熱さである、この場所でそれをしても。更に、熱い空気を取り込んでしまっただけみたいだ。

「ああ、そっか~。灰の禁術機って、人の体力や能力を何十倍にも増やすかもしれないんだっけ?」


 レイドは、ここに着く途中で。灰の禁術機のまだ確定してはいない、能力があるかもしれないということを話してくれた。

 連結する前。灰の禁術機の術にかかり、国一つを滅ぼした者が過去にいたようだ。

 レイドがそこに向かった時には、既に国が攻め落とされていて。手を血に染め佇んでいた者を見付け、レイドは直ぐに攻撃を仕掛けた。だが、あまりにも呆気なくその攻撃に沈んだという。

 目を覚ました者を問い詰めると。気が付いた時には崩壊した国にいて、自分でも訳が分からないのだと泣き崩れていたらしい。

 そして、驚くことに。その者は中級魔法しか使うことが出来ないようだった。

 それなのに、国を落とすことが出来たということは、元の能力が何十倍にも増やされていたとしか考えられなかったのだ。

 しかし、灰の禁術機による被害はこれきりだったということに加え、当時は禁術機という存在自体がまだはっきりと認識されてもいなかった為に。それを証明することが出来ずに終わってしまっていた。

 しかし、今回のことを考えると。恐らく、レイドの予想は当たっていると俺も思う。


「そうだ、もしかすると……。その者達が、禁術機を使っている術者を守護しているのかもしれない。そうでないと、ここに居ることすら不可能だからな」
「あ~、そうか。術者は、あくまで術をかけるだけだもんな」


 そういえば、確か――。

 器物破損から家畜……そして、人にまで被害が加えられた頃に。犯人らしき者が山にいるらしい、という情報が流れたようだ。

 それで、事実確認をする為に山に入って行った人達が最初に行方不明となったという。

 だから、術者が手始めにそれらの事件を起こしておいて。山に誰かを誘い込む噂を流したと考えれば、全ての辻褄が合う。


 う~ん。そう考えると、術者はあまり戦闘能力が高くないのかもしれないな~。

 少人数だけを、山に誘導してから術にかけているみたいだし。

 まあ、ただ単に小心者なだけかもしれないけど……。



 ――ギャォオオーーーーーーッッ!!!!


「――ッ!? レイドっ!!」
「この上だ! ヤマダ、十分に気を付けてくれっ!」


 坂になっていた為、俺達からは見えていないその先の方から――悲痛に、鳴き叫ぶような声が聞こえてきた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ──────────── ※感想、いいね大歓迎です!!

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

処理中です...