上 下
43 / 142

43.面白い機能を持つ、磁石もどき

しおりを挟む
 


 △▼△▼△▼△▼


「ハートシア様。防御壁を完璧にしておりますので、ご心配には及びませんが……。どうぞ、ご確認下さい」

 ヒョロヒョロなお兄さんが、誇らしげに胸を張り。レイドに、明るい笑顔を向けているが――その目の下には、濃い隈があるので。なんだか、疲れた印象を受ける。
 レイドは、その防御壁を確認し。どこにも綻びがないのを確認出来たのか、ヒョロ兄さんに労いの言葉を掛けているようだった。

「――何か、動きは無いか?」
「はい、特には変化はございません。ただの残骸のようですが……。この禁術機が消滅するまで、囲えばよろしいのですよね?」
「そうだ。それまで、防御壁の発動を宜しく頼む」
「はい、畏まりました。お任せ下さい!」

 ビシ! とヒョロ兄さんが、レイドに向かって敬礼をした――。
 このヒョロ兄さんは。見た目とは裏腹に、元気いっぱいにレイドと話をしていた。

 だいぶ、寝てそうにはないけど……大丈夫かな?

 言葉の調子だけ聞くと、疲れているようには感じないが……。禁術機を、防御壁でずっと囲っているらしいから。神経がすり減っているのかもしれない。

 けど、ヒョロ兄さんは非常に優秀であり……。極級魔法を使える防御系の魔術師だと、レイドは言っていた。
 だから、危険な物ならば尚のこと。この人に頼みたいのだろう。

 レイドも、極・防御魔法を使用できるが。能力差は凄まじく開いているのだと、しみじみと言っていて。
 魔法で、レイドより凄い人っているんだと……。俺は、それに驚いた。


 ――それから、その兄さんとレイドは、また難しい話を初め。その内容を、俺はもちろん理解出来なかった。


 だから、部屋をじっくりと見渡して。暇潰しをすることにした。

 そういえば、ここ。前の会議室みたいなところとは、また違う感じだな~?
 なんだか、研究室のような感じに見える。

 入るところは同じだったのに。部屋に入ったら、まったく違うところで俺は驚いた。

 関係者のみに、各部屋の移動を行える権限が与えられているのかもしれないな。

 流石は、魔術塔って言うだけあるか。
 あんな一室だけの部屋じゃあ、普通のカフェと何にも変わらないもんな~。


 ――そう、俺達は今。魔術塔に来ていた。


 レイドから聞いた話だと。禁術機は、破壊されても残留思念のようなものが、少しの間残っているらしい。
 それが悪意を放ち、最後の足掻きをしたことが過去にあったという。

 だから、それをさせないために。禁術機が完全に消滅するまで、強力な防御壁で囲う手段をとっているみたいだ。

 レイドが言うには、3日くらいで跡形もなく消え失せるみたいだけど……。何だか、そこは輝石の取られたダンジョンと似ていると思った。


「ヤマダ、すまない。待たせてしまって」

 おっ! やっと、終わったか~!!

 自分が分からない内容の話とかを、周りがポンポンと会話していると、虚しくなったりするよな?

 何だか、仲間外れ……みたいなさ~。

 まあ、これは大事なことだし、仕方がないんだけどな。


「おう! もう、良いのか?」

 なんか、あのヒョロ兄さん……。まだまだ話したそうに、こちらに熱い視線を向けて来てるんだけど?

「ああ、問題もないようだからな。後は任せても大丈夫だろう……」

 ヒョロ兄さんは、また誇らしげに胸を張ってる。

 なんか、あの人、面白……――ん?

「なあ、レイド。ちょっと聞いて良い?」
「なんだ?」

 俺は、あのヒョロ兄さんの後ろにある禁術機に……少しだけ違和感を覚えた。

「別に大したことじゃないんだけど、あれって前のと色が違う?」


 前に見たのは。確か……赤色だったような?

 今、ここにあるのは――紫色であった。


「禁術機には、名前に色がつけられているだろう? ただ、闇雲に名付けられた訳ではなく。それぞれの色により、そう呼ばれている」

 あっ! そうか~!! 少し考えれば、分かることだったわ。

 名前にある、後ろの内容にばかり目がいってて、色がつけられてるのを深く考えてなかった。

「確かに、そうだったな~! ちゃんと考えずに聞いて、悪かった」
「いや、それは俺がしっかりと説明をしていないからな。ヤマダが分からないのは当たり前だ。昔から、人に説明をするのが、どうも苦手でな……」

 ああ~……。うん、それは知ってる。

 レイドって、俺が質問をしないと説明を始めることすら、しないことが多いしな~。
 それでも、聞けばそれなりには答えてはくれるから、今のところは大丈夫だけど。

「ははっ! それは否定出来ないな。まあ、疑問に思った時には、俺がその都度聞くから。そん時はよろしく~」

 少し、ショボンとしたレイドがコクリと頷いていた。

 えぇ……? 俺が否定しなかったから、ショック受けちゃった?
 レイドって、けっこうメンタル弱いな~。

 そうだ、ついでに次の禁術機に関する情報も聞いておくか?
 その話題を振れば、レイドも意識がそっちに向くだろうし。


「レイド。さっそく、教えて欲しいことがあるんだけど……。他の禁術機は、何処の場所にあるんだ?」


 俺がそう聞くと。レイドは、少し困ったような顔をした。


 ん? レイドのこういう表情は珍しいな。

 なんか、問題でもあったのか?


「実は……。一切、禁術機の磁気を捉えることが出来ないようだ」
「えっ? マジか。じゃあ、その情報待ちって感じか?」

 すると、レイドが懐から何かを取り出した。

「いや、今回からは俺が直接探す方が早くなるだろう。その頼んだ者達でも探せない距離というならば、ここからだと一年程かかるような場所に、禁術機があると考えて良い。だから、これを貸してもらった」
「んん? それ、磁石、か……?」

 レイドは、U字の磁石のようなものを俺に見せてきた。

「これは、前に話した禁術機を探す機械だ」

 えっ? 機械じゃなくね……? それ、磁石だろ?
 俺、もっとでっかい機械みたいなの、想像してたんだけど。

「え、え~と……。それを使うって、どうやって?」
「普段は、この形だが。禁術機の磁気を捉えると、円状になり、そこの場所まで案内してくれる」

 へぇ~。なんだか、面白い機能だな!

 これを使って。あの忍者の格好した人は、禁術機のある場所を探してくれてたのか。

 探す方法は入手したけど。一年程もかかる場所にある、禁術機を探す方法って……空間魔法だよな?

 それを使うと、魔力の消費が激しいって前に言ってたから。きっと、何度も使えないんじゃ……?

「レイド、探すのって空間魔法を使うよな? 大丈夫なのか?」
「実は、場所の目星はついている。ここ最近になり、頻繁に事件が多発している国がある。まずは、そこへ向かおう。街に着いたら、情報収集から始めなければならないが……」

 おお~! レイド、よく調べてるな~。

 ん? いや、マジで……。いつ、情報収集してんだ?
 俺、いつも一緒にいるけど……。そんな素振り、一切見かけなかったぞ?

 ん~……。まあ、古代魔術師っていうくらいだから。普通の人とは、出来が違うんだろうな。うん、そういうことにしておこう。


 随分と長居してしまったのを、ヒョロ兄さんに詫び。俺達は、魔術塔を後にした――――。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

弟の可愛さに気づくまで

Sara
BL
弟に夜這いされて戸惑いながらも何だかんだ受け入れていくお兄ちゃん❤︎が描きたくて…

目覚めたそこはBLゲームの中だった。

BL
ーーパッパー!! キキーッ! …ドンッ!! 鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥ 身体が曲線を描いて宙に浮く… 全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥ 『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』 異世界だった。 否、 腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

処理中です...