ダンジョンの核に転生したんだけど、この世界の人間性ってどうなってんの？

31.俺には、理解出来ない遊び

　


「クッソ変態があああーーーーーっっ！！！！」
「ぐはっっ！！？」

　起きて早々。何の加減もしていない極級魔法を、レイドに撃つ。

「ゴホッ！　ゴホッ！　……ヤ、ヤマダ？　どうしたんだ？」

　1年間一緒にいて。こいつは極級魔法を一発二発食らっても死なないくらい、強い魔術師だろうとは思ってはいたけどさ……。
　まさか、これを食らっても咳き込むだけかよ！　色々と化け物な野郎だなっ！！

「『どうしたんだ？』じゃねーーっ！！　お前、変な術を使うの止めろっ！　マジでふざけんなっ！！　あの術、一体なんなんだよ！？」

　俺は、おもいっきり睨み付ける。

　昨日も、結局。ずっと激しくバコバコされまくり。でも、なんかレイドが悲しそうにしていて……。だから、余計に俺はそのまま抵抗しなかった。
　けど、よく考えたら。こいつが変な術を使ったから、抵抗という抵抗が出来なかったんじゃないかと思うんだ。

　すると、レイドは意味が分からないというようにポカンとした顔をしていた。

「術……？」
「とぼけんなっ！　気持ち良くなる術だよ！」
「ああ、回復魔法を変異させたものか？　昨日は、それは使用していないが……」
「は？　え、だって。えぇ……？　う、嘘つくなよっ！　昨日、すげー気持ち良く、て」

　こいつ、術の変異まで出来んのかよ？　マジ、意味わかんね～……。

「ああ、良かった。俺が術を使わずとも、ヤマダは凄く気持ち良かったんだな？　愛している、ヤマダ……」

　俺が呆然としていると、ガバリ！！　とレイドに強く抱擁される。

　俺は、レイドを引き剥がすことも出来ない程に、ショックを受けてしまっていた。

　あ、あんな恥ずかしいことを俺、いっぱい言って……。


　俺がウンウン唸っていると、急にレイドはサッと後ろを振り向き。俺から身体を離し、立ち上がった。
　それから、手を差し伸べてきたので……。いきなり、なんだ？　とレイドを呆然と見上げていたら――親指でクイッと、ダンジョンの入り口を指してきた。


「――そろそろ、出発せねばならないようだ」
「え？　ああ、成る程」

　そこを見ると。忍者っぽい格好をしている人が、申し訳なさそうに立っている。

　なんか、この世界の人達の格好ってさ……あからさま過ぎじゃね？



　△▼△▼△▼△▼


「ええ！　そうだったのかっ！？　変な技名とかも、特に意味なし？」

　道すがら。レイドから聞いた事実に、俺は衝撃が走った。

「ああ。この世界に勇者とか、そういう者は存在しない。ダンジョンに行く時に、チームを招集し。その仲間に呼ばせるだけの、名称というだけだ。恐らく、技名に関しても、ゲームをしてるような遊び感覚なんだろう」

　ゲームねぇ……。だから、あんな気味の悪い技名を叫んだり。勇者、僧侶、商人とか、バリエーション豊富だったのか。

　正直、この世界は魔術師で成り立ってるから、本当にそれを不思議に思っていたんだ。

　けど、一応。ステータスにも、物理系の攻撃力や防御力とかもあるし。剣に魔法を纏わせて攻撃する技もあるから、そういうものかと思っていた。

　ただ、それで攻撃力は高くなるが、魔法を纏わせるのには魔力を大量に消費する。だから、結局は直接撃った方が早いってのもあって、俺は一度もそれを使った事はない。

「ふ～ん。じゃあ、あの忍者の格好した人も、そんな感じか？」
「あれは、あの者が属している組織の制服だ」

　えぇ～。あの人、可哀想。

「この1年間。お前、ダンジョンに行ってなかったし。そんなシステムがあること自体、知らなかった……――お、ここ？」
「ああ、そうだ」


　俺達は、ダンジョンを攻略する為にチームを組む場所――ギルド【連鎖陽】の建物の前に着いた。