ダンジョンの核に転生したんだけど、この世界の人間性ってどうなってんの?

未知 道

文字の大きさ
上 下
27 / 144

27.脳内変換するなよ

しおりを挟む
 


 早朝に、変態――改め、レイドと俺は一緒に魔術塔へと向かった。

 そこに向かう途中。心の中でずっと変態と呼んでいたせいで、ついついそう言ってしまったのだ。

 すると、レイドは道のど真ん中で膝を付き。動かなくなった。

 通行人がめちゃめちゃこっちを見てコソコソしてるし、終いには『あれって、ハートシア様じゃね?』みたいな声も聞こえてきて……レイドは凄い注目の的になっていた。

 遂には、俺の方を見ながら『あの人が原因なのかな?』 とか言われ始めたので、慌ててレイドと呼びまくったら何事もなかったように動き出した。

 確かにそう言った俺も悪かったけどさ、流石にこれは無いだろうとクッソ呆れたわ。



 △▼△▼△▼△▼


「へ~。よく、変た――コホン、レイドが行ってたの知ってたけど……ここが魔術塔だったんだ? 普通のカフェかと思ってた」


 そう、ごくごく普通のカフェにしか見えない。

 俺が輝石の時に、レイドが頻繁に足を運んでいたところなのだが。
 知り合いのような人に、資料のようなものを受け取って。それに目を通し、一言二言その相手に話していただけだったから、あまり気にもしていなかった。


「ああ、表向きはな。今日はこの奥に用がある」
「ん……? スタッフルーム?」

 従業員入り口のような扉の前に、俺達は止まっていた。

 すげ~! 大きな組織の本部って、こういうふうに隠されてるもんなんだな~。


「お待ち下さい」


 レイドがその取っ手を掴んだ時に、後ろから声を掛けられた。


「……なんだ?」
「ハートシア様、その隣の方はどなたでしょう? 関係者以外はご入室出来ないことを……。勿論、ご存知ですよね?」


 従業員らしき男が、こちらに歩み寄って来ていた。


 うわ~なんか、感じ悪いな。

 言っていることは確かに正しいけど。この従業員は、あからさまに小馬鹿にするような態度を取っていたのだ。


「今、何が起こっているのか分かっているだろう? それを解決することの出来る者だ」
「さあ? ハートシア様が何をおっしゃっているのか……。とにかく、関係者以外は立ち入り禁止ですよ~?」


 え? こいつ、何様?

 レイドは、魔術塔の人達に救われたとか言ってたけど……マジでか?

 そんなこと、してくれそうに見えね~けど?


「ああっ! そうか!! 風のうわさで聞きましたよ? ハートシア様は、輝石に愛を囁くようになりボケが始まったとかなんとか……。まあ、確かに。お年ですからね~?」


 ブッチン!!


「俺、レイドのパートナーだから! はい、すっげー関係者!」
「ぎゃぁああーーーーーーっ!!?」

 あ、ヤベ、吹っ飛ばしちまった。

「あ~~……。あれ、どうしよ……ぐえっ!!」
「ヤマダっ!!!」

 何故だか、レイドにギュウギュウと絞め技を食らう。

「うぐ、苦し……っ! 苦しいんだけど!?」
「ああ、すまない! あまりにも、ヤマダが可愛いことを言うから……。そうか、妻、か」
「はぁ?」

 ニコニコ輝くような笑みを浮かべているレイドを、俺は呆然と見上げた。

 は? 妻……?? なんで、『パートナー』から『妻』に脳内変換してんの? 仕事の相棒、みたいな意味で言ったんだけど? ……にしても、ボケたや年だとかって言われた本人がなんで怒らねーんだ。

 未だ、絞め殺すレベルで抱きついてくるレイドに『妻、違うわボケ!』(レイドは、まったく聞こえていない様子)と言って必死に剥がそうと踠いていたら、ひっくり返った従業員とたまたま目が合い。化け物を見るような目をされて怯えられた。

 なんか、ムカついたから睨み付けると。悲鳴を上げられ、逃げられた。は? 失礼じゃね?


 それから、へばりつくレイドを何とか引き剥がし。

 俺達は、その扉の中へと入った――――。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神童と噂の次期公爵様がなぜか嫌われ者の俺のことを"推し"といって溺愛してくるんだが?〜そもそも推しってなんですか〜

佐藤恵美
BL
邪神の色として忌み嫌われている黒髪赤目で生まれてきてしまったルパート・アストロス。生まれながらの子供に似合わない聡明さもあって周囲から煙たがられていた。しかし、突然神童と名高い公爵家の次男から婚約者の打診が来て!?疑心暗鬼になりながらも会ってみたら目が合った瞬間に「ほんとに、推しがこの世に存在してる!!」と叫ばれて!?2人の関係は!? この世界では同性しかいなくて子供はそれ専用の魔法を使うと出来るってことで。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  さあ、他を完結させてないけど夢に出てきた設定が面白かったから書いていくぞ!お気に入り登録15くらいいったら(行くわけがない笑)続き書くかも? 追記:思ったよりも反響があったためゆっくりちょこちょこ書いていこうかなとか思ってます。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない

迷路を跳ぶ狐
BL
 自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。  恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。  しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

王子様から逃げられない!

白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

処理中です...