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10.話の通じない人と、会話はしたくない

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「この闇を照らし、光の粒よ――ひっ!? ま、まだ詠唱中であるのに、なんと姑息なっ!! うわっ! ひぃ!? え、えっ? これは、最級魔法……? 何故、ダンジョンの核ごときが? ひぃいっ!? まっ、待ってくれっ! うわああっ!!?」
「はい、はい、はい~! 頑張って避けてね~! ちゃんと、調整はしてやってんだからさ~」

 はっ! はっ! は~~~っ!! マジで面白いわ!!
 ピョンピョン跳ねて、逃げてて。こいつ、サーカスのピエロみたいなんだよな~!

「ゼェ……ゼェ……ゼェ……っ! こ、この、悪の核めが!! いつか、必ず……お前を討ち滅ぼしてみせるっ!!」
「はいはい~! 頑張ってね、サヨウナラ~~!!」
「ぎゃあああああーーーーーっっ!!?」

 なんか、ピエロが捨て台詞吐いて、出口まで走って行ってたから。ついつい近付いちゃったら、そのまま外まで吹っ飛んで行った。

 はははーー!! これぞ、ダイナミック退出だなっ!


「はあ~……。つか、いつまで続くのこれ?」

 アドレナリンが切れると、いつもこう思うんだ。
 俺って、寿命あるのかな? ってさ。

 だって、何の楽しみもなく。いつまで、ここに居なきゃいけないんだか、不安になるんだよ。こっから出れね~から、余計にだろうけど……。

 前世と、何が変わったかって言ったら。魔法が使えるようになったことの一つだけだし。

 容姿は、ぶっちゃけ期待してたんだ。

 だって、異世界転生ってさ。凄い、美男美女になってた~! っていうの、友人に見せられてたのに多かったし。そうだったりして……? みたいな。

 だから、極級魔法で氷柱を造り出して。それを削いで鏡にすることにした。

 しっかり完成するまでは見えないように、それにスモークだってかけてたんだ。

 だいぶ時間はかかったが、完成し。ワクワクドキドキしながら、いえ~い!! って鏡を見たら――まるっきり転生前の俺だった。

 一瞬のうちに、鏡を粉砕してしまったよ。


 まあ、こんな洞窟内じゃあ、仮に美男子でも意味ないかと思い直しはしたけどさ~。



 ――ゾワワワッ!!


「うっ!? 奴だなっ!!」

 そいつの、いつもの挨拶が飛んで来る。

「マジでさ~! いい加減に、諦めてくんないかな~~っ!!」

 俺のさっきまでいた場所に、最・拘束魔法が放たれていた。

「ヤマダこそ……。いい加減、俺の気持ちを受け入れて欲しい。無駄な時間を使ってしまっているのに、何故、気付かない……?」

 こいつ、馬鹿なのか……?

「嫌に決まってんだろ! だったら、こんなまどろっこしい事せず、攻撃でも何でもすりゃいいだろ? 多分、そっちのが早いと思うけど~?」

 変態が懲りもせずに。またこっちに、それを放って来る。

「もし、それでヤマダが怪我でもしたらどうする……? そのような危ないことなど、出来ない」

 馬鹿だな。うん、こいつ馬鹿だ。

「あのさ~前から思ってたんだけど……。お前、なんで俺のこと好きになったんだ……? 惚れさせること、俺したか?」

 本当に、意味が分からないんだよな~。

 最初は。俺が、変態をダンジョンの外までほっぽり出したのが、惚れた原因かと思ったけど……。

 だったら……。初見から、拘束魔法だけしか撃たなかったのはおかしいからな。


「ヤマダは、最高に可愛い。きめの細かな白い肌も、くりくりとした大きな目も、小動物のような小さな鼻も、さくらんぼのように赤い唇も、小ぢんまりした背丈も。全てが可愛らしく、愛おしい」

 はあああっ!!? 誰も、好きなところなんて聞いてねーぞ!!
 しかも、小ぢんまり……。俺が、凄い気にしてるところをついてきやがったな~~っ!!

「お前、ムカつく!! 馬っ鹿やろぉおーーーっ!!」

 ここの世界の奴は、話が通じないというのが。今回さらに確信した。
 だから、こいつの事を知ろうと話しかけるなんて、絶対っ! 絶ーー対っ!! に、もうしてやるもんかっ!!!


 ――そして、いつも通り。魔力切れを起こした奴を、ダンジョン外へとポイっとした。


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