8 / 142
8.この変態は、俺がめちゃくちゃ好きみたい
しおりを挟む「ヤマダっ!! 怪我はないかっ!?」
え……? マジかよ……。
俺も馬鹿ではない。攻撃魔法を自分に撃ったけれど、核部分は避けていた。
俺との距離を考えると、変態は魔法を使わないとそれらを防ぐことは出来ない。
俺の事を好きだと言っているから、魔法を使い撃ち落とすだろうと思ってはいたが……。
まさか、俺の放った極級魔法を、変態が同じく放った極級魔法で、全て撃ち落とされるとは思っていなかった。
こいつ……。一体、何者だ?
実は、こいつが普通に使っている拘束魔法というものは、魔法の中で極めて難しく。俺であっても使うことが出来ない。
それは魔法の中でも、また別格と言われている程のものであり。攻撃魔法とはまた違うもので、新しい魔法ともいわれている。けど、詳しくは未だ分かっていないようだった。
だから、それを使える時点で只者ではないだろうことは思ってはいたが……。
まさか、それも――。
「な、何故、自分に向かってそのような事を……?」
あ、やべっ! 考え事してるうちに、また近付いて来てたわ。
「分かんねーとか、アホか……? お前の拘束魔法を消すために決まってんだろーがっ!」
そう、拘束魔法はとてつもなく難しいものであるので――それを発動している間にも、常に魔力を使い。もし、他の魔法を出してしまうと、それが解除されてしまう程に繊細な魔法でもあるのだ。
「てかさ、ちょっと聞きたいんだけど……」
「なんだ……?」
俺は、変態から距離を取って警戒しながらも。気になったことを聞こうと、話を振った。
「お前、もしかして……。極・拘束魔法を使える?」
こいつは、さっき極級の攻撃魔法を使っていた。
それで、拘束魔法で極級を使えるなら……。マジで、警戒しなければならない。
「ああ、使えるが。それがなんだ?」
「――ッ!! お前っ! 何で、それを使わなかった!?」
こいつ、何なんだ!?
やばい、やばい、やばい!!
極・拘束魔法は、存在自体を全て縛りつける。
対象の身動きは勿論のこと。目線の動きや、声を出すこと、呼吸を行うことさえも、術者の許可なくしては機能が出来なくなる。
最・拘束魔法だったなら。それより能力値の高い、俺のような極級魔術師の魔法であれば、発動し使用する事も可能だけど……。極・拘束魔法なら、それすらも行えない。
もし、こいつがそれを使っていたなら。どう足掻いても、逃げる事は出来なかっただろう。
だから、何故。こいつは、それを使わずにいたのかが不思議なのだ。
「もし、それをしたら……ヤマダが苦しくなるだろう?」
「はあ……?」
苦しい? 確かに。術にかかった一瞬は、とてつもなく苦しいと思うが。直ぐに、こいつが許可を出せば良いだけの話だ。
まさか……。それが嫌で、ずっと最級しか使わなかったのか?
技のスピードだって、桁違いに違うというのに――?
「あ~! あ~! 分かった、分かった。もう、マジで警戒しまくるわ。お前、次はねぇ~からな?」
多分、こいつは極級は使わないだろう。
俺が、一瞬の苦しみを感じるのが嫌なくらい。何故だか知らないが、俺の事をめちゃくちゃ好きみたいだからな。
そして、それからは――――。
俺は、またいつも通り。変態の拘束魔法を避けまくり。魔力切れを起こした奴を、ダンジョンの外へと放り出した。
32
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる