混じり合い淘汰されるモノ

未知 道

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危機

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 様々なツイーグルが現れては、逃げ、現れては、逃げを繰り返す――。

「はぁ、はぁ……! エスエ!! 一体、どこに行けばいいの……!?」

 私達の話が、ツイーグルに伝達されているのか。どこに逃げようが、見つけ出されて集中砲火を受ける。

『以前のことがあるから……。きっと、皆も警戒しているんだ。一先ず、人里離れた場所に身を隠そう』
「以前のことって……――前いた星の、変異体のこと?」
『そう。その変異体と、シュリルっていう生物が共に……ツインを滅ぼそうとしたんだ。けど、ツインのみを滅ぼすのが出来ないと思ったのか、星のあらゆる自然を壊し回った。それで、生物が住める星じゃなくなって……』

 ――それが、この地球にツインが来る大きなキッカケになった……ということだろう。

(そのシュリルって生物には悪いけど……。そちらの星の事情は、そちらで解決して欲しかった。難しくても、共存的な何かを作るとかね)

 正直、地球から誕生した生命でもないツインが、地球を乗っ取ろうとするのが図々しいと思ってしまう。
 もし、私達の行いのせいで。先の未来、地球が滅びることになったとしたら……。例え、移住できる星があったとしても、私は移住したくない。
 だって、そんなにボロボロになるまで地球をいじめ抜いた私達が、最後に見捨ててさようならなんて……酷すぎるだろう。特に、その星に生命が存在しているなら余計に、このツインのように人間が侵略者となるのだ。

 だから、地球が滅びるなら――私は共に滅びる道を選ぶ。

 きっと、そういう考えを持っているから……。ツインに嫌悪感を抱いてしまうのだろう。
 自分達が生きるためには、他者を犠牲にしても仕方ないと思える人ならば。ここまでの憤りは感じないのかもしれない。

「じゃあ、その教訓を生かして……。私達は自然を壊し回ることは駄目ね。何とかして、ツインのみを滅ぼさないと……」

 でも、ツインのみを滅ぼすなんて……出来るのだろうか?

 もし、可能性があるなら。科学者、または化学者が生存していないとだ。だって、一般人に研究なんてのは到底無理な話だろう。


『――海だ』
「え? 何?」

 エスエは、いま気がついたとばかりに、ポツリと呟く――。

『海! 僕らの星には、海はなかった! もしかしたら、存在しなかったものに対しては耐性……――いや、海に耐えられる生体ではないから、あの星に僕らが存在することが出来たのかもしれない』

 確かに。その星に適している生体が誕生するのは、至極当然だが。

 だからといって、それで海の塩水が弱点になるなんて……安直過ぎないかと思った。

 けど……――。

「やってみる価値は、あるね……」

 ツインを巻きながら、近くのスーパーに寄れるかと思考を巡らす。

 それは、スーパーには海からとれる【岩塩】などがあるからだ。



 ♢◆♢


(し、失敗した……。ヤバい)


 ――今、普通の人間の姿に戻っている。

 逃げている最中。エスエに『早く、隠れられるような場所へ!!』とずっと言われてたけど。
 ツイーグルから逃げるのと、なんとかしてスーパーに立ち寄れないかと必死で考えていたから、理由は流し聞いていた。

 エスエが言っていた、その理由が……――『時間制限のある変身だから』という大事なことだったようだ。


「どのくらいのクールダウンで、変身出来る?」

 小声で、エスエに聞く。

『変身っていうか、同調のが正しいよ――……えっと、1時間くらい』

 エスエも、コソコソと話す。

(同調? まぁ、言い方はどうでもいいが……。1時間か、長すぎる)

 唯一の救いは、ちょうど追っていたツイーグル全てを巻き終えていたことだ。じゃないと、即刻死亡だったろう。
 あの鹿のような脚は、住宅街のような入り組んだ場所に適していた。鹿は、凸凹の障害物がある森の中であっても俊敏に動き、150センチもある柵を跳び越える程の跳躍力がある。だから、車やその他の障害物があろうとピョンピョンと逃げ回れたのだ。

 それが無い今、下手に動くことは出来ない。

 寂れた路地裏で、どうやって時間を凌げるかと考える。でも、いくら考えても……この状態で1時間もの間を生き残れる想像が出来なかった。
 だって、いつツイーグルに見つかってもおかしくない路地裏に居て。見つかったのが、たった一人のツイーグルだとしても……生身の人間では即、殺されて終わりだろう。

 こんなのは、無理難題だ。自分が、エスエの話を流し聞いたせいだと、悔やむ――。


「見つけた」

 聞き慣れた声が、後ろから聞こえてきた。

 ――まさか……と。その声の方へ、顔を向けようとした。

「……ッ!」

 振り返るより早く。ガシリと腕を掴まれ、後ろ手に固定される。

「あ~あ……。本当、面倒だよな」

 後ろを見ると、予想通り。茜が退屈そうな表情で、私を見下ろしていた。


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