混じり合い淘汰されるモノ

未知 道

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『――さあ、君も今すぐツインしてみないか!?』

 鮭を頬張った時。テレビから、耳がタコになるほどに聞き飽きたCMが流れる。

「あ~あ、私もツイン欲し~なぁ。ねぇ、お父さ~ん」

 私の向かいにいる妹のあかねが、自分の隣に座る父をチラリと見て声を掛けた。
 この猫なで声は、きっとおねだりするつもりだろう。

 先週。茜は、次の休みにはお父さんを攻略してゲットするぜ! と息巻いていた。今日が、その決戦の日なのだ。

「何言ってんの。いま使ってる従来のケータイで十分でしょ! 機能だって、そんな変わりないじゃないの!」

 ――しかし、母がそれをズバッと遮る。

「もうっ! お母さんは黙っててよ~! 友達みんな持ってるんだからね! 話が合わなくなって、もしハブられたらどうすんの!?」
「そんな友達は、友達とは呼べません!」

 茜と、お母さんはいつものように喧嘩する。これも、見飽きた光景だ。

鈴鹿すずかを見習いなさい! 欲しいなんて、言ったことないわよ!!」
「はぁ!? お姉ちゃんは、普通じゃないの! 変わってる人と、比較しないでくれる!?」

(……なんだって? 普通じゃないなんて、酷いじゃないか……)

 ――と思ったが。喋るのが億劫で、ただひたすら食事を口に運ぶ。

 CMにある【ツイン】とは、新型のケータイ電話だ。
 お母さんの言ったように、使い方は特に変わりはない。
 だが、従来のものと大きく変わってることが一つ。
 ツインという名の通り――自分だけのパートナー的存在となるのだ。

 なんだそれ~? と思うだろう……? そう、当初。世間もそんな反応だった。
 けど、面白半分で先頭を切る者は必ずいる。
 それで、その概要が明らかになった――。

 自分の【好みの人】が夢に現れるようだ。
 本当に、ドンピシャらしい。
 しかも、相手が自分にぞっこんだという。

 そんな馬鹿なことあるか、じゃあ試してやるよ! といった人々が瞬く間に増え。この売れ行きや、未だ人気が衰えないことから考えるに、それが事実だったのだろう――。


「分かった。買いに行くか……。茜、鈴鹿、準備しなさい」
「えっ!? ちょっと、あなた……!」
「やったぁ~!! お父さん、ありがとー!」
「……はぁ(めんどくさ)」


 ――かなりの時間を待たされ。手に入れたツインを見ても、なんの感動も湧かなかった。

 普段からケータイを弄らないというのもあり、ツインを買ったことをすっかり忘れて。その日、眠りに落ちた。


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