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清水 あかり ⑲
しおりを挟むヒュンッ!! と風を切る音が鳴り、未来達がすっ飛び。未来は『ぅきゃぁああーーー!?』と悲鳴を上げていたが、すぐに聞こえなくなった。
(……あ、そうだ。此処って地球じゃないから。結構、飛んでく距離あるかも……)
私が、今使用した僧侶の力は――【冥界の扉へと飛ばす】ものだから、私がこの異界から力を使用しても問題はないが……。
ただ、冥界の扉は地球の近くにある。
地球からなら、あっという間だけど。地球と此処がとても離れた場所であるならば、かなりの距離を飛んでいくことになるのだ。
(ごめん、未来……)と心の中で謝っていると、エダイが『あれは、酷いわねぇ……』と言い、皆が飛んでいった天を見上げていた。
【さて、全てが終わったのなら――この箱庭を壊しましょう。……とはいっても、既に原動力は流されていなかったから、崩壊を始めてはいるけれど】
確かに、周囲にはパラパラと細かい粉のようなものが降っている。
『……でもよ、この女はどうすんだ?』
ずっと黙り込み、成り行きを見守っていたトクが。親指で私を指す。
――途端に、全員が私に視線を向けた。
未来が此処にいたからこそ、この者達はあそこまで簡単に引き下がったのだと私は思っていた。
今、未来はいない。ならば、きっと……――私は殺され、苦しみながら、永遠に何処かをさ迷うことになるだろう。
『わたクシが道に沿ッテ、地球マデ送りマスヨ☆』
「えっ……?」
他の者達も――『道は、まだ生きているから』『けど、少し壊れているからエダイに修復してもらって……』『道はそのまま地球に置いていても、箱庭がなくなるなら問題はないか?』『元は地球にいたから、平気でしょうね』などと話し出した。
私はそれが信じられず、ポカンと話し合っている者達を凝視していたら――。
ストーラは私の顔を見て、怒ったように腰に手を当てた。
『あレ、もシカシて……。気高い、わたクシ達がソの場限りノ【嘘】をつイタと思ってマシタ? わたクシ達、嘘が一番キライなのノデース!』
「え、あっ……。ご、ごめん……」
ぷりぷりと怒るストーラに謝っていると、他の者達が私の近くに――鴇 美智瑠を連れてきた。
しかし、エダイに抱えられるようにされていて。一言も話さずに大人しくしているから、意識はないみたいだ。
【貴女は、薄々分かっていたかもしれないけど。鴇 美智瑠は、此処の箱庭と地球を繋ぐ道なのよ】
ミンの言葉に、納得する。
人間じゃない姿に驚き、遠ざけてしまったが。よく考えれば分かることだ。
私は、此処へと連れて来たのが鴇 美智瑠だということには行き着いていた。ならば、連れて来れるとしたら、送り返すことも高い確率で可能だろう。
目の回る展開に、知らず知らず考えが浅くなっていたようだ。
【白い子が、道を破壊しようとしていたみたいね。でも――それのお陰で、破壊出来なかったみたい。貴女のお陰よ】
「それは……」
この世界に来て直ぐ。鴇 美智瑠に渡したホッカイロ。ミンは、それのお陰だと確信して言っている。
特異な力を持っている私の物を『授けた』という形になり、【守護符】のような役目をこなしていたということかもしれない。
私がふとした気持ちで渡した物が、自分を助けることになったのか――。
『でハ、道が開イタ事ですシ。行きマスヨー!』
「……ッ!」
――グワッと、抱え上げられる。
ストーラは、いつエダイから受け取ったのか。右腕に鴇 美智瑠を抱えており、左腕に私を抱え上げていた。
私達の前に、何かがぶら下がっているのに気付き。まさか、これが道か……? と唖然とする。
『道が開いた』というより、ただ縄のような物が正面にぶら下がっているだけだった。
『わたクシが送る事に感謝シて下さいネ! 箱庭に落ちルノハ簡単でスガ、地球に帰るノハ……――こノ縄を登ラないト、帰れナイのデ☆』
「え……登る? ぅっ、きゃぁあああーーーっ!?」
ビューーーンッ!! と凄まじい勢いで上に進んでいく。
未来にしたことを、自分に返されるとは……。これが、因果応報だろうか?
『モ~う、ウルさいデース!』
――その声を最後に、目の前が真っ白になった。
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