その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

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清水 あかり ⑯

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『ちょット、ちょット!! それハ、絶対に駄目デス! こンナ奴ら、ずット苦しムべきナノニ、なんデ一緒に逝くトカ……!』
『そうだ、意味わかんねぇ。たいした理由もなく、自分を苦しめるだけ苦しめた奴らだぞ? 許しなんて必要ねぇだろ。ってか、猫どうすんだ! 猫は!! 助けるべきは、そっちの方だろ!?』

 ずっと沈黙していたストーラとトクは、激昂したように未来の言葉に反論する。

『海は、大丈夫だよ。ほら……――』

 ――海は、元の綺麗な白猫に戻っていた。

『未来ちゃん、……ずっと僕に力を与えてくれてたの?』

 海は、もう強く憎悪する気持ちが消え失せていた。

 未来が『生まれ変わることが出来るようになった』といった辺りから、形が戻っていたのだ。

 だから、ずっと憎悪に囚われていたせいで感じられなかった――未来から流れてくる暖かな力に、やっと気付けたのだろう。

『うん……。だって、海も私と一緒に生まれ変わってくれないと……また来世で会えないでしょ?』

 未来が、そう言葉に出した途端。海が腕の中に飛び込んできた。

『未来ちゃん、僕……生まれかわっていいの? いっぱい、悪いことしたんだ』
『それは、私が背負っていくよ』

 未来は再び、クラスメイト達を視界に入れる。
 自分が背負うべきものだというように――。

『おい、だからっ――』
【トク、もう止めましょう。見苦しいわよ】

 トクの言葉を、ミンが遮る。

『……チッ! じゃあ、俺達……何のためにここまでしたんだよ!! なぁ!?』
『この子が、当初に決まっていた消滅ではなく。生まれ変われるなら――次こそは、アタシ達の【我が君】となってくれるのではないかしら? それだけでも、こうした価値があるんじゃない?』

 腑に落ちないといったトクに、エダイが諭すように言う。
 それを聞き、トクは一度二度口を開いたが。脱力したようにため息をつき、黙り込んだ。

『わたし達にとっては、刹那なもの。気長に待ちましょう』

 バブルは、やれやれといったように、肩を竦めていた。

『ふむ……。そう上手くいかぬのも、また一興』

 クネチは、触手で器用にハートマークを作っている。

『ボクもぉ、ちゃんと待ってるよぉ~ん』

 ガァッピは、黄色いアヒルになっていて、笑いが収まったようだ。

『……わたクシモ、いいデスヨ。でモ……――清水 あかりハ、此処に置イテ行きまスカラ。こンナ人間ヲ、地球に置イテおくノハ、危険デス。特に、【我が君】とナル人物が生まレ変わるナラバ、余計ニ』

 ストーラは、これは譲れないといったようにハッキリと断言する。

 確かに、自分でもそう思う。私の力は、人間に留まらず、地球にとっても良くないものなのだから――。


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