その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

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清水 あかり ⑮

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 私の持つ巫女の力である【神降ろし】も、普通とは変わったものだった。

 巫女とは、神を自身の身体に降ろし『神のお告げを伝える』ことの出来る存在だ。そして、神々へ奉仕し、人々にその信仰を伝える役目を与えられている。

 しかし、私の場合。神を身体に降ろした瞬間――【生き神】にしてしまう。要するに、お告げを伝えるだけではなく。私の身体を使い、自由に動き回ることが可能なのだ。
 そんなのは、通常であれば人間の身体が耐えられないが。私は、過去の祖先による試みの賜物か、可能であった。
 神が、私の体内に長期的に留まれば、私の持つ霊力や生命力を全て吸収することにより。本来の姿になると同時に、本当の【生き神】となれる。

 だが、これは……式神と同じく。地球で行ってはならないものだ。
 別の次元で生きる強力な存在を、無理に引っ張り込むことは、元ある形を崩すことになるからだ。

 それによって、すぐにではなくとも地球が徐々に衰退していき――結果、滅びを迎えることとなる。




 ♢◆♢



 巫女舞の最中。邪魔が入るかと思ったが、特に動きはなく。あえて見逃してくれているようだ。
 それに、ホッとしながら舞を続けていく……――。


 ――未来は、多分。私が以前、言っていたことを覚えてくれていた。

 私は、未来に【陰陽師、巫女、僧侶】の力を使うことが出来ると伝えたことがある。凄い! と感動したように言われたので、なんだか嬉しくなり『巫女舞をして。身体に、霊とか神様だって降ろせるんだよ』などと、私は、詳しいことを省いて言ったのだ。

 だから、この場所に私を呼んだのは――きっと、未来なのだろう。
 この状況を見て分かる。未来は自分の声を、海に伝えたいのだ。
 ただ、ここまで力を消耗をしていて、よく私を此処に呼べたなと思う。強制的に誰かを呼ぶのは、結構な力が必要だ。今の未来では時間もかかったはず。
 それで今、非常にギリギリの状態だろう。
 私があの状態で助かったのは、たまたまタイミングよく、未来が私を呼ぶことが出来たということで……。要するに、運が良かったということなのだ。


 ――暫くして、【巫女舞】を無事に終えることが出来た。
 そして、身体の主導権を……未来に渡す。

『――海』
『……ッ! ミライ、チャン?』

 私の口が勝手に開き、未来の声が発せられる。

『あかりちゃんを呼んだの、私なんだ。驚かせちゃってごめんね。でも、海……。ずっと、ずっと、伝えたかったことがあるの……――ごめんね。私のせいで、そんな辛い思いをさせて……そんな姿にさせちゃって……』
『……チッ、チガウ、チガウ、チガウ……ッ!! オマエハ、ミライチャンジャナイッ! マヤカシダ!!』

 海は、そうは言っていても。戸惑っているように、ユラリユラリと身体を揺らしていた。

『海は、とっても賢いもの。私だって……分かってるでしょ?』

 ピタリと、海の動きが止まる――。

『…………ソンナ、ソンナ……ダッテ。ソレジャア……――ボクノセイデ、ミライチャンガキエチャウッテ、ホントウナノ?』

 ブルブルと液体化した身体を震わせている海は、泣いているようだった。

『違うよ、海のせいじゃない。私が、決めたことなの。これは、誰のせいでもないよ』
『……ッ、デモ……デモ……!』

(未来、聞こえる? 大丈夫だよ、未来は消えない。私の身体に留まって、それで生きて――)

 今、未来を私の身体に降ろしたことによって、未来の【願い】はキャンセルされた。
 それは、まだ完全な神ではないにせよ。私の身体に降ろされたことによって、再び存在を確立することが出来たのだ。
 更には、未来を私の身体にこのまま留めれば――。人間として生きることだって、出来る。

 そう出来るのも、未来が『完全な神でない』のと『強力な存在』ではないからだ。
 元々、地球という星で生まれた存在であるなら。地球にその存在が留まっていても、勿論、滅びることだって無い。

『駄目。あかりちゃん、それは駄目だよ。あかりちゃんは、ちゃんと生きて――私の分まで』

 強い声。そうしないと、絶対に許さないといった芯のある声だった。

(未来、でも……。それだと、未来は――)

『私は、あかりちゃんのお陰で、生まれ変わることが出来るようになったって……。なんだか、不思議と分かるんだ。私……また、人間として生まれ変われるんだよ。だから……――皆と一緒に、逝こうと思うの』

 未来が動かす、視線の先には――リリの糸に括られている、悲惨な姿のクラスメイト達がいた。


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