その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

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清水 あかり ⑭

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「……私に、助けさせて」
『フザケルナッ! ミライチャンハ、モウタスカラナイ! オマエタチノセイデ、キエチャウンダッテキイタ!! ダカラ、ミライチャンガキエルマエニ、オマエタチヲコロシタノヲミセテ、シアワセニワラッテモラウンダ!』


(『オマエタチノセイデ』ってことは。やっぱり、海は知らないんだ。未来が消えそうになっている原因を――)


『――どコニ、行ってシマッタのかと思っタラ、こンナ所にいまシタカ……』
「――ッ!!」

 トーンを落とした静かな声が、私の耳に入る。
 その声のする方へ振り向く――。

 ストーラ、エダイ、バブル、ミン、トクが何とも言えないといった、雰囲気や顔をしていた。

 そして、恐らくは。エダイとミンが話していた――【クネチ】、【ガァッピ】らしき者達もいる。


【……一体、どうやって此処に来たのかは分からないけど。勝手に動き回られては困るのよね】
『う~ん、なんか引っ掛かるのよねぇ。近くにいたアタシからすると……。この子が、何かしたとは思えないのよ』

 ミンが、怪訝な顔をしており。
 エダイは、不思議そうに首を傾げている。

『チッ! おい、もう形はどうでもいい。さっさと殺っちまおうぜ!』
『……そうね。最悪、逃げられることだってあるわ』

 トクは、早く終わらせようといった風であり。
 バブルも、それに同調する。

『教育的しどぉお"お"お"ーー!! ……あれ? 出ないな?』
『グァゲゲゲッ! グァア"ゲゲゲッッ!!』

 何度も、2本の触手をクネクネと動かす教師のような男。
 とても楽しそうに笑っている白いおまるのアヒル。
 以前聞いた、話の特徴から――クネチ、ガァッピの順だろう。


「一つ聞きたい。あの子――海に、なんて伝えたの? なんで、未来が消えるって言ってるの……? 違うよね?」

 私がそう言うと、トクに鼻で笑われた。

『あのよ、別に間違えじゃねぇよな? てめぇらが消すようなもんだろ?』
「全然、違う……。海の湧き上がる憎悪を見てから、未来が消えようって決断したのを知らないなんて……それほど辛いものは無いよ。もし、知っていれば――」
『――ウソダ! ウソダ! ウソダ! ウソダ! ウソダ! オマエハ、ウソツキダッ!!』

 海は、ほとんど液体となった身体をバチャバチャバチャバチャと激しく暴れているようにして。必死に、私のところへと這ってくる。

 キィーンと耳鳴りが聞こえ――。

 《世の中、必要な嘘というものはあるのよ。知らなければ良かった、というね。どちらにせよ、青城 未来は決断してしまった。だから、消えてしまうのは確定なの。なら、少しでも。その白い子は、楽に消滅させてあげたいじゃない。己を無くした悪霊となって、意味もなく消えるのではなく。復讐もできて、貴女達を憎みながら消えられれば――真実を知るより、まだ心は救われるわ》

 私の頭の中に、ミンの声が響く。
 ミンの力によって。直接、声を伝達して来たようだ。

 ミンの言いたいことは、分かる。けど、それでは……あまりに哀れではないか。
 海と未来の想いが。最期の最期まで、すれ違ってしまうなんて……――。

 だから、この緊迫感の中。神様を招くための儀式【巫女舞】を踊り――私の中に『青城 未来』という神を降ろすことにした。


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