50 / 56
清水 あかり ⑭
しおりを挟む「……私に、助けさせて」
『フザケルナッ! ミライチャンハ、モウタスカラナイ! オマエタチノセイデ、キエチャウンダッテキイタ!! ダカラ、ミライチャンガキエルマエニ、オマエタチヲコロシタノヲミセテ、シアワセニワラッテモラウンダ!』
(『オマエタチノセイデ』ってことは。やっぱり、海は知らないんだ。未来が消えそうになっている原因を――)
『――どコニ、行ってシマッタのかと思っタラ、こンナ所にいまシタカ……』
「――ッ!!」
トーンを落とした静かな声が、私の耳に入る。
その声のする方へ振り向く――。
ストーラ、エダイ、バブル、ミン、トクが何とも言えないといった、雰囲気や顔をしていた。
そして、恐らくは。エダイとミンが話していた――【クネチ】、【ガァッピ】らしき者達もいる。
【……一体、どうやって此処に来たのかは分からないけど。勝手に動き回られては困るのよね】
『う~ん、なんか引っ掛かるのよねぇ。近くにいたアタシからすると……。この子が、何かしたとは思えないのよ』
ミンが、怪訝な顔をしており。
エダイは、不思議そうに首を傾げている。
『チッ! おい、もう形はどうでもいい。さっさと殺っちまおうぜ!』
『……そうね。最悪、逃げられることだってあるわ』
トクは、早く終わらせようといった風であり。
バブルも、それに同調する。
『教育的しどぉお"お"お"ーー!! ……あれ? 出ないな?』
『グァゲゲゲッ! グァア"ゲゲゲッッ!!』
何度も、2本の触手をクネクネと動かす教師のような男。
とても楽しそうに笑っている白いおまるのアヒル。
以前聞いた、話の特徴から――クネチ、ガァッピの順だろう。
「一つ聞きたい。あの子――海に、なんて伝えたの? なんで、私達のせいで未来が消えるって言ってるの……? 違うよね?」
私がそう言うと、トクに鼻で笑われた。
『あのよ、別に間違えじゃねぇよな? てめぇらが消すようなもんだろ?』
「全然、違う……。海の湧き上がる憎悪を見てから、未来が消えようって決断したのを知らないなんて……それほど辛いものは無いよ。もし、知っていれば――」
『――ウソダ! ウソダ! ウソダ! ウソダ! ウソダ! オマエハ、ウソツキダッ!!』
海は、ほとんど液体となった身体をバチャバチャバチャバチャと激しく暴れているようにして。必死に、私のところへと這ってくる。
キィーンと耳鳴りが聞こえ――。
《世の中、必要な嘘というものはあるのよ。知らなければ良かった、というね。どちらにせよ、青城 未来は決断してしまった。だから、消えてしまうのは確定なの。なら、少しでも。その白い子は、楽に消滅させてあげたいじゃない。己を無くした悪霊となって、意味もなく消えるのではなく。復讐もできて、貴女達を憎みながら消えられれば――真実を知るより、まだ心は救われるわ》
私の頭の中に、ミンの声が響く。
ミンの力によって。直接、声を伝達して来たようだ。
ミンの言いたいことは、分かる。けど、それでは……あまりに哀れではないか。
海と未来の想いが。最期の最期まで、すれ違ってしまうなんて……――。
だから、この緊迫感の中。神様を招くための儀式【巫女舞】を踊り――私の中に『青城 未来』という神を降ろすことにした。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
リューズ
宮田歩
ホラー
アンティークの機械式の手に入れた平田。ふとした事でリューズをいじってみると、時間が飛んだ。しかも飛ばした記憶ははっきりとしている。平田は「嫌な時間を飛ばす」と言う夢の様な生活を手に入れた…。
焔鬼
はじめアキラ
ホラー
「昨日の夜、行方不明になった子もそうだったのかなあ。どっかの防空壕とか、そういう場所に入って出られなくなった、とかだったら笑えないよね」
焔ヶ町。そこは、焔鬼様、という鬼の神様が守るとされる小さな町だった。
ある夏、その町で一人の女子中学生・古鷹未散が失踪する。夜中にこっそり家の窓から抜け出していなくなったというのだ。
家出か何かだろう、と同じ中学校に通っていた衣笠梨華は、友人の五十鈴マイとともにタカをくくっていた。たとえ、その失踪の状況に不自然な点が数多くあったとしても。
しかし、その古鷹未散は、黒焦げの死体となって発見されることになる。
幼い頃から焔ヶ町に住んでいるマイは、「焔鬼様の仕業では」と怯え始めた。友人を安心させるために、梨華は独自に調査を開始するが。
『忌み地・元霧原村の怪』
潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。
渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。
《主人公は和也(語り部)となります》
アポリアの林
千年砂漠
ホラー
中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。
しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。
晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。
羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる