その罪＋罰＝身をもって贖う

海 ②

　


　未来ちゃんが外から帰って来た。

　――でも、その日は何だか様子がおかしかった。

　いつも、未来ちゃんは帰宅すると、慌てたようにお風呂に入る。それで、出てきてから。僕の首元に顔を埋めて、ぎゅっと抱きしめてくるんだ。

　けど、今日は誰かが一緒で。しかも、未来ちゃんを激しく罵倒する声が聞こえて来た。

　玄関には近付かないようにしていたけど、そんなことは言っていられない。

　慌てて玄関に行くと……――未来ちゃんは、男の人にのし掛かられていた。

　――未来ちゃんを守らなきゃっ！！

　僕は、男の人に飛びかかった。
　でも……。気づいたら、息が吸えなくなっていた。

　苦しいとか、痛いとかより。未来ちゃんの悲痛な泣き声が聞こえて、それが心配で心配で仕方ない。

　しかし、暫くして……意識が暗転してしまった――。



　♢◆♢



　許さない！　許さない！　許さない！　許さない！　許さない！　許さない！　許さない！　許さない！　許さない！　許さない！　許さない！　許さない――――……。

　未来ちゃんを、酷い目に合わせたアイツを――絶対に許さないっ！！


　未来ちゃんは、死んでしまった。アイツに、殺された。

　僕の魂が身体から抜き出る、少しの間。意識が途切れた、その一瞬。

　未来ちゃんの命を、踏みにじられた――。


　未来ちゃんは、悲しくて悲しくて泣いている。
　死にたくなかったはずだ。
　未来ちゃんは、いつも言っていた。死んだ両親の分まで、いっぱい生きるんだって。精一杯、生きるんだって……そう言っていたんだ。


　復讐してやる。絶対に、許さない！　許さない！！　許さない！！！　許さない！！！！

　けど、僕が復讐出来る力を得るには、かなりの時間を要する。

　何年も何年も憎悪を溜めなければ、人間を殺すことは出来ない。せいぜい、ビビらせるくらいしか今は出来ないのだ。

　中途半端な状態では。簡単なお祓いをされてしまった場合であっても、消滅してしまう。

　だから、下手に動けない。
　でも、許せない。本当に、許せない。

　未来ちゃんは、とっても、とっても、優しい人間だった。
　誰よりも、幸せになるべき人間だった。

　なのに、アイツは……そんな未来ちゃんの笑顔を奪ったんだ。
　今すぐにでも、苦しめて、苦しめて、苦しめて――生まれてきたことを後悔させてやりたい。

　そう怒りに震えていた時、声をかけられた。
　この世界の者ではない存在達に――。