その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

文字の大きさ
上 下
44 / 56

清水 あかり ⑫

しおりを挟む
 


『で、どう始末つける? こいつで最後だ。パァーと派手にいくか?』
『んン~。セッかくナラ、わたクシが作ったソレを活用シテ欲しいデス☆』

 ストーラにそう言葉を返され。トクは、ああ~と言い。カチャカチャとゲームパッドを弄くった。
 少し、怪我をしている様子の賀川は、意味もなく屈伸運動をさせられている。

『ん、そういや。お前が、もう一つ持ってたボタンみてぇの……何だったんだ?』
『ァあ、ソウでシタ! 【エダイ】さん、ボタンを下さイナ~!』
『ボタン? ん~と……。あっ、コレね?』

 私が制服の腰ポケットに入れていたボタンを、エダイに取り出されてしまった。
 エダイは、そのボタンを投げ。ストーラは、パシッと綺麗にキャッチをした。

『ふフふ、良いシメというノハ、原因とナッタ者達で終ワラせるものデース☆☆』

 ポチッとボタンを押される。
 すると、地面からヌルリと何かが複数、盛り上がって来て……――それらが何なのかを理解し、呆然とする。

「ぇ……。み、んな……」

 身体に刺された穴が無数にあり、特に顔がズタズタになった――竹内 凜々花。
 身体の全ての骨が折れ、グニャグニャになった――田中 兼次。
 身体が溶けて肥大し、ドロドロになった――白川 尊。
 身体が2つに千切れ、挽き肉のようになった――石田 孝。

 こんなの、普通は死んでいるはず。
 だが、皆は呻きながらも身体をズリズリと引きずり、酷くゆっくりと私の方へ向かってくる。


「な、なんで……。こんなの、おかしい……」

 魂を留める――身体という【器】が壊れてしまったなら、その内に収められていた魂は強制的に弾き出されてしまうはずなのに……。

『おお、すげぇな! コイツらを呼ぶボタンだったんか。ってか、本当コレどうなってんだ? 死んでるのに、死んでねぇって……ずっとこのままかよ?』
『はイッ! コノ世界にハ、魂の逃げ場ナンテありマセンからネ~!』

 魂の逃げ場が無い。ならば、ここで死んだ人間は……一体、どこに行くのだろうか。

『――ことわりカラ離れテ、ずット苦シメばイイ』

(理……? ああ、そういうこと、ね……)

 その『理』とは、私達が生きていた場所――【地球の理】のことだろう。そして此処は、地球とは離れた【異界】だ。
 しかし、離れたといっても、そんなに遠くまで離れた場所だとは思わなかった。此処に来た感覚的には、あっという間の時間に感じたからだ。
 だが、ストーラの言い様では、地球と此処はとても離れた場所であるということだ。

 個には個のいるべき場所がある。そのレールから少し外れただけのズレであれば、自動修正されるが。大きく外れた場合、元の場所に戻ることは出来ない。
 もし、そうなったならば。ずっと、永遠に、ただ揺蕩たゆたうしかないのだ。今ある姿のまま、痛みを感じたそのままで……――。
 そんな、辛く、苦しいことが途方もなく続くならば……死んだ方がマシだろう。


「ぐぐが、がが……だずげ……」
「あ"がり"~、だじゅげでぇ"え"ぐれ"ぇ"え"え"」
「い"だい"、い"だい"の"ぉ"お"……」
「がら"だが、おがじい"……おがじい"………」


 痛みに呻き、踠く。人間と言えなくなったような、悲惨な姿のクラスメイト達。

 ――これは、私の罪だ。

 私が、きっかけを与えてしまった。
 そのせいで、皆が心に秘めていたことを行動に移すことになってしまった。
 そして、行ったことの歯止めも利かなくなった。


『あァ! そウダ。コいつモ、仲間に入レテあげマスネ☆』

 パチンッ! ストーラが指を鳴らすと、ずっと黙っていた賀川が「ぅ、ぁ"あ"……」と呻き声を上げた。

 そして、賀川が私を視界に入れ――怒声を浴びせた。

「お"ぉ"、ま"え"ぇ"……! ぞんな"力を"持ってだならぁ、なん"でぇ"え"、未来を助げながっだぁ"あ"あ"あ"ーーーーー!!!」

 賀川は、私の使用した能力全てを、まるで見ているかのように話している。意識はなかったはずだが、その間の記憶はされているようだ。
 そして、賀川に『何故、助けなかった』『見殺しにしたのか』『人殺し』と、何度も何度も責められた。

【あ~……。自分のことを棚に上げてよく言うわ――青城 未来を殺したのは、あんたのくせに】

 成り行きを見守っていたミンといった者が。つい言葉に出てしまったといった風に、嫌悪感を露に言葉を発する。

「え……?」

(賀川が、未来を殺した? どういうこと……?)

「ぞ、ぞれ"は……!」

 キョロキョロと忙しなく動く、賀川の目。
 ――その激しい動揺が、ミンに言われたことが真実だと物語っていた。

「ただ、な"ぎ払っただげで……殺ずづもり"は無がっだ!! で、でも"、あ"がり"の、ぞの力があ"れば……っ!」
「……私の力は、死者の蘇生は出来ない」
「ぞんな"、嘘を"づぐな"ぁ"あ"あ"ーー……」
『あァ~! ウルさいデース!! モぅ、お前は黙っテロ☆』

 パチンッ! 白タイツが指を鳴らしたと同時に、賀川が黙った。
 だが、賀川の目は私を捉えているから、ちゃんと意識はあるのだろう。

 賀川は、分かっている。私が死者を生き返らせることなどは出来ないということを。
 きっと、自分を守る為に当たりたいが欲しいのだ。だから、それを私に定めただけなのではないか。

 けど、そうされても……私は賀川に反論出来ない。
 私も、同じく。未来を殺すことに加担した『人殺し』だから――。


【貴女は、自分の力のせいでこうなったと思ってるようだけれど……違うわよ】
「え? そんなはずは……」
【私には、心の成り立ちがの。貴女が、そう願わなくても……――この者達は、結局はそうしていた。だから、なんの引け目もなく、残虐な行為を起こせたのよ。十分、心当たりがあるでしょ?】

 未来を見捨てた、白川 尊。
 未来の裸の写真を取った、竹内 凜々花。
 未来を無理やり己のモノとした、賀川 剛。
 未来が苦しんでいるのを楽しんでいた、田中 兼次。
 未来を使って金儲けをした、石田 孝。

 そうだ。私が能力を使っても、個々の意識をコントロールまでは出来ないと――だから、そんな行為を選ぶだなんて……と。私は、あり得ないものを見る目で皆を見ていたのだ。
 未来が亡くなってからも、ずっと――。

【まぁ……。貴女は正直、とばっちりのようなものね。可哀想だけれど、僅かでも関わっているのは事実。それで、一緒に此処に呼んだのよ】

 ミンに、憐れみの眼差しを向けられる。

『【ミン】ちゃん☆ソろソろ、お話ハ宜しいデスカ~?』
【あ! ごめん、ごめん。もう、いいわよ】

 待っていましたとばかりに、ぞろぞろと私に近づくクラスメイト達。

 その10の手が私の顔に向けられ、視界が真っ黒に染まり。そして……ドプン、と下へ落ちていく――……。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いつもと違う日常

k33
ホラー
ある日 高校生のハイトはごく普通の日常をおくっていたが...学校に行く途中 空を眺めていた そしたら バルーンが空に飛んでいた...そして 学校につくと...窓にもバルーンが.....そして 恐怖のゲームが始まろうとしている...果たして ハイトは..この数々の恐怖のゲームを クリアできるのか!? そして 無事 ゲームクリアできるのか...そして 現実世界に戻れるのか..恐怖のデスゲーム..開幕!

オカルト嫌いJKと言霊使いの先輩書店員

眼鏡猫
ホラー
書店でアルバイトをする女子高生、如月弥生(きさらぎやよい)は大のオカルト嫌い。そんな彼女と同じ職場で働く大学生、琴乃葉紬玖(ことのはつぐむ)は自称霊感体質だそうで、弥生が発する言霊により悪いモノに覆われていると言う。一笑に付す弥生だったが、実は彼女には誰にも言えないトラウマを抱えていた。

二人称・短編ホラー小説集 『あなた』

シルヴァ・レイシオン
ホラー
普通の小説に読み飽きたそこの『あなた』 そんな『あなた』にオススメします、二人称と言う「没入感」+ホラーの旋律にて、是非、戦慄してみて下さい・・・・・・ ※このシリーズ、短編ホラー・二人称小説『あなた』は、色んな"視点"のホラーを書きます。  様々な「死」「痛み」「苦しみ」「悲しみ」「因果」などを描きますので本当に苦手な方、なんらかのトラウマ、偏見などがある人はご遠慮下さい。  小説としては珍しい「二人称」視点をベースにしていきますので、例えば洗脳されやすいような方もご観覧注意、願います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

終焉の教室

シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

熾ーおこりー

ようさん
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞参加予定作品(リライト)】  幕末一の剣客集団、新撰組。  疾風怒濤の時代、徳川幕府への忠誠を頑なに貫き時に鉄の掟の下同志の粛清も辞さない戦闘派治安組織として、倒幕派から庶民にまで恐れられた。  組織の転機となった初代局長・芹澤鴨暗殺事件を、原田左之助の視点で描く。  志と名誉のためなら死をも厭わず、やがて新政府軍との絶望的な戦争に飲み込まれていった彼らを蝕む闇とはーー ※史実をヒントにしたフィクション(心理ホラー)です 【登場人物】(ネタバレを含みます) 原田左之助(二三歳) 伊代松山藩出身で槍の名手。新撰組隊士(試衛館派) 芹澤鴨(三七歳) 新撰組筆頭局長。文武両道の北辰一刀流師範。刀を抜くまでもない戦闘の際には鉄製の軍扇を武器とする。水戸派のリーダー。 沖田総司(二一歳) 江戸出身。新撰組隊士の中では最年少だが剣の腕前は五本の指に入る(試衛館派) 山南敬助(二七歳) 仙台藩出身。土方と共に新撰組副長を務める。温厚な調整役(試衛館派) 土方歳三(二八歳)武州出身。新撰組副長。冷静沈着で自分にも他人にも厳しい。試衛館の弟子筆頭で一本気な男だが、策士の一面も(試衛館派) 近藤勇(二九歳) 新撰組局長。土方とは同郷。江戸に上り天然理心流の名門道場・試衛館を継ぐ。 井上源三郎(三四歳) 新撰組では一番年長の隊士。近藤とは先代の兄弟弟子にあたり、唯一の相談役でもある。 新見錦 芹沢の腹心。頭脳派で水戸派のブレインでもある 平山五郎 芹澤の腹心。直情的な男(水戸派) 平間(水戸派) 野口(水戸派) (画像・速水御舟「炎舞」部分)

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...