その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

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清水 あかり ⑫

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『で、どう始末つける? こいつで最後だ。パァーと派手にいくか?』
『んン~。セッかくナラ、わたクシが作ったソレを活用シテ欲しいデス☆』

 ストーラにそう言葉を返され。トクは、ああ~と言い。カチャカチャとゲームパッドを弄くった。
 少し、怪我をしている様子の賀川は、意味もなく屈伸運動をさせられている。

『ん、そういや。お前が、もう一つ持ってたボタンみてぇの……何だったんだ?』
『ァあ、ソウでシタ! 【エダイ】さん、ボタンを下さイナ~!』
『ボタン? ん~と……。あっ、コレね?』

 私が制服の腰ポケットに入れていたボタンを、エダイに取り出されてしまった。
 エダイは、そのボタンを投げ。ストーラは、パシッと綺麗にキャッチをした。

『ふフふ、良いシメというノハ、原因とナッタ者達で終ワラせるものデース☆☆』

 ポチッとボタンを押される。
 すると、地面からヌルリと何かが複数、盛り上がって来て……――それらが何なのかを理解し、呆然とする。

「ぇ……。み、んな……」

 身体に刺された穴が無数にあり、特に顔がズタズタになった――竹内 凜々花。
 身体の全ての骨が折れ、グニャグニャになった――田中 兼次。
 身体が溶けて肥大し、ドロドロになった――白川 尊。
 身体が2つに千切れ、挽き肉のようになった――石田 孝。

 こんなの、普通は死んでいるはず。
 だが、皆は呻きながらも身体をズリズリと引きずり、酷くゆっくりと私の方へ向かってくる。


「な、なんで……。こんなの、おかしい……」

 魂を留める――身体という【器】が壊れてしまったなら、その内に収められていた魂は強制的に弾き出されてしまうはずなのに……。

『おお、すげぇな! コイツらを呼ぶボタンだったんか。ってか、本当コレどうなってんだ? 死んでるのに、死んでねぇって……ずっとこのままかよ?』
『はイッ! コノ世界にハ、魂の逃げ場ナンテありマセンからネ~!』

 魂の逃げ場が無い。ならば、ここで死んだ人間は……一体、どこに行くのだろうか。

『――ことわりカラ離れテ、ずット苦シメばイイ』

(理……? ああ、そういうこと、ね……)

 その『理』とは、私達が生きていた場所――【地球の理】のことだろう。そして此処は、地球とは離れた【異界】だ。
 しかし、離れたといっても、そんなに遠くまで離れた場所だとは思わなかった。此処に来た感覚的には、あっという間の時間に感じたからだ。
 だが、ストーラの言い様では、地球と此処はとても離れた場所であるということだ。

 個には個のいるべき場所がある。そのレールから少し外れただけのズレであれば、自動修正されるが。大きく外れた場合、元の場所に戻ることは出来ない。
 もし、そうなったならば。ずっと、永遠に、ただ揺蕩たゆたうしかないのだ。今ある姿のまま、痛みを感じたそのままで……――。
 そんな、辛く、苦しいことが途方もなく続くならば……死んだ方がマシだろう。


「ぐぐが、がが……だずげ……」
「あ"がり"~、だじゅげでぇ"え"ぐれ"ぇ"え"え"」
「い"だい"、い"だい"の"ぉ"お"……」
「がら"だが、おがじい"……おがじい"………」


 痛みに呻き、踠く。人間と言えなくなったような、悲惨な姿のクラスメイト達。

 ――これは、私の罪だ。

 私が、きっかけを与えてしまった。
 そのせいで、皆が心に秘めていたことを行動に移すことになってしまった。
 そして、行ったことの歯止めも利かなくなった。


『あァ! そウダ。コいつモ、仲間に入レテあげマスネ☆』

 パチンッ! ストーラが指を鳴らすと、ずっと黙っていた賀川が「ぅ、ぁ"あ"……」と呻き声を上げた。

 そして、賀川が私を視界に入れ――怒声を浴びせた。

「お"ぉ"、ま"え"ぇ"……! ぞんな"力を"持ってだならぁ、なん"でぇ"え"、未来を助げながっだぁ"あ"あ"あ"ーーーーー!!!」

 賀川は、私の使用した能力全てを、まるで見ているかのように話している。意識はなかったはずだが、その間の記憶はされているようだ。
 そして、賀川に『何故、助けなかった』『見殺しにしたのか』『人殺し』と、何度も何度も責められた。

【あ~……。自分のことを棚に上げてよく言うわ――青城 未来を殺したのは、あんたのくせに】

 成り行きを見守っていたミンといった者が。つい言葉に出てしまったといった風に、嫌悪感を露に言葉を発する。

「え……?」

(賀川が、未来を殺した? どういうこと……?)

「ぞ、ぞれ"は……!」

 キョロキョロと忙しなく動く、賀川の目。
 ――その激しい動揺が、ミンに言われたことが真実だと物語っていた。

「ただ、な"ぎ払っただげで……殺ずづもり"は無がっだ!! で、でも"、あ"がり"の、ぞの力があ"れば……っ!」
「……私の力は、死者の蘇生は出来ない」
「ぞんな"、嘘を"づぐな"ぁ"あ"あ"ーー……」
『あァ~! ウルさいデース!! モぅ、お前は黙っテロ☆』

 パチンッ! 白タイツが指を鳴らしたと同時に、賀川が黙った。
 だが、賀川の目は私を捉えているから、ちゃんと意識はあるのだろう。

 賀川は、分かっている。私が死者を生き返らせることなどは出来ないということを。
 きっと、自分を守る為に当たりたいが欲しいのだ。だから、それを私に定めただけなのではないか。

 けど、そうされても……私は賀川に反論出来ない。
 私も、同じく。未来を殺すことに加担した『人殺し』だから――。


【貴女は、自分の力のせいでこうなったと思ってるようだけれど……違うわよ】
「え? そんなはずは……」
【私には、心の成り立ちがの。貴女が、そう願わなくても……――この者達は、結局はそうしていた。だから、なんの引け目もなく、残虐な行為を起こせたのよ。十分、心当たりがあるでしょ?】

 未来を見捨てた、白川 尊。
 未来の裸の写真を取った、竹内 凜々花。
 未来を無理やり己のモノとした、賀川 剛。
 未来が苦しんでいるのを楽しんでいた、田中 兼次。
 未来を使って金儲けをした、石田 孝。

 そうだ。私が能力を使っても、個々の意識をコントロールまでは出来ないと――だから、そんな行為を選ぶだなんて……と。私は、あり得ないものを見る目で皆を見ていたのだ。
 未来が亡くなってからも、ずっと――。

【まぁ……。貴女は正直、とばっちりのようなものね。可哀想だけれど、僅かでも関わっているのは事実。それで、一緒に此処に呼んだのよ】

 ミンに、憐れみの眼差しを向けられる。

『【ミン】ちゃん☆ソろソろ、お話ハ宜しいデスカ~?』
【あ! ごめん、ごめん。もう、いいわよ】

 待っていましたとばかりに、ぞろぞろと私に近づくクラスメイト達。

 その10の手が私の顔に向けられ、視界が真っ黒に染まり。そして……ドプン、と下へ落ちていく――……。


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