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清水 あかり ⑩

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(よく分からないけど、2人の世界に入ってくれるから……また助かった)

 あの者達の、砕けた口調に、態度。
 長く共にいる仲間なのかもしれない。

 ――でも、恐らく。三度目はないだろう。


「逃げ道は……。何か、ヒントでもあれば――」

 バシュンッ!!

「――えっ!?」

 式神【紅狼】が、消滅したと伝達が来た。
 災厄である【紅狼】は、言うことを聞かない為。あそこに残り、思うままに戦闘していたはずだが……。
 まさか、消滅するとは――。

 式神が消滅するのは、初めから分かっていた。

 神は神でも。あくまで、式神として降ろし、存在する神だ。
 あの者達と戦闘になれば――100%の力を出せる【神に近しい者】と、1%の力を出す【災神】では、前者の方が強いに決まっている。


『あら、可愛いお嬢さんじゃないの~! 凄いわね~、あんなモノを呼び出せるなんて!』

 野太いオネェ声が、背後から聞こえ。バッと振り向くと――閻魔大王のような風貌をした者が、店員のような制服を着ている。

【まぁ、確かに凄いけど。地球にとっては、かなり危険な力よね。なんで、こんな人間を作ったのかしら?】

 アニメの女の子のような声が、その閻魔大王の近くで発せられた。

 よく見ると、閻魔大王の胸ポケットにはスマホが入っていて。胸ポケットから半分だけ見えている画面には、つぎはぎだらけの顔が映り、こちらを覗いていた。
 今にも飛び出そうな目が、じっと私を凝視している。

(あと、どれくらい居るのよ……)

 神に近しい存在達。一人でも、難しいのに……。こんなに居ては、無事に逃げきる確率は0に等しい。


『リリちゃん! 今よぉ~ん!』
「――……ッ!?」

 身体がクンッと強く引っ張られ、地面に倒された。
 目を凝らして見ると、私の身体中にはピアノ線が絡まっている。繋がっている場所を辿ると――。
 私が向かおうとしていた道から、繁華街にたくさん蠢いていたマネキンの1人がガクガクと歩いて来ている。
 そのマネキンは頭にピンクのリボンを付けていて、指には私の身体に絡まっているピアノ線が繋がっていた。

『ダンスゥウ! ダンスゥウ"ウ"ーーー!!』
『あ、リリちゃん。ダメよ』
『ェエ~……(ショボン)』

 バチバチバチと電流を流したが、マネキンはケロッとしている。全く効いていないようだった。

『アタシのマネキンに、ソレは効かないわよ~! アタシが物質で一から作った後に、魂を込めたものだからね。形は違うけど、貴女と同じく。生きているものと変わらないわ』
「えっ……? そんな……」

 当初マネキンを見た時。ゾクゾクとした感覚がしたのは、背後にいるこの者達の気配を感じていたからだったのか……――。


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