その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

文字の大きさ
上 下
40 / 56

清水 あかり ⑧

しおりを挟む
 


(コレだけでも、奪うことが出来て良かった――……)

 手に持つ、ボタン。
 黒い渦がグルグルと纏っていて……。コレからは、嫌な予感がビシビシと感じる。

 トクという男が出したショベルカーは、どこかから借りたか、コピーしたような物質だったが。
 白タイツの出した、あのゲームパッドや、このボタンは……霊力で作り出した物だ。

 だから、私には――コレがどんなに凄まじい悪意を持って作られたのかが、理解出来た。

 絶対に、私を亡き者にするといった……そんな強い憎悪が込められているのだ。


(……やっぱり、この状況は――未来と何か関係がある)

 当初。私だけならば、特異な能力を持った私を食べることで、異形の者が力を増そうとしているのかと思っていた。
 けど、賀川の存在があることで……――私がその後に、頭に過った懸念が、真実であるのだと訴えてくる。

 ――未来を、あのような目に合わせた人達への【復讐】。


「そう、なら……。何故、あんな神に近しい存在達が、自ら復讐を……?」

 未来という人間の為に、怒り狂ったように復讐をする神に近しい者達――。

 例えば、生きた動物に化けた物の怪ならば、分かる。
 実際、優しい人間に触れたことで、恩返しなどをする物の怪もいる。ならば当然、その人間の為に、復讐に狂ったりもするだろう。
 ……しかし、通常。あのような神に近しい存在ならば、人間に関わることは無い。
 地球に存在する、神だと言われているモノ――物の怪がに変化した存在では無く。
 本物の神や、神に近しい者が、地球に降りることが出来るのは一つだけに限られている。
 それは――巫女の力によって【神降ろし】をした時のみだ。

 未来に、そんな力は無かったはず。私から見ても、普通の人間だった。
 だから、あのような神に近しい者達に関わることは、出来ないはずなのに……――。



 ♢◆♢


「はっ、はぁっ、はぁ……っ!」

 ――苦しい……。こんなに、走ったのはいつぶりだろうか?

 足が早いのには自信があるが、体力はあまり無いのだ。


『ぅぴぃ~……! ぅぴぴっ!』

(あ、手に持ったままだった……)

 らいらーいが、私の手でバタバタと暴れている。

 手から離そうかと思ったが、もし仲間を呼ばれたらと考え――バチバチンッ!! と、らいらーいに強い電気を流す。

「ごめんね」

 ピクピクと動かなくなった、らいらーいを道端に置く。

 ――……ゾクッ! 強い寒気を感じ、慌てて避けた。

『ったく、俺の可愛い部下に何してくれんだよ? くそアマが……』

 緑色のぶよぶよの手が、私がさっきまでいた地面に突き刺さっている。
 もし避けなければ、胴体を貫いていたかもしれないと気付き、恐怖にブルリと震えた。

(もう、追い付いて来たの? 賀川は、やっぱり操られているみたいね……)

『あぁ……。てめぇにとっちゃ、コレと感動の再開か? 意識はねぇみたいだがな』

 虚ろな目をした賀川は、手を上げ。ブンブンと大きく横に振る動作をした。
 ショベルカーに乗っているトクは、ゲームパッドをカチャカチャと操作しているから、そのように指示を出しているのだろう。

『部下を可愛がってくれた分、倍にして返してやらぁ~』

 緑色をした化け物と化した賀川が、ドスドスドスッ!! と音を立てて足踏みした後――猛烈なスピードで私に向かって来た。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

限界集落

宮田歩
ホラー
下山中、標識を見誤り遭難しかけた芳雄は小さな集落へたどり着く。そこは平家落人の末裔が暮らす隠れ里だと知る。その後芳雄に待ち受ける壮絶な運命とは——。

『霧原村』~少女達の遊戯が幽から土地に纏わる怪異を起こす~転校生渉の怪異事変~

潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。 渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。 《主人公は和也(語り部)となります。ライトノベルズ風のホラー物語です》

リューズ

宮田歩
ホラー
アンティークの機械式の手に入れた平田。ふとした事でリューズをいじってみると、時間が飛んだ。しかも飛ばした記憶ははっきりとしている。平田は「嫌な時間を飛ばす」と言う夢の様な生活を手に入れた…。

歩きスマホ

宮田歩
ホラー
イヤホンしながらの歩きスマホで車に轢かれて亡くなった美咲。あの世で三途の橋を渡ろうとした時、通行料の「六文銭」をモバイルSuicaで支払える現実に——。

奇怪未解世界

五月 病
ホラー
突如大勢の人間が消えるという事件が起きた。 学内にいた人間の中で唯一生存した女子高生そよぎは自身に降りかかる怪異を退け、消えた友人たちを取り戻すために「怪人アンサー」に助けを求める。 奇妙な契約関係になった怪人アンサーとそよぎは学校の人間が消えた理由を見つけ出すため夕刻から深夜にかけて調査を進めていく。 その過程で様々な怪異に遭遇していくことになっていくが……。

闇に蠢く

野村勇輔(ノムラユーリ)
ホラー
 関わると行方不明になると噂される喪服の女(少女)に関わってしまった相原奈央と相原響紀。  響紀は女の手にかかり、命を落とす。  さらに奈央も狙われて…… イラスト:ミコトカエ(@takoharamint)様 ※無断転載等不可

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

禊(みそぎ)

宮田歩
ホラー
車にはねられて自分の葬式を見てしまった、浮遊霊となった私。神社に願掛けに行くが——。

処理中です...