その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

文字の大きさ
上 下
36 / 56

清水 あかり ④

しおりを挟む
 


 ♢◆♢


 姿勢を低くし、物陰から覗く――。


『信用第一が俺らのモットーだろうが! なんとしてでも、見つけ出せ!! いいな!?』
『はーいっ!! かんとくぅーッ!!』
『声が小さぁあーーいっ!!』
『はぁあああーーーいっ!!! かんとくぅううううーーッ!!!』

 現場監督のような格好をしたガタイのいい男。
 その向かいには――ゾウ、ウサギ、ライオン、キリンなどの可愛らしいぬいぐるみがテチテチと歩いている。
 一見、普通の人間と可愛いぬいぐるみに見えるだろう。

 ――しかし、あれらには見つかってはいけない。

 神を降ろすことの出来る――巫女の力を持っているから、直ぐにそれに気付けた。
 あれらは、神に近しい者達だ。
 神ではないが、神に仕えるようなレベルの強力な者達なのだ。


(私の運気を操る能力は、ここでは使用出来ないみたいだし。どうするかな……)

 ここは、私達がいた世界ではないだろう。
 世界線がおかしいことになっている。
 私も、この世界に来てから気が付いたが。自身が生まれ落ち、生きていくであろう――【地球の枠組みの中】でのみ、運気を操る能力を使用出来るようだ。

 だから、ここでいくら願っても能力は発動しない。それにより、己の無事を完遂することは、ほぼ不可能だった。
 何故なら……――あの者達を消滅させることは出来ないからだ。
 少しの間は、陰陽師の力により足止め出来るが。それも時間の問題。
 相手は無限の再生、こちらは力を使えば疲労していき。当然、いつかは命を奪われる。
 だから、なるべくは見つからないように行動していた。

 でも……。ここの世界は、何か一定の法則がある。

 私が、願ったことを完遂するまでは、絶対に流れを止められないのと似たようなもの――。

 例えば、そう……――因果律だ。

 過去に行った罪などを引き出す力が、私に取り巻いている。何も考えずに行動すればするほど、自ずと流れのままにその罪が自身に返ってくることだろう。
 目には目を歯には歯をという、ことわざの通りにだ。

 このような細やかで複雑な世界を作るのは――神か、それに近しいあの者達でないと出来ないだろう。
 だから、あの者達が私をここに呼んだと見て間違いない。

 ――そして、神に近しい者達が作った世界だからこそ……逃げ道があるのも分かった。

 私の運気を操る力は強力だが、一方通行な力でしかない。要するに、不完全な力なのだ。
 それは――通常の、純粋で完全な陰陽師であれば。仮に、呪術をかけても、解術する力も備わっているのだ。
 それが、神に近しい完全無欠な存在ならば尚のこと。完璧な状態で、この世界を作り出したはず。不完全なものを作り出すわけがない。

 けど、それはあくまでもであるのだ。

 完成した後のことは分からない。もしかしたら、逃げ道を破壊されてしまうかもしれない。

 僅かな可能性は、まだあるか分からないその逃げ道を見つけ出すことだが……。手掛かりがゼロの状態では、かなり難しいだろう。

(けど、ひとつだけ分かったことがある。あの子は……――やっぱり人間じゃなかった)

 鴇 美智瑠は人間じゃない。

 私は、鴇 美智瑠が来るのをシャッターの前で待っていた。しかし、姿か見えた時――。
 その姿は、人間ではなく。白い毛の生えた何かだった。そして、目がギラギラと青く輝いていたのだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

限界集落

宮田歩
ホラー
下山中、標識を見誤り遭難しかけた芳雄は小さな集落へたどり着く。そこは平家落人の末裔が暮らす隠れ里だと知る。その後芳雄に待ち受ける壮絶な運命とは——。

『霧原村』~少女達の遊戯が幽から土地に纏わる怪異を起こす~転校生渉の怪異事変~

潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。 渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。 《主人公は和也(語り部)となります。ライトノベルズ風のホラー物語です》

リューズ

宮田歩
ホラー
アンティークの機械式の手に入れた平田。ふとした事でリューズをいじってみると、時間が飛んだ。しかも飛ばした記憶ははっきりとしている。平田は「嫌な時間を飛ばす」と言う夢の様な生活を手に入れた…。

歩きスマホ

宮田歩
ホラー
イヤホンしながらの歩きスマホで車に轢かれて亡くなった美咲。あの世で三途の橋を渡ろうとした時、通行料の「六文銭」をモバイルSuicaで支払える現実に——。

奇怪未解世界

五月 病
ホラー
突如大勢の人間が消えるという事件が起きた。 学内にいた人間の中で唯一生存した女子高生そよぎは自身に降りかかる怪異を退け、消えた友人たちを取り戻すために「怪人アンサー」に助けを求める。 奇妙な契約関係になった怪人アンサーとそよぎは学校の人間が消えた理由を見つけ出すため夕刻から深夜にかけて調査を進めていく。 その過程で様々な怪異に遭遇していくことになっていくが……。

闇に蠢く

野村勇輔(ノムラユーリ)
ホラー
 関わると行方不明になると噂される喪服の女(少女)に関わってしまった相原奈央と相原響紀。  響紀は女の手にかかり、命を落とす。  さらに奈央も狙われて…… イラスト:ミコトカエ(@takoharamint)様 ※無断転載等不可

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

禊(みそぎ)

宮田歩
ホラー
車にはねられて自分の葬式を見てしまった、浮遊霊となった私。神社に願掛けに行くが——。

処理中です...