その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

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清水 あかり ①

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 ――私には、陰陽師、僧侶、巫女の血が流れている。

 普通は、その系統に合わせて血を繋いでいるが。何をとち狂ったのか、混ぜれば強い能力を持つ人間が生まれると考えたのだろう。
 確かに、強い能力を持った人間は生まれた。

 悪いものを払うことは出来るが、守護霊も一緒に払ってしまう人間。
 悪いものに魅力され、自分は大丈夫だが周囲に影響を及ぼす人間。
 神を降ろすことが出来るが、神は神でも邪神を降ろす人間。

 ――……己ですら、制御しきれないような強い能力であった。
 しかも、殆どの者達が、自身かかけた呪術などを解術できず。一方通行の能力しか持っていなかった。
 だから、それらの力は不完全な力でしかない。

 それでも、使いようによっては強力な武器となるだろうと考えたのだ。
 そして、次こそはもっと強い能力を持つ人間が生まれると――更に、強い能力者同士で婚姻を結ばせた。

 それから何世代か後。異界へと通じる道を、繋げることの出来る者が生まれた。
 しかし、その者は残虐な性格をしており。異界への扉を開くだけに留まらず、扉を破壊しようとしていたところを、術者を亡き者にすることによって間一髪で防げたのだ。
 だが、何十人もの優秀な陰陽師や僧侶、巫女が命を落とすこととなった。

 そうなった事で。漸く、この試みは完全に失敗だと判断し。強い能力を持つ血を薄めるために、一般の人と婚姻を結ばせることにした。

 ――ということを、私は幼い頃から聞いていた。

 そんなことは、通常であれば一笑するだろう。
 けど、自分の身に起こっていることを考えれば、笑うことは出来なかった。

 もう、だいぶ血は薄まっているはずなのだが。恐らく、先祖返りをしてしまったのだろう。
 私は物心がついた時には既に、人ならざる者が見えていた。
 人間なのか、動物なのかは本人にすら分からなくなった者達――化け物のような姿や、白いモヤのような姿。更には、どろどろとした姿のものまで、様々な救いを求める存在がいた。

 それらは、私の存在が救いだというかのように、ずっと付きまとって来た。

 実際。私には先祖の陰陽師、僧侶、巫女の力を不完全ながらも全て持っていた。だから、形はどうあれ、救うことは出来る。

 けど、幼い子供にとっては、そんなものから日常的に追いかけ回されればトラウマものであった。

 分かってはいても。ずっと怖くて怖くて、泣きながら逃げる。
 そうしているうちに、周囲から孤立していった。

 ――しかし、小学3年の時に同じクラスになった青城 未来と出会い。自分の能力を制御する術を学べたのだ。

 未来は、孤立する私の側にいつもいた。
 気が付いたら、泣く私の手を優しく握ってくれていた。
 それで、以前。嘘つきだと馬鹿にされた、私の出生を話してみようとふと思って、伝えた。

 未来は、静かに話を聞いてくれていて。そして、その話が終わると……怯える私に言ったのだ――『あかりちゃん。目を瞑って、自分の心臓の音を聞いてみて』と。

 馬鹿にされなかったのに、ホッとはしたが。意味が分からなかった。けど、不思議と言う通りにしてみようと目を瞑り、心臓の音を聞いた。

 続けて、未来は『心臓は、全てを記憶しているんだよ。それは、私達より前に生きたご先祖様の記憶も――だから、怖いものを見えなくする方法だって、心臓が知っているはずなんだ。心臓の音が教えてくれるよ』そうハッキリと言った。

 あまりに自信のある言い方で……――。
 だから、信じることが出来た。

 心臓の音を聞いて、気持ちを落ち着かせる。

 そして、目を開けた時――世界がクリアになっていた。

 あんなにも、視界にたくさんいた人ならざる者達が。一様に消えていた。

 それからは、未来とずっと一緒にいた。
 クラスが離れても、帰りや休みの日に一緒にいて。ずっと、仲良くしていた。絶対に縁を切るつもりがなかった。

 私の恩人で、大切な親友だと。未来の隣には、私がずっといるんだとそう思っていた……――高校を上がるまでは。


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