その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

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賀川 剛 ⑦

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「な……!? じ、地震……?」

 ――グラグラグラグラと地面が揺れ動く。

『……ッ、【バブル】ちゃん、スみまセン……! わたクシの力を、吸いトッテ下さイ!』

 黒タイツが持つハリセンは、次第に金色のオーラみたいなものが纏い。それに触れたクッションの地面がパキパキパキ……と、乾き。ひび割れていく。

『……ばぶっ……!』
『はイ、スみまセン……。つイ、苛ツイてしマッテ……』

 ズズズズーー……。金色のオーラが、巨大な赤ん坊に吸い込まれていった。

「……ぅうっ!?」

 カッ!! 突き刺すような光が、辺りを照らす。

 光が収まった時――巨大な赤ん坊がいたところには、普通の人間と同じ大きさの金髪金眼の美女が立っていた。
 そして、黒タイツは。再び、白タイツに戻っていて、あのハリセンも姿を消していた。


『――まったく、ストーラは……自分の特性を考えて行動してよね。わたし達は、人間に傷つけられただけじゃ死なないんだから……。貴方が持つ【破壊の特性】を発現させたら、せっかく皆で作ったこの箱庭が崩れてしまうじゃないの。わたしが【吸収の特性】を持っていたことに感謝しなさい』
『……はイ。仰る通りデス……』

 金髪美女にくどくどと説教をされる、白タイツ。

 話についていけず、かといって逃げようとしても……。何故か、逃げ切れるビジョンが浮かばず。結局、2人の会話を棒立ちで聞いていた。

『――……それで、アレはどうするつもり?』
『わたクシの、今持つ【創造の特性】を使用スルつもりデス』
『……あぁ、なるほどね』

 また、何かをするつもりかと構えるが――。
 死んでも良いなんて考えていた自分が、何故こんなに必死に回避しようとしているのかと思い。
 その理由に、ふと辿り着き。苦笑してしまう。

(はは、なんだ。俺、人を殺しといて……生きたいなんて考えてんのか。それも――自分が愛した人を、殺めたってのにな……)

 俺は、白タイツの言う。屑そのものだ――。

『また、逃げられては困るから――ちょうど貴方から貰った力を使わせてもらうわね』
「がぁッ!? ぅっ、ぐがぁあ"あ"ーーっ!!」

 金髪美女に指をさされる。
 すると……――バキッ、ボキッ、グキンッ! 俺の骨が、あり得ない方向に曲がる。
 しかし、見た目は綺麗であり。外側から折られているわけではなく――内側から、破壊されているようだった。

『【バブル】ちゃん、ナぁ~イス☆』

 白タイツは、金髪美女に向かって両手でビシッと指をさした。

『いいから、さっさと片付けちゃいましょう』
『ァ、はイ……』

 つれない態度をとられたからだろうか、少し落ち込んだ様子である白タイツ。
 しかし――パチンッ! 指を鳴らし。初めに出していた、拳銃を出す。

『さテ。よクモ、手こずラセテくれまシタネ~!』

 チャキッと銃口を向けられるが。俺は足や腕、肋骨などの骨も折れていて……。もう、動くことは不可能だった。

 ――パンという音が鳴り。俺の脚に、緑色の針が刺さる。

「……ッぅ!? ぐっ、ガハッ……ガハッ! ぐぐぅう"う"……!」

 グルリグルリと。体内に、何かが大量に這っているような感覚。

『よシ、よシ! しっカリ、変化しテ下さイネ☆』

 やっと、思い通りになったからか。白タイツは、ご機嫌にパチンパチンと指を鳴らしている。

(そうか、俺……死ぬのか……。なら、最期に――)

「……た、頼む。最期に、教えてくれ……! 未来、は……――お前達にとって、どういう存在なんだ? この、状況は……それと関係ある、んだろ……っ?」

 白タイツは、う~んといった悩んだポーズをし。
 パンッと手を叩いた。

『まァ、わたクシを何度モ何度モ、苛ツカせたお前に、ご褒美デース☆』
『はぁ、まったく……お調子者ね』

 金髪美女が、やれやれと呆れたように白タイツを見ているが。その視線に気付かずに、白タイツは腰を左右にフリフリと振りだした。

『ストーラ、待ちなさい。貴方は、無駄なことまで話してしまうだろうから、わたしが説明するわ』
『えェー!? 【バブル】ちゃん、ズバッと酷いコト言ウじゃナイのン!』

 白タイツは、ムスッとしたように黙り込み。スノーボードの上で胡座をかいて座り込んだ。

『……本当、仕方のない子』

 金髪美女は、ふてくされたように胡座をかいた白タイツに近付き。スノーボードの端に、チョコンと座り込む――。
 すると、白タイツはススス……と端に寄り。金髪美女の座る場所を広くした。


(こいつら、俺の状態を無視して……。2人で青春してんのか……?)

 この状況に見合わない2人の行動に、唖然とする。
 だが、そう思ってしまうのは、人間の感性によるものかもしれない。
 白タイツの行動も、ずっと意味不明であり。全く読むことが出来なかった。
 人間である俺は、人間ではない存在の『普通』など知りようもないのだ――。


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