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賀川 剛 ⑥
しおりを挟む『【バブル】ちゃーん! ドコにいまスカ~? アれー? ドコだロ~☆』
「……」
長い間、歩き。もう、ヘトヘトだ。
白タイツのスノーボードが羨ましい。
俺は、俯き。もう、淡々と歩くことしか出来ないでいた――。
『おォ? アソこカナー?』
そう言われ、ハッと顔を上げる。
「……ッ! う、そだろ……!」
少し離れたところに、巨大な赤ん坊がいた。
その赤ん坊が、ぐちゃぐちゃと赤黒い何かを叩きつけている。
服の切れ端や、まだ形のある部分によって。それが、人間だと分かり――嫌でも、それが何だったのかが分かってしまう。
「――孝……!」
だから……。白タイツは【バブル】に会わせるとしか言わなかったのか。
孝が、このような状況になると、初めから分かっていたとしか考えられない。
『ばぁぁあ~~ぶぶぶぅう?』
『【バブル】ちゃん。オ庭にゴミを捨テしまッテ、ゴめんネ☆でモ、けっコウ、楽死メましたデショー?』
『ばぶっばぶっぶぶぶっ! きゃははははぁああ~~!!』
『ふフふ、ソうでスカ~! 楽死かったヨウデ、何よりデス☆』
和気あいあいと話し出す、巨大な赤ん坊と白タイツ。
俺には巨大な赤ん坊が『ばぶっばぶっ』と言っているようにしか聞こえないが。白タイツは、巨大な赤ん坊が何を言っているのか分かっているようで、相槌を打って言葉を返している。
(……は、一体。この世界は、何だってんだよ……?)
『ふゥ……。さテと……――会エましたヨネ?』
「……――ッ!」
呆然と立ち尽くす俺を――白タイツと巨大な赤ん坊が、振り返り見る。
『ばぁぶぶぶぶ~~~ぅうう!!』
『はハハはッ! 【バブル】ちゃん、殺ル気まンまンでスネ☆』
手を伸ばしてくる、でかい手。それを、避けに避ける――。
『はァ~。マッたく、嫌ナ人間デスネ~!』
『ばぶぶっ! ばぶぶっ! ばぁああぶぶぅ"う"う"!!』
俺を上手く捕まえることが出来ず、癇癪を起こした巨大な赤ん坊は――俺に向かって、バシバシバシバシとがむしゃらに手を振り下ろしてくる。
『あァ、【バブル】ちゃん! 大丈夫、大丈夫デスヨ~! イつかハ、力尽きまスカラ☆』
大きな手が地面につくタイミングで、その腕に飛び乗り。駆け上がった。
そして――巨大な赤ん坊の、後頭部に回り込む。
『ぶばばばばは~~~っ!?』
「はっ、人間を馬鹿にすんなよ?」
驚きに見開く目を突き刺そうと、腕を振りかざす――。
『――貴様ごとキガ、自惚れるナヨ』
地を這うような声が聞こえた途端――パァアアーーン!! と、何かに弾かれる。
ボスンッ!! 背中から着地してしまい、痛みに呻く。
――その声が発せられた方向を見上げ、顔をしかめる。
(くそ、勘弁しろよ。あれ……何なんだ)
白いタイツに、赤いシルクハットだった奴が。
黒いタイツに、青いシルクハットに変化していて――。
しかも、10メートル程のどでかい金色のハリセンを持っていた。
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